第一話 ⅩⅢ 弐
お久しぶりです。
前回の続きです。
お楽しみいただければ幸いです。
「次はエルだね」
同じく頷いていたユウキが振ってくる。
「了解」
言って、腰を上げてベースを構築する。
現れたのは黄金の獅子。綴りはBarong。
「バロン?」
ユウキが綴りを読む。
「あぁ。バロンは森の良気が顕現した聖獣で、あらゆる災厄を防ぐ力を持つと言われている」
「な~んか皆のカッコ良くていいなぁ。特にエルのヤツ」
ナディアがエルのベースを見つめながら言う。
「そうか?」
真正面から言われると照れる。
「だってライオンだよ? しかも金色。王道的な感じ」
羨ましがるナディアは子供のようだ。
「ロウェンとマリアのも中々いいと思うぞ?」
ロウェンのものは男らしくて力強い感じがするし、マリアのものは抽象的で不思議な感じが良いと思う。
「二人のもかっこいいけど、でもやっぱりエルのが一番かなぁ」
どうやらナディアはシンプルで直接的なものが好みらしい。
そこで話が逸れていることに気付き、雑談から本題に進路変更する。
「で、ヒントは手に入れられたか?」
この台詞を言った途端、ナディアだけでなく、ソフィアやユウキの動きもピタッと停止する。
「「「…………」」」
「手に入らなかったんだな」
「入らなかったのね」
苦笑いしてロウェンとマリアが言う。
「ねぇ、エル! 何かコツないの、コツ!!」
「反則でもいいから、教えて~!!」
「僕も……」
沈黙していたと思っていたら、いきなり教えを請われた。
「そうだなぁ」
左手の人差し指を口に添えて考える。勿論、反則を教える気は毛頭ない。というより、そもそも反則など存在しない。
「例えて言うなら、自分がペンになった感じかな。魔力がインクで、指がペン先。それと、あんまり力んだり、考えたりする必要はないと思う。俺の感覚だと、魔力は体を巡ってる生体エネルギーみたいなものだから。寧ろ、力を抜いて、開放するような感じ」
言ってから、どう? と三人に目で聞く。
「うん。分かりやすい」
「そだね。やれるかも」
「すんなり納得できたよ。出来る気がしてきた」
さっきの様子から一変して、三人は一気に真剣モードになっている。
「えっ、そんなあっさり?!」
「嘘でしょ?!」
語尾に、俺(私)達の努力は?! が付いてくる。
「二人ともうるさい。集中できない」
「ちょっと黙ってて」
嘆く二人をナディアとソフィアが冷たく切り捨てる。
「「ひどっっ」」
このハモリを最後にロウェンとマリアは沈黙。ちゃんと言われたことを実行しているのは根が素直な証拠か。
そんな四人の遣り取りを見ていたユウキと目が合い、エルは肩をすくめて見せる。その仕草を見たユウキはエルに苦笑を返し、ベースの構築に取り掛かる。
そこからは皆無言。
邪魔をしては悪いので、エル達三人は少し離れた位置に移動する。そして、この辺かなという所にエル、ロウェン、マリアの順に腰を下ろす。腰を落ち着けた時に、狙ったようなタイミングでスハイツが声をかけてきた。
「よう、調子はどうだ?」
彼はポケットに手を突っ込んだまま、エルの隣に座る。
「どうでしょうね?」
聞かれても分かりませんよ、と返す。
「冷たいな。そんなんじゃお友達が逃げてくぞ?」
スハイツがからかってくるが、それを無視して言う。
「生徒を指導するのは教師の役目では?」
「何事も学ぶって時は、仲間同士でアドバイスを出しながら覚えていくもんだろ?」
正しいことを言っているように聞こえるが、彼の発言はサボりたいという意味にしか此方には受け取れない。
「そもそも基礎を教えてもらえないのでは、学ぶも何もできないと思います」
「そうっすよ。カルロ先生は生徒一人一人に丁寧に教えてますよ」
H組の方を見れば、カルロは数人の生徒に囲まれているが一人を相手にやり方を教えている。
「先生も教えに行ったらどうですか? みんな困ってますよ」
エルとスハイツの会話を聞いていたロウェンとマリアが、援護射撃とばかりに会話に口をはさむ。
「あぁ~。おんなじことを何回も話すのはメンドいから、ヤダ」
教師が教師らしくないことをキッパリ言う。
あなた教師じゃないんですか? というツッコミが三人の頭の中を通りすぎて行った。
だが、エルはそのツッコミを口に出さず、違うことを口にする。
「そういえば」
「ん?」
どうした? とスハイツがエルに視線を向ける。
「先生のベースはどんなものなんですか?」
「あ、それ。私も気になる」
「俺も」
賛同するマリアとロウェン。
「あぁ、俺のベースね。別に大したことねぇぞ?」
明らかに出し渋って逃げようとしているスハイツを三人は追撃する。
「でも気になります」
「うん、見たい」
「見せてくださいよ」
食い下がる三人にスハイツは渋い顔をする。
「えぇー、面白い所なんてないのに。ホントにそんな気になる? 見たい?」
「先生、面倒臭いとか思っていませんよね?」
何となく思ったので、エルは言ってみる。
するとスハイツは目を逸らした。
お読みいただき、ありがとうございます。
変な所で切ってしまい、申し訳ありません。




