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Change Ring  作者: 桜香 辰日
第一話 ~最初の騒動はあっさりさっぱり?~
39/92

第一話 ⅩⅩⅣ 上

 祝! 総合評価が100ポイントに到達しました!!

 ランキングに入っているような人気作を書いている方々には遠く及びませんが、少しでも楽しんで貰えているようでとても嬉しいです。

 最近(ここ一週間)、新たにお気に入り登録して下さった方や、この小説を評価して下さった方には更に活力をいただいています。

 もちろん、以前から読んでくださっている方や評価して下さっている方には感謝するばかりでございます。

 皆さんがいなければ、早々に止めていたかもしれませんからね。


 総合評価が100ポイントに到達したということで、今回は記念に二回分投稿することにします。頑張りました。

 本当は番外編とかが良かったのでしょうが、二つのものを同時進行出来るような才能は持っておりませんので…………。

 では、第一話 ⅩⅩⅣ 上、お楽しみいただければ幸いです。

 エル達は実習のため第四訓練室に来ていた。

 他の生徒達も集まりつつある。

「入学したての私達に召喚魔術を教えるのって早過ぎない?」

 ナディアの単純な疑問から会話が始まる。

「そういえばそうだね。大抵たいていの召喚獣は冷静にこっちの要求を聴いてくれるらしいけど、中には襲いかかってくる召喚獣もいるみたいだし」

 ユウキがナディアの疑問に同意する。

「こんなに早く召喚魔術が出来るのは嬉しいけどね」

 ソフィアも同じ意見らしい。

「別に、もう攻撃魔術を習ってるんだから早過ぎじゃないと思うけど」

 マリアはあまり共感しないようだ。

「召喚獣がいるかいないかで戦闘スタイルはかなり違ってくるからな。こういうのは早い方が良いんじゃねぇの?」

 ロウェンもマリアと同じく共感はない。

 ついでに言うと、エルはマリアとロウェンの側だ。理由はロウェンの言った通り。

 魔術、いては戦闘経験の差だろうか。

 戦闘スタイル以外でも言えることだが、一度体にみ付いてしまったものを無かったことにするのは難しいし時間がかかる。

 ましてや自分の仕事、商売道具に関わることだ。そうそう簡単に以前とは全く違う新しいものに取り換えることは出来ない。古くなったものを新しいものに変えるのとはわけが違う。

 魔術師は戦うことを前提とした職業。医療専門であっても戦いの場に行くのは当たり前だ。魔術師にとって戦うことは命を守ることでもある。その手段である戦闘スタイルを変えることは死をまねくことになりかねない。

