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求め行く者  作者: 祓川雄次


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第2ラウンド

(二ラウンド)

 波乱の一ラウンドが終了し、コーナーへと帰ってきたゴンザレスに対して、チーフセコンドを務めるカーキは、エンスウェルという腫れをなるべく抑える器具をゴンザレスの顔へと押し付けながら言葉を出した。

「前回の試合とは別人と考えたほうがいいのかもしれないな」

 その言葉に対して、ゴンザレスも同じように考えたのか、無言で頷いた。前回は極端とも言えるインファイトで、グイグイとゴンザレスの懐へと入ろうとしていた国松が、今回はアウトボクシングで望んできているのである。しかも伸びるパンチを打つゴンザレスに対して、距離負けせずにジャブを放ち、体重を乗せたクロスカウンターをあわせてきたのである。カーキの記憶の中で、ゴンザレスにカウンターを当てることができた選手はほぼいないに等しい。それを考えると前回とは異なるボクサーという事を考えたほうが懸命だという意見はもっともであった。


「良い出足だな。だがこれでゴンザレスも警戒心を強めてくるぞ」

 福田は、一ラウンド目は様子見のゴンザレスだからこそ、カウンターが当たったと考えていた。国松もそうでなければ面白くないと思った。そしてそのゴンザレスを超えていくことで、前回負けた相手を完膚なきまでに叩き、勝利することを希望していた。

「様子見のラウンドでしょうから、まだまだゴンザレスのジャブのスピードは上がると思います。福田さんの言う通り、今後簡単にカウンターは当たらないと思います」

 国松は表情を変えずに答えた。そこには真剣味が伺えた。

「そうだな。それにしても、このままアウトボクシングを続けるのか」

 福田は今後の試合展開を考える上で国松に確認をした。

「はい、今のラウンド以上にこっちも動いてジャブを強めていこうと思います」

 国松は少しだけ、唇を強く結んだ。

 

 コーナーが様々なやり取りをしている間に、リングアナウンサーは二人の戦績、経歴を紹介していく。それと共に本来であればインターバル中にプラカードを持って次ラウンドを紹介するラウンドガールなるものがリングの中を闊歩するのであろうが、国松もゴンザレスもそのようなショーは要らないと断ったために、存在はしなかった。リングの中の華は、ボクシングのみで良い。そんな男たちの決意は、ニランド目のゴングを呼び寄せた。

 観客は一ラウンド終了間際に、ゴンザレスがゴング後の加撃とはいえ倒れたことにより、国松に対する期待を寄せて歓声を上げた。

 ゴンザレスは福田が言ったように警戒をしているのか、先ほどまでよりも長い距離を保つようにしていた。それは中間というよりも長距離という表現が合うようであった。

先ほどまでとは異なり、長く、早いジャブが飛び出した。後ろ足の蹴りをしっかりと使用したジャブである。それが遠くからの攻撃を可能にし、更に踏み込み過ぎずに、距離をしっかりと保っている。だからこそ、そのジャブをゴンザレスは何発となく連打することも可能であった。

 たった一ランドでゴンザレスの動きを修正させたのは、本人の能力もあるが、トレーナーの助言もあったのかもしれない。それを思うと福田は、より一層戦況を見極めて、国松への指示をしていかなければならないと考えていた。

 再びジャブの繰り返しになるかと、観客が少しだけ静かになりかけた時であった。二人のボクサーは相手のタイミングを見計らっては、ワンツーなどを打ち始めた。

 足の動きも左周りだけではなく、時折逆方向へとステップを踏む機会が増えてきた。その動きと共に、グローブを使用するストッピングやパーリングのみの防御ではなく、上体を膝の動きと連動させてウィービングなどを使用して避けるという動作も増えてきた。運動量の変化を見た観客たちは、あくまでも一ラウンドは様子見であったと、改めて悟った。

 グローブを使用して避けていると、ゴンザレスは攻撃のリズムを上げてくる。それを感じた国松は、できる限り空振りをさせて、ゴンザレスが調子づかないように工夫を始めた。ゴンザレスもそれを承知なのか、空振りをする際には、素早くパンチを止め、できる限り無駄な体力を消耗しないように心がけていた。前回は当たっても向かってくる国松に対するうち疲れが後半出たこともあったので、空転によるスタミナ不足に陥ることも考えての行動であった。

 そんな中、要所要所でゴンザレスのパンチが軽くヒットする。国松は何とか距離を詰めて、ジャブを打ち返すが、軽打すぎてポイントが取れるようなものではなかった。

 久恵は今までボクシングをいうものを見たことがないので、どちらが優勢などということはわからなかった。だが必死に戦う国松から目を離すことはなかった。倒せば勝ちということはわかるが、採点は知識がなく全くわからない。だが国松に取って納得いく試合になればという願望を胸に秘めて祈りながら見つめていた。

 このラウンド、橘の採点ではビックパンチはないが、ヒット数を考えると、ゴンザレスに与えるしかないと思えた。


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