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092 艦隊戦9

SIDE:ガイアベザル艦隊 旗艦デルベック 艦隊司令部


 平野の真ん中にポツンと聳え立つ山がある。

古い地図によるとズイオウ山という山だ。

地平線の彼方にその山頂が僅かに見え始めた。

艦隊司令ヴェルナーツは、何気なくその山頂を眺めていた。


 その時、艦橋内に警告音(アラーム)が鳴り響いた。


『ロックオン警報! ロックオン警報! アクティブレーダーに捕捉されています』


 続けて警告音声が発せられるが旧帝国(ガイア)語のため内容は理解出来なかった。

だが、ヴェルナールは長年の経験により、それが魔導レーダーに探知されたという警告だと認識していた。


「ズイオウ山の山頂が見えたと同時に魔導レーダーに捕らわれたか。

となると、あの山頂に魔導レーダーがあるということか」


 ヴェルナーツはズイオウ山の山頂をじっと見つめる。

その山頂に魔法陣が広がり、眩い光が発せられた。

拙い。と思った時には遅かった。


ドガン!


 突然先頭を航行していた陸上戦艦バーアムが爆発する。

魔導砲の直撃を受けたのだ。

間違いない。

あの山頂から撃たれた。

ヴェルナーツは状況を正確に把握し命令を下す。


「全艦後退! あの山頂が見えないところまで退け!」


 旗艦の艦橋左右後部の各見張り台に配置されている信号員が、光魔法の信号で他の艦に命令を伝える。

だが、信号員が伝える前に、旗艦が動き出しただけで他の艦も追随するかのように艦隊運動を始める。

その練度が他の艦を生き残らせることになった。


「長距離魔導砲だと?

あの山頂から狙われたら、あの山には誰も近付けないぞ!」


 魔導砲は魔力ストレージからのエネルギーチャージの問題で次射までにタイムラグがある。

それを利用して接近すれば魔導砲搭載艦でなくても敵の魔導砲搭載艦を攻撃することが可能だ。

だが、あの山頂の長距離魔導砲はそうはいかない。

こちらの魔導砲の有効射程内に接近する前に、こちらは全艦撃沈されてしまうだろう。


 射程距離には最大射程距離と有効射程距離がある。

光魔法である魔導砲は、光の性質上真っ直ぐにしか進めない。

つまり地平線の向こう側までは攻撃することが出来ない。

この直接狙える目標までが最大射程距離となる。

これは目標や自信の高度などにより変動する。

目標を直接目視できる距離と言えばいいだろうか。

ただ、狙えるからと言って、その攻撃が有効だとは限らない。

光魔法という性質上、距離が長くなれば光が空気で拡散して威力が落ちる。

この光魔法の威力が維持される距離こそが有効射程距離となる。

この有効射程距離があの山頂の長距離魔導砲と、我が艦隊に配備されている魔導砲の違いだ。


 あの山には未知の遺跡があると目されていた。

その遺跡の存在が砲撃によってある意味証明できたのは皮肉なものだ。

だが、あの長距離魔導砲がある限り、ズイオウ山には接近することすら出来ないだろう。

当初の目的はズイオウ山の占拠、後にリーンワース王国王都の殲滅だった。

おそらく敵の不明艦はこの遺跡のものだ。

つまり、敵の魔導砲搭載艦はこの山頂要塞の所属。

このまま峡谷に向かっては、峡谷の要塞から消えた5隻の敵陸上戦艦に後ろを取られる。

敵の状況は国境の街(ボルダル)に潜り込ませたスパイにより把握している。

5隻の敵陸上戦艦が消えたのは確定情報だった。


「目標変更、リーンワース王国へ向かう!

ズイオウ山の山頂にあるのが魔導レーダーだ。

山頂が見えたら撃たれると認識しろ。

あれが見えない距離まで後退し迂回する」


 王都を攻撃すれば峡谷要塞の陸上戦艦も動くだろう。

そうなれば、峡谷に控えている艦隊を突入させられる。

敵の陸上戦艦はたしか9隻だ。

峡谷に4隻、その他5隻。

分断出来ればこちらの数が有利にはたらくはずだ。


「陸上戦艦ダーボンに特命を与える。

北に向かい度々敵の魔導レーダーにあえて引っかかれ。

我々が北に向かったと思わせろ」


 ヴェルナーツは敵を手玉に取る未来を想像してほくそ笑むのだった。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



SIDE:ズイオウ山山頂レーダー基地 クランド


 当初の予定通り、敵艦隊との距離が100kmを切る――アクティブレーダーに反応が出る――と、俺は長距離魔導砲で砲撃を開始した。

まずは先頭の陸上戦艦を狙う。

魔導砲塔の前に光の魔法陣が展開し、魔導砲が発射される。

この魔法陣で発射のタイミングがバレバレだなと思っていると、敵艦隊から爆発音が響いた。

どうやら敵陸上戦艦の火薬砲の弾薬に引火したみたいだ。

立ち上る黒煙、1隻目を撃墜した。


「ん? 敵の動きが速い」


 次弾をチャージしていると、アクティブレーダーから光点が次々と消えていく。

どうやら敵の中に魔導砲をよく知っている人物がいるらしい。

魔導砲の最大射程が地平線までという事実を知っているようだ。

次々と敵艦が地平線の向こうに消える。


「つまり相手も魔導砲持ちということだな」


 俺は独り言ちた。

となると、ここへの接近は諦めたことだろう。

長距離魔導砲で一方的に叩かれることが理解できただろうからな。

さて敵艦隊はどこへ向かう?


 魔力波を放出し、その反応を見るアクティブレーダーの範囲からは外れたが、敵の魔力そのものを探知するパッシブレーダーにはまだ敵艦隊が映っている。

その敵艦隊から1隻が分離し北へと向かった。


「変な動きをする艦だな?」


 その敵艦はアクティブレーダーの範囲に出たり入ったりを繰り返していた。

もしかして……。

俺は長距離魔導砲をけん制のためにその敵艦に向かって発砲した。

当てるつもりはないので、当たらない。

すると射程外に出ていた敵本隊が射程範囲を迂回するように南下を始めた。

その様子が全部パッシブレーダーに映っている。


「これはやはり、陽動作戦だったんだな。

パッシブレーダーに映ってるから意味ないが……」


 これは敵艦隊は北へ行ったと俺たちに思わせたかったということなんだろうな。

北の帝国はパッシブレーダーの存在を知らないということか……。

しかし、これで敵艦隊の狙いがわかった。

俺たちの戦力を分断してのリーンワース王国王都強襲だ。


 こちらが今動かせる陸上戦艦は5隻。

敵艦隊は1隻減って14隻。

敵が油断している隙にこちらの5隻はリーンワース王国王都防衛に向かわせよう。

ここはキルトタルと長距離魔導砲で守れる。

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