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クリスタが魔法の才能に溢れているように、祖父には精霊や妖精を見る事の出来る優れた目を持っている。父も精霊や妖精を見る事は出来るが祖父程ははっきり見えないらしい。
付近の風の精霊に聞いたところ、クリスタにも才能の片鱗が見えるし、精霊もクリスタと遊びたいと言っているとの事。
ただクリスタの精霊の存在への認識がクリスタは祖父や父とのそれとは微妙に異なっているらしく、クリスタの中のその微妙なズレが妖精との間に壁みたいなものを作ってしまっている。
シルフのような力の強い精霊との交流は可能だが、周囲にいる力の弱い精霊は見る事も話す事も出来ない。
瞳ではなく心が精霊の存在を否定してしまっていると、精霊達は感じていた。
その微妙なズレとは詩織の意識ではないかとクリスタは思う。
前世の世界は精霊や妖精や魔法は本やゲームの世界のもので現実の世界にはないもの。
今のクリスタの世界では精霊や妖精や魔法は身近な現実のものだ。
かなり薄れてしまったが、クリスタの中には確かに詩織の記憶がある。クリスタとして洗礼を受けたり魔法を使用したりしても、その記憶が精霊や妖精との間に壁みたいなものを作っているのかもしれない。
朝食後、精霊達から話を聞くと言って屋敷の外へ行った祖父を見送ったクリスタは、マシューと共にヒュドールのいるマシューの部屋に戻った。
「おかえり。」
クリスタとマシューがノックをしてから部屋に入ると、ヒュドールは本を読んでいた。
「テーブルの上にあった本を読ませてもらってる。」
それはクリスタがマシューとして男装している間に紳士としてたち振る舞う為に読んでいる『紳士の、紳士の為の、紳士の為だけのマナーアップ講座』と言う紳士のマナーについて書かれた本である。
ちなみにマシューにはその淑女版が渡されている。
「不自由はない?必要な物があればもらってくる。」
そう問うマシューの口調は素っ気ないが、それでもマシューの口から出た気遣いの言葉にヒュドールの頬が緩んだ。
「心配ない。食事は上手いし本もある。仲間や外の様子は精霊が教えてくれるし、、何よりお前がいるか………。」
「なら良い。」
ヒュドールの最後の一言を最後まで言わせないマシューの鋭さは、クリスタには見せた事のない顔だ。
「ヒュドールには精霊が見えるの?」
「マシューは見えないのか?そんなに精霊を引き連れてるのに?風の精霊だけじゃない。水に火に土、光の精霊までいるな。」
引き連れてるの言葉にクリスタはキョロキョロ周りを見るが精霊の姿は見えない。
「マシューが望めばどの精霊も力を貸してくれるそうだ。それなのに見えないって、ある意味すごいな。」
本をテーブルに置いたヒュドールは、クリスタへと歩み寄り手を伸ばす。
「こんな精霊初めて見た。」
よほど変わった精霊がいたのだろうか、ヒュドールの手はクリスタの後頭部へと回る。
「ぐふぐふ笑って……と、う、とい?って言いながらクリスタを見てる。」
まさかの創造神?!
精霊に化けた創造神がクリスタの後頭部からマシューの女装姿を見て尊いと笑っているのだろう。
うん、確かに尊いよ、と激しく同意の詩織である。
「いつまで弟に引っ付いてるの?」
マシューの言葉に気が付くと、精霊の見えないマシューには今のクリスタはヒュドールに頭を抱き寄せられてるような状況だ。
「おっと悪い。見た事のない精霊がいたから………。」
「クリスタ!マシュー!!」
ドンドンドン!!!廊下から激しいノックの音が聞こえる。
この声はブルーノだ。
「ベンが!ベンヴェヌードがいないんだ!!」
それは祖父と父が屋敷を出たほんの少しの出来事だった。




