第一話 ⅩⅢ 四
前回の投稿の際、たくさんの方からのアクセスがあり、PVが3,000を超えました!
ありがとうございます!
ちなみに、ユニークは700とちょっと位です。
駄文ではありますが、楽しんで頂けたらと思います。
喜んでいるナディアとソフィアを見ていると、少し暗い顔をしたユウキが近付いてきた。
「ユウキ? どうかしたのか?」
「うん……、ちょっと」
答えるユウキは言いずらそうだ。
エルが彼を促さずに次の言葉を待っていると、ユウキはやや下に向けていた目をこちらに向けて言った。
「かなりきつく睨まれてるから、居心地が悪いんだよね……」
睨まれてる、と言った時点で事情が大体分かった。
「出会いが最悪だったからな」
アマンシオ達のことだ。
ユウキが成功した時もちょいちょい睨んできていたが、双子が成功して皆と話し出した頃くらいからずっと睨んできている。
「射殺されそうだよ」
そういえば、ユウキは講義開始前から心労が重なっていた。
「そうか、じゃあ仇を取らないとな」
疲れたように言うユウキの冗談を冗談で返す。
「僕が死ぬの前提になってない?」
ユウキが苦笑して返してくる。
「でも困ったことになったな。アイツ等結構しつこそうだ」
「何の話してんだ?」
いつの間に近付いていたのか、ロウェンが聞いてくる。
「あれ、マリアは?」
ロウェンの喧嘩相手がいないことにユウキが気付いて言う。
「ん? アイツなら女同士で話してるぜ」
言いながら、ロウェンは親指でクイッと自分の背後を差す。
示されてユウキはロウェンの背の向こうを見る。
そこには談笑している双子とマリアの姿があった。さすがに紅一点ならぬ白一点にはなりたくないだろう。
ユウキがそれを確認したのを見届けて、ロウェンが質問を繰り返す。
「で、何の話してたんだよ?」
「アマンシオ達がさっきからずっとこっちを睨んできてる話」
簡潔にエルは答える。
「あぁ、あれか。一体何なんだよ、アイツ等。色つきや貴族にしたって鼻高すぎだろ」
納得すると同時に悪態をつくロウェン。
「「お答えしましょう!!」」
「「うわっっ!!」」
少し離れた所でマリアと談笑していたはずの双子が、突如としてロウェンとユウキの間から飛び出してくる。
ちなみにご察しの通り、現れ出たナディアとソフィアに驚いて叫んだのは双子の両脇に立っていた男二人。ロウェンとユウキの間ということは、エルの真正面で行われたことなので彼が驚くことは無い。
「聞いて驚け!」
「見て驚け!」
どこかで聞いたことがあるような無いような台詞が耳に入ってくる。
決め台詞か何か知らないが、現状からしてまず最初に言うなら見て驚けの方だろう。だがそれも、すでに驚いてしまっているので手遅れだと思うが。
キメ顔をしている双子の後ろでは、マリアが男二人の反応を見て笑っている。
この状況にツッコむ気が無いエルは話を先に進める。
「で、何を答えてくれるんだ?」
「アマンシオ達のことだよ」
「知りたくない訳ないよね?」
エルがツッコまないことに抗議せず、ナディアとソフィアは話題に乗ってくる。
そのことに疑問を持って双子の両脇を見ると、沈んでいるロウェンとユウキがいた。驚いた後に誰かがツッコむか、言い争いが始まればほぼ無傷で済んだのだろうが、何もなかったことによって二人の心はかなりの傷を負ったらしい。
そして、沈んだ男達を見てマリアがさらに笑っている。
これを分かっていてやったんだとしたら、ナディアとソフィアは中々の策士だ。
「そうだな。出来ることなら関わり合いたくないから知りたいとは思わないが」
エルは悪いことをしたかなと思ったが、話を止めることはしなかった。今またフォローに入れば、ロウェンとユウキに止めを刺すことになるだろうし、双子の悪巧みに付き合う気も無かったからだ。エルは一度言葉を切って、チラッと今話題に上っている人物を見る。
その人物はまだこちらを睨んでいた。
「向こうはそうじゃないらしいから、知っておいた方が良いだろうな」
はぁ、とエルは溜息を最後に付ける。
そして、ナディアが説明し始める。
「はいはーい。じゃあ、まずは名前ね。真ん中で天狗になってるのが、アマンシオ=ムローワ。右側に突っ立ってるデブいのが、ガロ=コルチノ。左側にくっ付いてるチビが、サルバ=メドウェスよ」
お次はソフィア。
「三人とも出身はグラオデルタ帝国、アマンシオの親は伯爵で野心が強い馬鹿らしいわ。金魚のフンの二人は男爵の息子で、貴族としては下の上。親同士が仲良いから三人でツルんでるんだって」
二人とも発言に容赦がない。というよりは、ただ単に悪口を言っているように感じる。
「そんな情報どうやって調べたの? 名前や出身はともかく、親やその地位まで」
さっきまで笑っていたマリアが、双子の悪口には触れずに尋ねる。
「「うふふ。それは、企業ひ・み・つ」」
注意、語尾にはハートマークが付いております。
こういう言い方をされると、それを知ることに恐怖を感じてしまうのはエルだけだろうか。
「それにしても、お前等も結構言うよな」
ここでロウェンが双子の物言いに触れる。
「あら。自分と妹と友達を侮辱されて腹が立たない程、私は大人じゃないもの」
人の悪い笑みを浮かべてナディアか返す。
「噛み付いてきたのはアッチなんだから、こっちは悪くないもの。やり返すのは当然でしょ」
姉と同じ顔でソフィアが言う。
「でも、何でこっちに絡んできたんだろ?」
三人の遣り取りを無視して、ユウキが素朴な疑問を口にする。
「取り巻きを増やしたかったのよ」
マリアがウンザリした様に即答する。
「色つきの、な。アイツ等、俺の傍にはユウキもいたのに、ユウキを一瞥もしなかったからな」
マリアの答えにエルは付け加える。
「色つき以外は相手する価値もないってか」
ケッと唾を吐くようにロウェンが言う。
「そんな所だろうな。訓練室に入ってきた時から俺達をチラチラ見てたから」
皆の不機嫌に苦笑しながらエルは言う。
「声を掛けるタイミングを計ってたってことかぁ。言われてみれば、声のかけ方が不自然だったような気がする」
遠い目をするユウキ。
「でもいい気味だわ。私達を見下した癖に、自分達はまだ魔方陣の構築できてないんだから」
気が晴れるにはまだまだ足りないけど、とマリアが言う。
「確かにな。顔に屈辱って書いてあるのは傑作だぜ」
ニヤッとロウェンが笑う。
「次からもどんどん赤っ恥かかせてやるんだから」
「あんな親の脛齧りに負けないんだから」
それぞれが何か方向の違う決意をしているようだが、ライバルがいることは良い事なので口を出さないことにする。まぁ、アマンシオ達がライバルなのかと聞かれれば、言葉に詰まってしまうが。
それよりも、今の四人が極悪人に見えることの方がエルは心配だ。
色々あったが、六人は無事にその日の講義を終えた。
お読みいただき、ありがとうございます。
間違って作成した章を消しました。
疑問を持たれた方、これは私の間違いですので気にしないで下さい。
第二話に入ったら、見やすいように章を作ろうと思っています。




