お前が、ライか?
やっぱり、脳筋?
「これからお前達は、この家に住む住民を守って欲しい」
「「「「分かりました、ライ様」」」」
まあ、これで家の安全は大丈夫だ。
さて、次の冒険先を考えていると……
「ライ様!」
「どうした?」
「リザラルト侯爵から手紙が!」
手紙を読んでみると、2週間後に「とある国」に視察に行くから護衛をして欲しい、という内容だった。
しかも、視察に行く「とある国」とは、魔王が統治している国だった。
俄然、興味が湧き受ける事にした。
きちんと冒険者ギルドを通しての指名依頼にして貰い、出発の日が来た。
「何故、視察に行く事になった?」
「分からん。向こうの指名だからな」
「そうか」
「多分、ライが狙いだろう」
「まさか~」
10日後、そのまさかだった。
謁見の間で、リザラルト侯爵の口上等、形式的な挨拶が終わると直ぐに俺の前に自ら来た。
「お前がライか?」
「ああ」
「下級の精霊達から自慢話込みで聞いていたが、なる程な」
千獣の魔王ライゴスが治める国は、多人種国家で、人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族や他の種族も暮らす国だ。
まあ、国と言っても、この国に属する村や街は10も無いけどな。
それと、下級精霊達を経由して魔王ライゴスは俺を知ったみたいだ。
「下級精霊達のカード、全て持っているんだろ?」
「ああ」
「これは良い!」
貰ったカード全てを見せると、魔王ライゴスは上機嫌な反応をした。
リザラルト侯爵達は、会話の内容から察して空気になっている。
「それなら、試合だ!」
「は!?」
「数百年振りの全属性保持者だ」
「拒否は?」
「当然、無い!」
「……分かった」
「よし、決まった!」
王城の練武場で試合する事になった。
「ルールは、殺人は禁止だ。それ以外は自由だからな。本気でやりあえ!」
「マジか」
「此方からは、クリムだ!」
「はっ!」
俺とキサラと、向こうのクリムが練武場の中央に立つ。
「準備は良いか? ……始め!」
「はっ!」
「ライ、頑張って!」
「ライ様、頑張ってください!」
いきなり仕掛けて来た。
「速度上昇! 反応速度上昇!」
「お!」
いきなりの上段からの一撃を躱すキサラ。
「それなら、これはどうだ?」
「耐久力上昇! 腕力上昇!」
ガキィ!
「なる程な。これなら楽しめるな」
向こうは、回転を上げてきた!
「く……キサラ!」
「分かったのじゃ」
キサラには、今の姿のままで「鬼」を開放させ、角と牙が生えた。
「ぎっ、がぁ!」
相手以上に、上がった速さと腕力で翻弄しながらキサラはダメージを与えていき……
「掌握なのじゃ」
キサラの手刀が、クリムの首に触れる。
「勝者ライ!」
「勝ったのじゃ!」
「やったな、キサラ!」
「ライが勝ったわ!」
「ライ様が勝ちました!」
「ライ殿が勝ったのであります!」
キサラ達と勝利を味わっていると、魔王ライゴスが俺達に近付いてきた。
「次は俺だ!」
「それは拒否だ」
「何故だ?」
「俺達は、あくまで護衛だ」
「……そうだったな」
魔王ライゴスは、理解を示したかに見えたが、俺の耳元で言った。
「本音は?」
「こんな観衆の前で手札を晒すかよ」
「違いないな」
魔王ライゴスは、俺達から離れ、最初に位置に戻ると言った。
「余興は終わりだ! 宴会場を用意した。視察に来た使者殿も楽しまれるが良い」
……その後は、まあ聞くな。
ただ、魔王ライゴスのアルハラが酷かったとだけ言っておく。
翌日は、俺達も王都に行き、観光を満喫した。
「ライ、アレが欲しい」
「分かった」
「ライよ。妾はソレが欲しいのじゃ」
「コレだな」
「ライ様、アレが……」
「アレか」
「この台の、全部が欲しいであります!」
「全部!?」
この日は楽しかったのだが、ゲームで使われるアレが俺を襲った。
「ライ様に仲間の皆さん。ライゴス様がお会いしたいそうです」
呼ばれたのは、昼食後から2時間後だった。
しかも、呼ばれた場所が、地下闘技場だ。
「さあ、ヤろうぜ!」
「……魔王からは逃げられない、か」
「心配するな。此処に居るのは、オレとライ達だけだ」
まあ、確かに俺達を案内した兎人族のメイドは、この地下に入る扉から中に入らなかったな。
「分かった」
「それなら……」
「但し!」
「但し?」
「此処での戦闘は誰にも言うな」
「分かった」
「それなら、牙と爪に誓え」
「……! 良いだろう。我が牙と爪に誓う!」
獣人族のこの「牙と爪に誓う」は、鋼鉄の誓いで、この誓いを破るのは獣人族に非ずと言われている。
「さあ、始めようぜ」
「ああ」
「女、開始の合図だ」
「ライ様……」
「やってくれ」
「はい、ライ様! ……始め!」
「行くっぜー!」
「キサラ!」
「のじゃ」
「身体強化上昇!」
「何ぃ! がはぁ、ぎぃ、ぐふぅ、が……」
キサラの先制の飛び込み右拳が魔王ライゴスの左頬にヒットし、着地の反動を利用して左回し蹴りから、左足着地からの右前蹴りを鳩尾に入れ、右足強踏み込みからの右手刀を右切上に放つ。
「キサラ!」
「のじゃ」
キサラが後ろに跳躍で大きく下がる。
「喰らえ、炎槍八連!」
「な……」
ゴウ!
「……がはぁ! まだまだぁ……」
「何が、だ?」
俺は、紅い刀を魔王ライゴスの首に添える。
「……オレの負けだ!」
俺は解除した。
「勝ったのじゃ!」
「ああ。俺達の勝ちだ!」
「ライが、魔王に勝ったわー!」
「ライ様が魔王に勝ちました!」
「ライ殿、凄いであります!」
3日後の帰路の途中で、俺達の馬車の御者席に居るリンが話し掛けてきた。
「ライ様、ソレは?」
「魔王ライゴスから貰った」
「もしかして、『結晶』でしょうか?」
「みたいだな」
厳しくも温かいメッセージを待っています!
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