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「そんなにオリエンタルリリーが気に入ったなら……。」
ライムが片手をスッと上げると庭師と思われる男性がやってきて、オリエンタルリリーにハサミを入れた。
「プレゼントするよ。受け取ってくれるよね?」
オリエンタルリリーを2輪透明なフィルムで包み、銀色のリボンで飾り付ける。
「魔法加工もね。」
「かしこまりました。」
ライムの願いで庭師の男性がオリエンタルリリーが長持ちするように魔力でコーティングを施すと、それを受け取ったライムがクリスタの手にオリエンタルリリーを渡した。
「僕の気持ち…受け取ってくれる?」
きゅるんと笑うライムのどんな気持ちが込められているかはわからないが、このオリエンタルリリーは本当に嬉しい。
「ありがとうございます!本当に嬉しいです。」
クリスタが笑顔で心からの礼を述べると、一瞬ぽかんとしたライムだったが、照れたようにへへっと笑った。
「じゃあ、クリスタルドロップ見に行かない?オリエンタルリリーもキレイだけど、クリスタルドロップも本当にキレイなんだ。」
少し照れた様子のライムはさっきまでのきゅるんとした笑顔ではなく、年相応の自然な笑顔に見える。
「はい、喜んで。」
ライムのエスコートで行き着いた先は光に溢れた温室だった。
「ここは僕の研究室でもあるんだ。」
えっへんと胸を張るライムの顔に先程までのあざとさは見られない。
「研究室?ケルンズ様は何か研究なさってますの?」
「僕はね、植物が大好きなんだ。今はまだ花をキレイに咲かせるとか元気にする栄養剤とかしか作れないけどね。」
栄養剤とかしかと言うが、植物の栄養剤等が作れるなんてすごいとクリスタは思う。
「では花の庭園の花々が美しく咲き誇っているのは、お世話をなさっている方の力はもちろんですが、ケルンズ様の栄養剤のおかげなのですね。素晴らしいです。」
「僕は宰相の息子だよ?貴族の令息が土いじりで遊んでるなんておかしくない?」
ライムの顔に再びきゅるんとした笑顔が浮かんだ。
まるで笑顔のマスクで顔を覆うように本心を隠しているように見える。
「ケルンズ様は私の兄をご存知ですか?」
「知ってるよ。マシュー=ラフォレーゼ令息…、今はリッチフォースだよね?眉目秀麗で才色兼備。令嬢の憧れの的である完璧な令息って言われてる、クリスタのお兄さん。」
眉目秀麗で才色兼備。
令嬢の憧れの的。
完璧な令息。
確かに、と周囲の見る目に妹ながら納得だ。
「その完璧な令息の兄は先日、リッチフォース領にある山で狩りをしていました。」
前回クリスタと共にリッチフォース領に行った時の事。その狩りにはアイリーンも加わっていた。
「は?」
「猪位なら素手で狩れます。」
熊でもイケるかもしれない。
「素手で?!」
「完璧な令息が素手で楽しそうに猪を狩るのです。おかしくありませんか?」
にっこり。
普段は母の教育もあり、頭が良く冷静沈着な兄だが、私がいなかったり母の手を離れると兄ははっちゃけるらしい。
クリスタは長期休みの半分をリッチフォース領で過ごしたが、マシューは長期休みが終わるギリギリまでリッチフォース領に滞在していた。
その後届いたベンヴェヌートからの手紙にはマシューの武勇伝がたくさん語られていたのだった。




