第一話 ⅩⅢ 参
前回、変な所で切って、今回、変な所で始まっております。
すみません。
お楽しみいただければ幸いです。
「「「……」」」
三人はじと~っと担任を睨む。
睨まれている担任は視線を逸らしたまま、冷や汗を流す。
「…………あっ」
そんな中沈黙を破ったのは、今までずっと口を閉ざしていたユウキ。
指の先には何もないはずの空間に白く光る線が浮かんでいる。
「おっ、成功者第一号だな!」
突破口を見つけたとばかりに、スハイツはそこへ突撃する。
獲物に逃げられてしまった三人は、諦めてユウキがいる所へ足を向ける。
そこに浮かんでいたのは、胡坐をかいて座っている男性。
ゆったりとした浴衣の様な着物を着た、がっしりとした体つきの男性だった。
「ジテン……、地天か。大地の神だな。確か、大地の堅牢さと万物を生育する恵みを表しているはずだ」
腰を曲げ、じっくり観察してスハイツが解説する。
「へぇ~、貫録あるなぁ。どっかの殿様みたいだ」
スハイツの左から覗きこむロウェン。
「殿様は言い過ぎだよ」
苦笑するユウキ。
「っていうか、神様に失礼よね」
ロウェンと反対側、スハイツの右から見て言うマリア。
「確かにな」
クスッとエルは笑う。
「仕方ねぇだろ。そう見えたんだから」
笑われてロウェンは拗ねたようにプイッとそっぽを向く。
「ごめんごめん。拗ねるなよ」
笑いを苦笑いに変えて、エルはロウェンの機嫌を直す。
「別に拗ねてない」
しまった、言葉のチョイスを間違えた。
ロウェンの顔はそっぽを向いたままだ。
「子供ね~、ロウェンは」
二人の遣り取りを見て、マリアがロウェンを冷やかす・
「うるせぇ。所構わず爆発させる奴に言われたくねぇよ」
マリアの発言で付いて欲しくない火が付いたロウェンが反撃する。
「なっっ!? 周り見ないで猪突猛進する猪男の癖にっ!!」
マリアにも火が付いた。
「はぁ? 俺は周り見てるっつうの。見てねぇのはお前の方だろ」
「いいえ。敵に真正面から突っ込んでいくのは、周りを見ていない証拠よ」
二人の喧嘩がヒートアップしてきた時。
「「できたー!!」」
別の二人分のはしゃいだ声が喧嘩をするロウェンとマリアの声に交じってくる。
「「見て見て見てー!!!」」
声の主は双子だ。よりにもよって、一番近くにいたロウェンとマリアの方へ駆け寄っていく。興奮しているせいか、二人が喧嘩をしていることに気付いていない。
「あ……」
そのことに気付いたエルが口を開こうとするも時すでに遅く。
「「あぁ!?」」
ロウェンとマリアは喧嘩をしていた勢いで、走り寄ってきたナディアとソフィアに般若のごとく恐ろしい顔を向ける。
「「キャーッ!!」」
あまりの恐ろしさと不意を突かれた為の驚愕が双子を揃って叫ばせる。
「「あ、ごめん」」
ハッとしたロウェンとマリアが同時に謝る。双子はその場でへにゃへにゃと座り込んだ。
(災難だな……)
エルは憐みの目で双子を見る。
今のは不可抗力と言うべき代物だが、それにしても口論をしているロウェンとマリアに関わると碌なことがない。
さっきのはしゃいだ声はどこへやら、ナディアとソフィアのテンションは一気に下がってしまったようだ。
「怖かったよぅ~」
「ビックリしたよぅ~」
今の二人には意気消沈という四字熟語がぴったりと当てはまる。
いや、四人だ。
注意が足りなかったと後悔しているのだろう、ロウェンとマリアも先程の喧嘩と打って変わって元気がない。
隣を見ると、ユウキが微笑ましい様な、憐れんだ様な、エルと同じ複雑な表情をしていた。
ただ、その隣のスハイツは爆笑寸前だった。少し屈めた体を横に向け、右手を口に、左手をお腹に当て、プルプルと震えている。ツボにはまったらしい。
今彼の顔を覗けば、笑いを必死にこらえて茹でたタコのように真っ赤になっている彼の顔を拝めるに違いない。
「で、何が出来たんだ? ナディア、ソフィア」
このままでは話が進まないので、エルは質問する。
「あっ、そうだった。丸が書けたんだよ」
「そうそう。ベースの構築が出来たの~」
エルの質問で、双子の気分は少し浮上したようだ。
「どうだった?」
「結構可愛いのだった」
ウキウキとナディアが答えてくる。
「そっか。見せてもらっていい?」
「もっちろん!」
ソフィアが大きく頷き、同時に二つの円が描かれる。出てきたのは、さすが双子、と言えるものだった。
どちらにも二股で先にポンポンが付いた帽子を被り、先の尖った靴をはいたピエロが描かれている。
違うのは、鏡に手を着き、片足を上げているピエロの向き。ナディアは鏡が右側にあり、左足を上げているが、ソフィアはその逆だ。二つを並べるとちょうど左右対称になる。そして、ナディアの方にはGemini・Castor、ソフィアの方にはGemini・Polluxと書かれている。
「ジェミニ、ふたご座か。二人にピッタリだな」
「えへへ。でしょ?」
ナディアが嬉しそうに照れる。
「全く同じじゃなくて、左右対称ってところがミソよ」
ナディアが右手の人差し指をピンと立てる。
Castorはカストル、Polluxはポルックス読み、前者が兄で後者が弟だ。
神話によれば、兄のカストルは人間で死ぬ運命にあったのだが、神でったポルックスが自身の不死の力を半分カストルに分け与えた。それにより、二人は一日の半分を神として天の上で過ごし、残りの半分は人間として地上で過ごしているという。
ソフィアは神ではないが、カストルとポルックスのようにナディアとソフィアは仲睦まじい。二人に相応しいものだといえよう。
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