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091 艦隊戦8

 俺の脅しが効いたのか、リーンワース王国軍が無謀な賭けに出ることは無かった。

北の峡谷では敵陸上戦艦8隻に対し、北の要塞の重力加速砲4基、リーンワース王国軍の陸上戦艦の重力加速砲2基、我が国の陸上戦艦の魔導砲2基で対抗することで、敵の峡谷への安易な侵入が防げている。

そんな有利な状態でわざわざ敵にちょっかいを出す意味がない。

むしろこれで、ズイオウ租借地の陸上戦艦5隻が遊軍として不測の事態に対応出来ることが重要だった。


 こちらの重要防御拠点は3つ。

ズイオウ租借地、リーンワース王国王都、第13ドックだ。

これは北の帝国との距離によって順位付けした並びだ。

この重要防衛拠点が北の峡谷を守ることで間接的に防衛出来るなら有難いとことだ。


 だが、北の峡谷を経ずにリーンワース王国へと侵入する抜け道がある。

それは、この大陸を東西に横断する山脈の端を迂回するルートで、東の海岸ルートと西の海岸ルートだ。

東の海岸ルートは西の海岸ルートよりは直線距離では近いものの、北の帝国から海岸までが山脈で隔たれているため、北に大きく迂回した上で東の海岸まで出る必要があった。

西の海岸ルートは大陸の西の端まで行く必要があるが、全行程が平坦で安定した速度で進めるというルートだった。

これは以前、第13ドックを狙ったガルムドが大陸を南下するために通ったルートだ。

そしてもう一つ、ニムルドが北の山脈を越えて来た秘密ルート、これはリーンワース王国も把握していない未知のルートだ。


 北の峡谷で北の帝国とリーンワース王国が膠着状態に陥ったため、今警戒すべきはこの3ルートだった。

今、第13ドックに行っていた輸送艦が、魔導レーダーの機材一式を搭載して帰って来たところだった。

俺はこの3ルートを警戒できるレーダー網を構築しようと考えていた。

とりあえず最初にレーダー基地を設置するのはズイオウ山の山頂と決めていた。

レーダー基地を高さ760mのズイオウ山の山頂に設置すれば、ほぼ100km圏内がアクティブレーダーの探知範囲に収まる。

パッシブレーダーを使えば陸上戦艦の放出する魔力ならば、地平線を越えて200kmの距離でも探知可能だろう。


「よし早速設置するか」


 俺は輸送艦に載せられていた機材一式をインベントリに入れるとズイオウ山山頂へと転移した。

ズイオウ山山頂は度重なる砲撃実験でしっかり耕されていた。

その地面に穴を掘り、その側面を陸上戦艦の装甲と同じ謎物質で固める。

そこへ魔導機関と魔力ストレージを設置すると地上部分に塔を建て、魔導レーダーと魔導通信機のアンテナを設置する。

それら全てを塔の基部に設置した電脳の管理下に置く。

ズイオウ山頂レーダー基地の完成だ。

魔導機関に余力があったので、防衛用に魔導砲塔単装1基も設置した。

これは長距離射撃を見越した特別製だった。

これで自衛もできるはずだ。

この基地からの情報は魔導通信によって各陸上戦艦と共有出来るようになっている。

いわば、動けない陸上戦艦を配備したに等しい。

なにしろ、あとは浮上推進システムを装備すれば陸上戦艦と同じだけの基幹部品を使うことになるわけだからな。


「レーダー基地、システムコマンド、セルフチェック開始」


「セルフチェック起動。

制御システム異常なし。

魔導機関異常なし。

魔力ストレージ異常なし。

長距離魔導砲塔異常なし。

武器制御異常なし。

魔導通信機異常なし。

魔導レーダー異常なし。

魔導障壁展開装置異常なし。

セルフチェック終了。

魔導レーダー稼働スタンバイ完了」


「よし、組み立ては成功だな。

それでは、魔導レーダー起動!」


 レーダー塔基部の制御室内に魔法でスクリーンが展開される。

そこに映し出されたのは、複数の光点だった。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



「パッシブレーダーに反応、北西に高魔導反応多数。

陸上戦艦と思われます」


 レーダー基地のシステムが警告音声を発する。

パッシブレーダーには地平線を越えた遥か先の魔導反応が探知されていた。

あまりに強い魔導反応を垂れ流しにしているために想定以上の距離で受信出来たもようだ。


 レーダー画面にはズイオウ山を中心にした地図が重ねてあり、敵陸上戦艦の艦隊がどこにいるのかが一目でわかった。


「魔道反応15を確認。こちらに向かっています」


 なんてことだ。

北の峡谷に目を向けさせている隙に、山脈の西を迂回し、こちらに向かって来ていたのか。

しかも15隻の大艦隊。

北の帝国が本気になったということか。


 よもや魔導レーダー配備初日に、こんなに役に立つことになるなんて……。

いや、むしろ配備していなかったら、ズイオウ山の影になってこちらの地上戦艦には探知出来なかったかもしれない。

何という幸運だろう。


「エルシーク、ルナワルド、ザーラシア、ラーケン、レオパルドを迎撃に出撃させろ!

各艦ズイオウ山北西に展開、敵艦隊を待ち受けろ。

レーダー基地には俺が残り、敵陸上戦艦が100kmを切って目視出来たら長距離魔導砲を撃ち込む」


 俺は魔導通信機で各艦を呼び出すと命令を伝えた。

15:5、相手に魔導砲を撃てる艦が何隻いるかわからないので、さすがに数を減らさなければこちらに犠牲が出る。

この開けた土地での迎撃戦は数が少ない方が完全に不利だ。

魔導レーダーと連動した長距離魔導砲を敵艦隊に撃ち込む。

射撃精度は問題ないだろう。

だが、ズイオウ山山頂は敵艦隊にも見えている。

反撃の魔導砲を受けたら、動けないここはひとたまりもない。

こちらの魔導砲は長距離仕様だけど、敵はそうではないはずだ。

魔導障壁展開装置を取り付けておいたけど、どこまで持つのだろうか?

いざとなったらここを放棄してエルシークの転移魔法陣に飛ぼう。


 俺は敵艦隊が射程に入るのを今か今かと待つのだった。

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