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この世界の基盤がゲームの『オレ攻め』だったとしても、クリスタにとっては現実の世界。
当たり前の事だが現実の世界には様々な人が暮らしていて、人の好みは十人十色だ。
クリスタの住む屋敷は元々は母の実家の持ち物でTHE・貴族!と言った城のような重厚感溢れる造りになっている。クリスタの屋敷とは違い、ライムの屋敷は広い2つの庭園が敷地の中央にあり、木々や花々に包まれた明るく開放的な造りをしていた。
そして今回訪れたヒュー=エレボスの屋敷はと言うと……言い表せる言葉が見つからない。
パッと見はメルヘンチック?なのだが、何かが違う。まずクリスタ達を迎え入れる鉄製の門が、異様に大きくて迫力がありすぎて怖い。
馬車で鉄製の大きな門を潜ると、玄関までに立ち並ぶ木々はトピアリーで、動物の形に刈り込まれているのだが、小さなうさぎの横に大きな口を開けたライオンがいたりとアンバランスだ。
「個性的な庭だね。」
我が家の庭の造園等にはさえ無頓着な方である父が、口元を引き攣らせながら父の隣にいる母に言った。
「エレボス伯爵令息の発明した魔道具で刈り込まれていると聞いています。将来有望な発明家ですのよ。」
クリスタのお見合い相手は、母から見て将来性があるかで決まるらしい。
ライムは未来の宰相候補で、ヒューは素晴らしい発明家になるだろう。お見合いの打診があったヴァレリーの家も騎士の名門だ。
「エレボス伯爵令息の発明品は、クリスタをより素晴らしい魔法使いにしてくれますわ。」
全てはクリスタの為…そう微笑む母は輝いているが、勉強漬けの毎日や、将来性だけで選んだ相手と週1でのお見合い。自由がなさ過ぎて正直心が折れてしまいそうだ。
「クリスタの見合いは、その…まだ続くのかい?」
母の言葉に暗くなったクリスタの表情を見た父が母に問う。
「まだ2人目ですのよ?」
まだまだ続くと、さも当然の様に言ってのける母にクリスタの表情は更に暗くなる。
クリスタの成長は推しの成長……と、母の行き過ぎな教育を甘んじて受け入れてきたクリスタではあるが、お見合いにまでそれを組み込まれるのは辛い。
恋愛や結婚の自由な世界の詩織の意識があるから尚更だ。
「………。」
心を閉ざして、母の思う通りに生きた方が楽だろうか。そう考えるクリスタの表情は無表情で、ゲームの中のクリスタそっくりになっている事にクリスタ自身は気付けない。
「シルフの洗礼を受ける風の一族は、自由を失うと心まで失ってしまう。出来る事ならクリスタに自由を与えてやって欲しい。」
クリスタの今を考える父と、クリスタの未来を考える母とでは意見が合うわけがないだろう。
「貴方はクリスタの才能を伸ばしてあげたいとは思わないの?」
父の言葉に激昂した母は、目を吊り上げて父に吠えたのだった。




