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リッチフォース領の街並みは、詩織の世界で言うと、ランプを擦れば魔人が出てくる物語の舞台になっている街によく似ている。
露天が立ち並び、とても賑やかだ。
「………。」
「………。」
そんな賑やかな街並みをクリスタはベンヴェヌードの腕に手を引かれ、ただ無言で歩いていた。
「あの…さぁ。マシュー…じゃなくてクリスタ。」
「はい。何でしょう?」
「いや、なんでもない。」
ベンヴェヌードがクリスタをチラッと見るが、すぐに視線をクリスタから外してしまう。
「………。」
「……。」
沈黙が苦しい。
そう思いつつも、何から話せば良いのか…。
困惑しながら歩き続けていると、2人の前に串焼きの肉が美味しそうな屋台があった。
「肉!オレ!肉買って来る!」
そう言ってクリスタから離れたベンヴェヌードは、クリスタをその場に残し串焼きの屋台へと走っていく。
意気揚々と屋台へと走って向かったベンヴェヌードは、屋台のおじさんから串焼きを2本受け取るとクリスタの元へ戻ってきた。
「ほらよ!…って、ごめん。お嬢様はこんなもん食わないよな。」
串焼きを1本をクリスタの口元に差し出すが、ベンヴェヌードは苦笑いを浮かべている。
「ありがとうございます。」
ベンヴェヌードの手にある串焼きにパクリと口にすると、クリスタの口内にじゅわっと肉汁が広がった。
「美味しい!!」
確かにお嬢様であるクリスタは屋台で売っている串焼きの肉を食べた事などないが、詩織の記憶の中に焼き鳥などの串焼きを食べた記憶がうっすらと残っていて、串焼きの味がとても懐かしく感じる。
ベンヴェヌードから串焼きを受け取ると、2人は串焼きを食べながら歩き出した。
「リッチフォース領で色々食べたんだけどさ、これが1番好きなんだ。美味いだろ?」
「とても美味しいです。私もこのお肉大好きになりました。」
ベンヴェヌードの言葉に笑顔で還すクリスタを見て、ベンヴェヌードはホッとしたように笑った。
「なぁ、そのお嬢様口調って止められない?丁寧な言葉遣いされると、親友のお前が遠く感じるんだ。」
お嬢様であるクリスタにとってお嬢様口調は日常的に使っている言葉遣いなのだが、ベンヴェヌードには違和感しかないらしい。
「ずっと……騙してた私をまだ親友と呼んでくれるの?」
「さっきお前の父上が辺境伯にしてた説明は聞いてた。そもそもの原因は母様だろ!あの時お前が女のままで会ってたら、今頃お前は兄貴の婚約者だ。」
ブルーノの婚約者……あり得る。
「オレさ、お前に話したい事がたくさんあってさ!なのにお前は手紙1つくれないし。オレも手紙出してないからお前の事は言えないけど、ちょっと怒ってたんだ。直接会って、謝っても許してやらねーって思ってたけど……オレの家族がごめんな。謝らなきゃならないのはオレの方だ。クリスタが許してくれるなら、改めてオレの親友になって欲しい。」
マシューではなく、改めてクリスタとしてベンヴェヌードの親友に。
ベンヴェヌードは少し気まずそうな顔をして、自分が食べている串焼きの肉をクリスタに差し出した。
「うん、ありがとう。」
クリスタが迷う事なくベンヴェヌードが差し出した肉を食べると、ベンヴェヌードはクリスタの串焼きを持つ方の手を掴んでクリスタの食べていた肉を食べる。
そしてお互いの口元が肉汁で汚れているのを見て、2人は笑った。




