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求め行く者  作者: 祓川雄次


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第9ラウンド

(第九ラウンド)

「あの不確定なパンチ力は読めないな」

 カーキはゴンザレスの気持ちを察するように言った。だがそれに怯えていても勝ちに繋がることはない。

「取り敢えず次のラウンドはダメージを回復することに努めろ。自分の身体と対話して、動けるようになったらもう一度行こう」

 ゴンザレスも確かにダメージの回復と共に、気持ちの整理もできればと考えて頷いた。ここまでの採点は明らかにゴンザレスの方が有利である。それを考えた上で、一ラウンドは捨てる余裕があると考えるカーキの指示であった。


「いいぞ、次のラウンドも行けるか」

 福田はノーファールカップを引っ張り、呼吸をしやすいようにしながら国松に問いかけた。

「もちろんです」

 そう答える国松を見て、源は今までの闘いで抱えてきたダメージがどのくらい国松の力を削いでいるのかを考えていた。同じく福田も国松の疲労などを考えていた。しかし国松のような選手は行ける時に行き、気持ちを高める方が良いと思えた。だからこそ、源はダメージの事を国松に理解させるよりは、考えない方法を取る福田のやり方に賛同して黙っていた。

 ゴングが鳴り、二人はゆっくりとリング中央へと躍り出た。

パンチを今貰ってはいけない。ゴンザレスは恐怖ではないが、そんな気持ちに支配されていた。しかしそれは卑屈になってではない。あくまでも今後に攻撃をするために避けることが最善だと思えたからであった。

 避けながら攻撃を仕掛けてくる国松に対して、それほど力が入る状態ではないが、的確に急所を捕らえるパンチをゴンザレスは入れていく。反復練習の賜物なのであろうか、国松のパンチよりもヒット数は多かった。

 ラウンド終盤になり、国松のパンチがクリーンヒットした。今までも当たってはいるが、それほど効果的なパンチではないとゴンザレスは思っていた。しかし未だに力のあるパンチを受け、これを貰ってはいけないと気持ちを切り替えた。それは一部、恐怖にも思える感情であったかもしれない。

 一瞬避けるというよりも、逃げるという感じのゴンザレスの動きに、カーキはある種、恐怖からゴンザレスを開放しなければならないと考えていた。

 このラウンドはどちらとも言えずに、ジャッジの採点は割れた。

 

 残すところ三ラウンド……。

 赤コーナーは採点上有利でありながらも八、九ラウンドは国松に攻勢をしかけられ、今一度立て直さなければならないと感じているに違いない。

 かといって青コーナーも採点では劣勢に立っていて、残り全てのラウンドにおいて攻撃をしかけなければならないということは理解しているようであった。しかし九ラウンドのように攻め切れないという点から、疲労、ダメージがどのくらい溜まっているのか……それを思うと未だに結末は見えない。

 橘はそんな事を考えながら両コーナーへと帰るボクサーたちを見ていた。

 どちらのセコンドも優秀に思える。二人のボクサー以外に、ブレーンの考える戦略などによって残り三ラウンドが変わってくるであろう。

 予想よりも見守るという感覚が、橘の記者としての感覚を変えていた。


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