良いけど、幾ら払う?
善意からの質の悪い悪戯です。
そして、転移の魔法陣が出現して、俺達は地上に戻った。
ダンジョンから脱出する為の「転移の魔法陣」は、ダンジョンの出入り口から少し外れた所に出現する。
だから……
「離してよ!」
「誰が離すかよ」
「良いから、離して!」
「離したら、逃げる気だろ?」
「当たり前よ!」
「諦めろよ。こんな外れた場所、誰も来ないんだからな」
どうやら、「お話し合い」に夢中みたいで、俺達と魔法陣の光に気付いていないみたいだ。
「男女が、何かダンジョンの裏で、揉めているな」
「ライよ……30点なのじゃ!」
「キサラ、30点……なのか?」
「うむ」
あまりの点数の低さに俺は膝が地に突いた。
「あの~、ライ様?」
「どうした?」
「どうします、アレ」
リンが指す「アレ」は、先程の男女で、「お話し合い」が悪い方向に進み、女性が殺されそうになっていた。
「もう良いや、死ね!」
「いやぁあああーーー!」
「キサラ」
「うむ」
「が……」
キサラとのアイコンタクトで、男には首の後ろを「トン」して気絶させた。
「大丈夫か?」
「は、はい」
「じゃ!」
面倒事に、巻き込まれない為に、必要な安全確認を済まして早々に立ち去ろうとした。
「待ってください!」
しかし、女性に「待て」のコールが出て、服の端を掴まれた。
「何故?」
「お願いします。助けてください!」
「良いけど、幾ら払う?」
「え!?」
「ギルドを通さないのなら、かなり割高になるけど、良いのか?」
「え? 助けてくれないの?」
「だから、助けて欲しいのなら幾ら払う?
俺達は冒険者だから、無料って訳にはいかないからな」
「そ、そんな……」
「出さないのなら……」
「分かりました、払います!」
「分かった。それじゃあ、先ずは依頼内容を話して貰おうか」
「はい……」
内容は、彼女「エピーナ」は、商家の娘で、かなり経営が厳しいらしい。
だから、彼女も独自に金策しようとしたが、上手く出来ず、最後の手段に出た。
それが「冒険者」だ。
彼女エピーナは、魔法使いとしての才能が有ったみたいで、第2位階魔法の「風槍」が使えたから、コレを切り札にダンジョンのモンスターを倒して魔石で稼ごうとした。
そこで、冒険者ギルドに行ったのだが、エピーナはやらかした。
商家の娘なのに、正直に書いたのだ。
切り札の第2位階魔法「風槍」が使える事を。
その結果、受付嬢が大きな声でバラしてしまい、先程の男が受付嬢とのやり取りを聞いて勧誘を始めた。
後は、まぁ、お決まりの展開が始まって、最初は男も優しく接していたが、次第に傲慢になり、最後がアレだった訳だ。
……話し合いの結果、臨時でパーティーを組み、彼女が止めを刺したモンスターから出る魔石の売却金の4割が俺の分で、コレが依頼料となる。
念の為に、彼女が必要としている金額を聞き出した俺だが、ちょっとした悪戯が頭に浮かんだ。
俺は、エピーナの実力を見る為に、先ずはダンジョンに行こうと言い出し、彼女は「……分かりました」と言う事で賛同した。
因みに、キサラとリンは俺の悪戯に気付いて呆れ顔だ。
「ちょっと、割の良い狩り場が有るから、そこにしよう」
「わ、分かったわ」
そして、ダンジョンのショートカットの転移を使って、41階層に転移移動した。
「着いたぞ」
「え、ええ」
彼女は、昨日今日、冒険者登録したばかりの新人だから、今、居る場所とか全く分かっていない状態になっている。
「俺としても、こんな時間が掛かる上に面倒臭い依頼は早く終わらせたいから、俺達が、ギリギリまでダメージを負わせて、エピーナが『風槍』を放って止めを刺す役な」
「わ、わか、分かったわ」
サーチ&リミッドダメージ
「風槍!」
サーチ&リミッドダメージ
「風槍!」
サーチ&リミッドダメージ
「風槍!」
「さあ、次に行こう」
「ま、待って。魔力が……」
「はい、魔力ポーション」
「……はい」
サーチ&リミッドダメージ
「風槍!」
サーチ&リミッドダメージ
「風槍!」
俺達は、モンスターを見つけると、狐狩りの様に追い掛けさせて彼女の前まで誘導すると、放っといても1分後に死にます状態で彼女にバトンタッチ。
結果は……
「魔石の売却金は、白金貨1枚です」
「え!?」
良し!
計画……いや、計算通りだ!
「はい、大金貨6枚な」
「ちょっと待ってよ!」
「どうした? きちんと6割だろ? 商家の娘なのに計算も出来ないのか?」
「で、出来るわよ! それよりも、あんなに簡単に倒していたけど、本来なら、私の実力じゃあ絶対に無理な筈よ!」
「良かったじゃないか」
「……何が狙い?」
「狙いも何も……」
「ライ様……」
「まあ、狙いが無いと言ったら嘘になるな」
「やっぱり。それで何が狙いなの? 家の乗っ取り……じゃないわね。私……じゃあ無いわね」
そう言いながら、エピーナは自分の慎ましい胸を見て軽く絶望している。
まあ、キサラもリンも美少女だからな。
「狙いは何! 教えて!」
もう、ネタバラししても良いかな?
???side
「貴方の帰りを待っているわ」
「ああ、必ず帰る」
「必ずよ」
「分かっている。」
「生まれた子供に、『お父様は居ないの?』なんて言葉は聞きたくないわ」
「それは……」
「だから、必ず帰ってね」
「約束する」
「行ってらっしゃい」
「行ってくる」
懐かしい夢だなぁ。
出発する時の会話だ
あれから、どれほどの時間が流れたのか、分からないが、きっと怒っているだろうなぁ。
腹の子は、男の子だろうか、女の子だろうか?
もし、女の子で、「貴方、誰?」なんて言われたら泣く自信が有るぞ。
……やっぱり、自力で解いた方が良いかなぁ?
でも、コレ、結構強力なんだよなぁ。
自力で解いたら、その余波が凄い事になりそうなんだよなぁ。
やっぱり、誰かが解いてくれるのを待とう。
絶対に怒られるだろうけど、正座説教1時間ぐらいかなぁ。
厳しくも温かいメッセージを待っています!
そして、星の加点をお願いします。
因みに、正座説教1時間と予想していますが、実際は6時間なのは、未来でのお話です。




