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「旦那様、お気持ちはわかりますがその辺りで……。」
クリスタの愛らしさを目を輝かせて語るエレボス伯爵を止めたのはエレボス伯爵の執事だ。
「旦那様が申し訳ありませんでした。今社交会では愛らしいご令嬢を女神かのように崇め奉る貴族男性がとても多いのです。愛らしいご令嬢の情報はデビュタント前から飛び交っていて、ラフォレーゼ大公令嬢は今最も注目されているのです。」
女神のように崇め奉ると言う執事の言葉に、アイドルかっ!と、クリスタは思った。
「ご本人の了承を得て…ですが、このような物が貴族男性の間で売買されております。私もですが、旦那様はこれらを集めるのが大変お好きなのです。」
見せられた物は姿絵。詩織の世界で言うところのブロマイドだ。
そのブロマイドを集めるのが好き、と言う事は……エレボス伯爵とその執事はアイドルオタク的な人だったりして。
「ですが、ご安心下さい。デビュタント前のご令嬢の姿絵は出回る事のないよう姿絵愛好家の方々で協定を組まれておりますので、ラフォレーゼ大公令嬢の姿絵は出回っておりません。」
胸に手を当ててにこやかに笑う執事。
「マナーを守り、分別をわきまえる。それが紳士の嗜みです。」
ブロマイドを大事に懐にしまう執事の姿に、クリスタが社交会にデビューしたらクリスタの姿絵が出回るだろうと確信した。
「それでは坊ちゃまの所までご案内致しますので、フードをお被り下さい。」
すごく自然な動作でフードを被らされたクリスタは執事の案内でヒューのいる部屋へと移動する。
どうやらヒューは私室にいるらしい。
「坊ちゃま。ラフォレーゼ大公殿下と奥方、ご令嬢がいらっしゃいました。」
シーン。
ドアの向こう側からは反応なし。
「坊ちゃま。プリうさタンですぞ。」
プリうさタン?
執事の言葉にラフォレーゼ一家が首を傾げた時、ドアがギギギと重そうな音を立てて薄く開いた。
「おっふ!まま正しくプリうさタンがそこに!お、お、お、お近付きになりたいものでありますなぁ。」
薄く開かれたドアから金髪に青い瞳の美少年が見えたが、ニタリと笑うその顔にドン引きだ。
「不敬ですぞ。ちゃんとドアを開けてご挨拶をなさって下さい。」
「ぎゃあ!」
執事にドアを全開にこじ開けられて姿を見せたヒューだが、顔を隠すように床に伏している。
「そ、そ、そ、某は人に見られる事が苦手故、ご勘弁を。」
ヒューは見た目こそマシューにも劣らない美少年なのだが、色々残念だ。
床に伏せながらもチラチラクリスタを見ている。
「嫡男のヒューにございます。こう見えても魔法具の発明家でして、先程執事が出した姿絵も息子の発明品で描かれております。」
ドン引きしているラフォレーゼ一家に、エレボス伯爵が鼻高々とヒューを紹介するが、クリスタの内心は……帰りたい……だ。
「プリうさタンに見下されてるでありますぅ。ぐへ。」
ニタリと満足げに笑うヒューはいくら美少年でも鳥肌が立つほど不気味で、思わず一歩後退してしまったクリスタの肩を母がそっと包んだ。
「能力だけでお見合いを組んだ母を許してね。お見合いは今日で終わりにしましょう。」
どうやら母もエレボス伯爵達のキャラの濃さにドン引いているらしい。
キャラの濃過ぎるヒューとのお見合いは、母に考え直させるきっかけとなったようだ。




