第二話 Ⅱ 上
あけましておめでとうございます。
今年も楽しく頑張って書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。
第二話 Ⅱ 上、お楽しみいただければ幸いです。
「ねぇ、今日って何かあるの?」
それは、ある日の実習でのマリアの一言だった。
G、H組の生徒はいつも通り第四訓練室に集合しつつある。
しかし、集合しつつあるのはG、H組の生徒だけではなかった。
ファルベント魔術学院の二、三年生、つまりエル達にとっては先輩となる人達が来ていたのだ。
それが分かった理由は見たことの無い顔だというのもあるが、一番の理由は制服のネクタイの色。
ファルベント魔術学院では、いや、ヴァルト中立自治領にある魔術学院では学年によって身に付けるネクタイの色が決まっている。
色は一年生が赤、二年生が青、三年生が緑だ。
そして今、第四訓練室には青か緑のネクタイをした生徒がいる。
それを疑問に思ったマリアが、先程の問いを発したのだ。
「覚えてないのか?」
問われた事が疑問だ、と言う様にエルはマリアに問い返す。
問いを問いで返されたマリアは、え? と目を丸くする。
「えっと、僕も分かんないんだけど…………」
マリアの横でおずおずとユウキが申し訳なさそうに手を上げる。
「私も分かんなーい」
「私も私もー」
更にその横でナディアとソフィアがはいはーいと大きく手を上げる。
「………………」
四人のその様子を見たエルは、残りの一人に視線を向ける。
「……お前もか?」
視線を向けられたロウェンは肩を竦める。
「皆分からないのに、俺が分かる訳ないだろ?」
「だよな……」
そして、エルは自分の持っている情報の情報源を思い出す。
「覚えてないのも仕方ないか。言ってたのはスハイツ先生じゃなくてカルロ先生だからな」
確か先週、カルロが話していた。
「今日から部活の勧誘が始まるんだそうだ。ここにいる先輩達は将来有望な一年生をスカウトする為に、……まぁ、品定めに来たって所だな」
簡潔な説明にナディアが手をポンと叩く。
「ああ、思い出した!」
「えぇ?」
ソフィアはまだ思い出せないようだ。
「ほら、魔術競技大会でどの部活も成果を上げたいから、優秀な部員を手に入れる為に毎年│壮絶な戦いが繰り広げられるって言う……」
聞き流せない台詞を口にするナディア。
その言葉でソフィアも思い出す。
「ああ! 新入生争奪戦!!」
頭の上に電球を浮かべるソフィアは思い出せて嬉しそうだが、発している言葉は全く嬉しくない。
「勧誘じゃなくて争奪戦なのか?」
双子にロウェンが訊く。
「そうだよ~。そりゃあもう血眼になって、目当ての生徒がどこに入るか決まるまで追ってくるらしいから」
「人気者になると、殆ど全部の部活が押し寄せて揉みくちゃにされるらしいし」
言ってナディアとソフィアは手を顔の前で合わせて目を閉じ擦り合わせる。
「「「「………………」」」」
話を聞いている四人は顔を引き攣らせる。
ちなみに、ナディアが口にした魔術競技大会とはその名の通りの大会である。
参加するのはヴァルト中立自治領にある魔術学院の生徒達。
その為この大会は別名、学院対抗戦とも呼ばれている。
「確かに魔術競技大会で良い結果を残せば卒業した時便利だけど、それって部員獲得とは関係ないんじゃ?」
マリアが眉を寄せて質問する。
魔術競技大会で勝つ為に自分を鍛えるなら話は分かる。しかし彼女の言う通り、それと部員の獲得とは関係ない様に思える。
「ちっちっちっ。それが違うんだなぁ」
ソフィアが顔の前で人差し指を立てて左右に振る。
「大会の各競技には個人戦の他に集団戦があるでしょ? 今はそっちの方が重視される傾向があるの」
ナディアがソフィアの後に続けて言う。
「最近は単独じゃなくてチームを組んで戦うことが多いからね。チームワークとか、協調性とかが大切なんだって」
最後にソフィアが締める。
「へぇ~、そうなんだ。知らなかったよ」
ユウキが素直に感心する。
そんな彼に、未だ顔を若干引き攣らせているエルは言う。
「感心してる場合じゃないぞ、ユウキ」
「え? 何で?」
「まず最初に先輩達は将来が期待できる生徒の所に行くだろうがな。それが終わったら次はそれ以外の生徒達に矛先が向けられるぞ」
目を付けられる生徒よりはマシだろうが、それでも疲れるはずだ。
「あ……、そっか。それは嫌だなぁ」
情けない顔になるユウキ。
そこにナディアが口を挟む。
「エル、ユウキに注意してる場合じゃないと思うよ」
意外な言葉にエルは首を傾げる。
「何で?」
「だって、もうエルは目を付けられてると思うから」
ナディアの言葉にエルは、冗談じゃない、と思いながら、疑問を繰り返す。
「何で?」
「そんな髪と瞳の色をしてたら、目を付けられない訳ないと思うんだけど?」
「あ……」
すっかり忘れていた。そう言えば、自分の髪は薄い橙色、瞳は銀色だ。
ランクはDでそれほど高くないとはいえ、それはエルが普通の人より多くの魔力を持っていることを表している。
「マジか……」
エルは左手で顔の半分を覆う。
そしてふと気付く。
「いや、俺は多分大丈夫だ」
「神官部の非活動生は掛け持ちOKだよ?」
ソフィアが注意してくる。
「それも考えたが、俺が言ってるのは別の理由からだから大丈夫」
「別の理由?」
「ああ。それは明日になれば分かる」
そしてエルはマリアとロウェンを見て。
「という訳で揉まれるのはロウェンとマリアだけだ」
「「えぇー……」」
言われた二人は苦い顔をする。
「頑張れ」
嫌だ、と言う二人にエルは苦笑した。
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