「でも、武器だってまだちゃんと決まってないし……」

 戸惑とまどい気味にナディアが言う。

「別に絶対契約しなきゃいけない訳じゃないから大丈夫よ。それこそまだ入学して一ヵ月もってないんだから」

 考える時間はあるわ、とマリア。

「そんなに心配しなくても、俺やロウェンやマリアは例外として、魔術を習い始めたばっかりの新一年生に力の強い召喚獣はそうそう呼べないと思うぞ」

 エルもナディア達を安心させるように言う。

「あ、そうだった。卵からいきなり恐竜にはならないもんね~」

 本当に心配していたのだろうか、と思わせるほどにソフィアが気楽な声を出す。

 召喚魔術はとてもよく考えられている。使用者の魔力や魔力の制御能力、魔術の得意不得意など様々な要素が考慮されて、自分の強さに合った召喚獣が呼ばれてくる。

 つまり、自分が弱ければ弱い召喚獣しか召喚できない。

 召喚魔術で自分がどれだけ強いかはかる人もいたりするのだ。自身の力量を知るには中々良い魔術だ。呼び出される方はたまったものではないだろうが。

「先生がいるんだから大事おおごとにはなんないだろ。怖がる必要はねぇよ」

 ロウェンが快活に笑う。

「そうだね。先生がいるんだし、大丈夫だよね」

 不安を消し去るようにユウキも笑う。

「噂をすれば何とやら、だな」

 ガラララッと扉を開けて訓練室に入ってきた教師二人を見てエルが口を動かした。

 真面目そうな教師の顔をしたカルロが生徒に声を掛ける。

「講義を始める。説明をするから全員集合しろ」

 バタバタと足音を立てながら総勢50人の生徒達は素直に彼の言葉に従う。

 全員が集まるのを確認するとカルロは話し出す。

「今日の実習は召喚魔術だ。安全を考慮して今回は簡易召喚魔術を使用する」

 簡易召喚魔術は分類すると無差別召喚魔術の方になる。

 契約は結べるが、簡易なので強力な召喚獣は呼び出すことが出来ない。

「簡易召喚魔術は下級三位から中級二位までしか呼び出せない。お前達の場合、呼び出せても下級二位ぐらいが精々だ」

 召喚獣にも魔術師と同じように、一応の目安、指標として強さの階級がある。

 階級は下級、中級、上級の三つがあり、さらにその級は三位、二位、一位と三段階に分けられており、全部で九つの段階がある。

 これは種族の平均の強さによって位置づけられているので、例えば種族が中級三位だとしても実際の強さは上級三位だったり下級一位だったりすることも多い。

「使用者には俺達が結界を張って守るから怖がらなくていい。クラスごとに分かれて実習をする。名前を呼ぶから、呼ばれた者は担任の所に来ること。その他の者は少し離れて見ていること」

 簡潔に言って、カルロはエルから見て左の方へ離れて三人の生徒の名前を呼び、実習を始めた。

「じゃあ、俺等はこっちだ。全員付いて来い」

 ずっと黙っていたスハイツがいつもより引き締まった顔で声を掛ける。

 G組はぞろぞろと彼の後ろに付いて行く。

 十分離れた所でスハイツが急に訊いてきた。

「で、誰からする?」

「…………」

 こう言われて名乗り出る人は、遠慮と恥ずかしさが出てあまりいないんじゃないかと思う。

 名簿順にすればいいのでは? とエルは思う。

「最初だからなぁ。こういうのは初めての奴よりか経験者の方が良いと思うんだが。誰か召喚魔術やったことあるか?」

 手は上がらない。

 そりゃそうだ。この場にいるのはほとんど初心者なのだから。

 可能性があるのはエル達三人。

 ロウェンとマリアはすでに召喚獣と一緒に戦わない戦闘スタイルをきずいているので、召喚魔術を使ったことは無い。二人とも敵にガンガン突っ込んで行くタイプなので、相方を気にしながら戦うのは苦手なのだ。本人達もそう言っていた。

 その時に「やっぱりお前等は似ている」と言ったら、二人に全力で否定されはしたが。

 召喚魔術まがいの魔術ならエルはやったことがあるが、それは他人にあまり言えないことなので黙っておく。召喚魔術を使ったことが無いのは事実なのだから、手を上げないのは当然であるのだし。

 しかし、何の不運か、白羽の矢はエルに向かって飛んできた。

「んじゃあ、エル。お前やれ」

 酷くあっさりとスハイツは決定した。

「え?」

 突然のことに返事を返せず、何で俺? と隣にいるロウェンとマリアを交互に見るエルにスハイツが言った。

「その二人だとなんか悪いことが起きそうな感じがせんでもないから、お前やれ」

 確かに、この二人にはトラブルメーカーのがある。

 エルにはスハイツの気持ちが良く分かった。

「分かりました」

 一番最初、ということでカルロのように数人ずつではなく、やるのはエル一人だけだ。

 立っている場所は、訓練室を半分にしたその真ん中。

 他のクラスメイトはエルの後ろ、スハイツから見れば前方に少し離れて見ている。

 まず魔方陣のベースを展開。

 次に、スハイツに見せられている紙に描かれた術式を、間違えないように自分の魔方陣に描き込んでいく。初めてなのでちょっと時間がかかった。

 魔方陣を完成させるとスハイツがエルの邪魔にならないように数歩下がる。

 彼は一瞬で魔方陣を構築し、エルの周りに結界を張る。

「いいぞ」

 スハイツが短く合図する。

「はい」

 エルも短く返事をして召喚魔術を発動する。

 パァッ……、と魔方陣は一秒ほど光り、まるで空気に溶けるかのように消えていく。

 魔方陣が完全に消えた直後、目の前に大きな影が落ちる。

 お読みいただき、ありがとうございます。

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