神枷-16
救援部隊との合流地点。
学園から派遣された騎士たちが、生徒たちを次々と保護していた。
「負傷者はこちらへ!」
「回復魔法を!」
「教師の応援班は変異種の足止めへ向かえ!」
慌ただしい声が飛び交う。
第一班も騎士たちに囲まれ、医療班へ引き渡された。
リリアは意識を失ったノアの手を握ったまま、決して離そうとしない。
「大丈夫です。」
治癒術師が優しく声をかける。
「命に別状はありません。」
「ですが、極度の魔力消耗と精神疲労があります。」
「しばらくは安静が必要でしょう。」
その言葉に、リリアはようやく安堵の息を漏らした。
レオンも静かに肩の力を抜く。
「……無茶しやがって。」
その口調は呆れたようでいて、どこか誇らしげだった。
一方その頃。
野営地では、変異種を前に教師たちと救援部隊が防衛線を築いていた。
クラウスは剣を肩へ担ぎ、深く息を吐く。
「これ以上、生徒を近づけるな。」
「ここから先は俺たちの仕事だ。」
騎士団長が頷く。
「学園長にも報告は済んでいる。」
「王都にも緊急伝令を飛ばした。」
クラウスは変異種が消えた森の奥を見つめる。
救援部隊の到着を前に、その魔物は深い森の中へ姿を消していた。
まるで、自らの役目は終わったとでもいうように。
「……逃げたのか。」
クラウスは小さく呟く。
その隣で、セシルが険しい表情のまま答えた。
「いいえ。」
「あれは退いただけです。」
「まるで、何かを確かめに来たかのようでした。」
クラウスは腕を組み、静かに頷く。
「あんな魔物は見たことがねぇ。」
「王国の記録にも載っていないだろう。」
その言葉に、その場の誰も反論できなかった。
静まり返った森を見つめながら、クラウスは胸の内で確信する。
(これは偶然じゃねぇ。)
(森で、何かが起き始めている。)
夜風が木々を揺らす。
その音だけが、不気味なほど静かな森に響いていた。
こうして一年生の学外演習は、誰一人として予想もしなかった形で幕を閉じた。
お読みいただきありがとうございました。
第一部完といった感じですが、一旦ここで完了とさせていただきます。




