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エントランスに行くと、そこには父と談笑するくるくるっとした茶色い髪の少年がいた。
あれが誰だか一目でわかる。
「ベンヴェヌード。」
10歳で会った時よりも背が伸び、鍛えているのか身体もがっしりとしているし、精悍な顔付きになったけど、あれはベンヴェヌードだ。
「おっ!来たか!マ、、、。」
クリスタの声が聞こえたのか、ベンヴェヌードがクリスタの方を向く。
「えっ?ええっ?!?いや、でもその髪の色はマシュー?えっ?でも女?マシュー?!」
ベンヴェヌードはクリスタの顔を見て、困惑したのち目と口を大きく開けて硬直してしまった。
今まで男だと思っていた親友が女性の姿をして現れたのだ。無理もない。
「申し訳ありません。以前にお会いした時はマシューお兄様の名前を名乗っていました。私はクリスタ=ラフォレーゼと申します。」
優雅にお辞儀をして挨拶をするが、マシューだと思っていたクリスタの姿にショックが大きいベンヴェヌードは、目と口を大きく開けたままクリスタを凝視している。
「だ、大丈夫かい?」
瞬きすらせずにクリスタを凝視するベンヴェヌードに父が声をかけるが、ベンヴェヌードは動かない。
そんなベンヴェヌードの様子を笑いながらマシューがやってきた。
「やっぱり兄弟だね。成長してからの私の姿を見たブルーノと反応が全く同じだ。」
硬直するベンヴェヌードを、マシューは口元だけは薄く笑みをうかべているが、冷たい目で見ている。
ベンヴェヌードと違い、ブルーノからはクリスタと名乗っていたマシューにたくさんの手紙や贈り物がまめに来ていた。
受け取ったのは全てマシューで、贈り物があった事などクリスタは知らない。
10回に1回位はマシューの名前で手紙と贈り物を全て送り返していたのだが、マシューはマシューとクリスタが偽って名乗っていた事を教える手紙は一度も送ってはいなかった。
「ブルーノは半日立ち尽くした後、膝から崩れ落ちて泣いていたよ。私が男だった事がよほどショックだったんだね。」
にっこり、と笑うマシューだが目が笑っていない。
他所の令嬢が見たら間違いなく一目惚れするレベルの極上で美麗な笑顔なのだが。
「お、お兄様が怖い。」
マシューのすぐ後にやってきたらしいアイリーンが、共に来た母に半泣きですがり付く程あの時の女装でマシューの心についた傷と怒りは深いのだろう。
「すまない、マシュー。私が保身に走ったばかりに。」
銀色の髪の大好きなガドリン夫人からクリスタへの嫁にくれ口撃の防波堤になりたくなかった父は、その防波堤役をマシューに押し付けてしまったのを今になって激しく後悔していた。




