014 奴隷商
尾行者が片付いたので、今日は諦めようかと思っていた場所に行くことにした。
明らかに治安が悪いとわかっている場所に向かわないとならなかったからだ。
それは奴隷商だ。牧畜関係のスキルを持つ奴隷を買いたかったのだ。
俺はのんびりスローライフのためになるべく住居を秘匿したい。
そのためには決して裏切らない従業員を雇わないとならない。
俺の畑は他の者からしたら宝の山だろう。
裏切られて情報を売られるだけで俺の生活は危機を迎える。
決して裏切らない従業員、それは奴隷魔法で縛られた奴隷しかいない。
そう思いついての奴隷購入だ。
俺にとっては奴隷とは言っても従業員を雇うという感覚しかないんだよね。
わざわざ人を虐待したいわけじゃないし、悪い扱いをする必要がない。
逃げずに秘密も守ってくれるなら、奴隷契約を解除してもいいぐらいだ。
そんなことで俺は奴隷商に向かっている。
街の中でも治安の悪い歓楽街、飲み屋から娼館まであるような場所にたどり着く。
その一角に、いかにも儲かってますといった感じの奴隷商の店舗があった。
俺は堂々と店舗に入っていく。
番頭と思われる店員が俺の年齢を判断してうさんくさそうに見ている。
まあ俺の年齢(15)では奴隷を買える金は持っていないだろうからね。
それに俺は一張羅のジャージを着ている。
冷やかしにしか見えないだろう。
俺は番頭に向かって金貨の袋を見せつける。
「これの10倍の予算がある。牧畜のスキルのある奴隷が欲しい」
金貨の袋を見て番頭の目の色が変わる。
「奥へどうぞ」
番頭は揉み手をしながら俺を案内した。
奥へ入ると応接間に通された。
ラノベお約束の奴隷を陳列する舞台のあるやつだ。
紅茶と茶菓子を出されてしばらく待つと、恰幅の良い中年の男が現れた。
「お待たせしました。私当奴隷商会の主であるダンキンと申します。お見知りおきを」
中年男性は丁寧に自己紹介をした。
番頭は俺を上客と思ったのか商会主に話を通したらしい。
俺はさっそく商談に移ることにした。
「クランドだ。牧畜、特に牛の出産に立ち会える奴隷が欲しい。あ、女性で頼む」
「年齢はいかほどに?」
「若い方が良い」
「なるほど。わかりました」
この時、ダンキンが思っていることを俺は全く理解していなかった。
しばらく待つと応接間の横の舞台に奴隷が引き連れられてきた。
「条件に合う奴隷はこの5名です。クランド様は運が良い。
丁度北の帝国より放牧民の奴隷が大量に入っております」
紹介された奴隷は皆若く美人ぞろいだった。
「少し質問しても?」
「申し訳ございません。王国公用語は日常会話程度でして、通訳がおりませんので、詳しい話はちょっと……」
いや、俺は異世界言語のスキルをカンストしてるから放牧民の言語もたぶん話せるぞ。
だが、それを公にするのも拙い気がする。悪目立ちしたくない。
その時、騒がしい声が聞こえた。
『わらわを誰だと思っておるのだ! このような服を着せおって! 不敬であるぞ!』
なんかやばい人が混ざってるな。
「またこいつか! 今日は大人しくしろと言っただろ!」
ダンキンがその奴隷を叱りつける。
どうやらダンキンも扱いに困っているようだ。
しかし放牧民の言語が理解出来ないので内容まではわかっていないらしい。
「もう良い。おまえは娼館に売る!」
「待て」
その奴隷が引っ込められそうになっているところを俺は止めた。
「少し話させてくれ」
「片言しか話せませんが、よろしいのですか?」
「かまわん」
俺はその奴隷に近づくと耳元で放牧民語を投げかけた。
『おまえは何者だ?』
言葉が通じることに驚いた奴隷が放牧民語を捲し立てる。
『わらわはキルト族の正当な後継者なるぞ』
つまり姫か。
『このままじゃ君は娼館行きらしいぞ』
『くっ!』
『どうする。牛の飼育が出来るなら買うが』
『娼館など行きとうない。されど、そなたの所でもどうせ性奴隷じゃろう!』
奴隷姫が俺をにらみつけて来る。
『いや、俺は牧場の従業員を雇いたいだけだ』
『ならば、そいつとそいつも買ってくれぬか?』
え? 合わせて三人も買うの?
『その二人はわらわの側仕えのなのじゃ。このまま娼館に売られるはしのびない』
うわ、嫌な事聞いちゃったな。
「ご主人、ご主人。ここ掘れわんわん」
プチのスキルが反応した。
これは何か良いことがあるかもしれない。
『わかった。三人一緒に面倒みよう』
俺はダンキンの元に戻ると交渉を始めた。
「そいつとそいつ二人を買おう。体力がありそうだ」
側近の二人を示すと、ダンキンの目が輝く。この二人も扱い辛かったのだろう。
「そして、こいつ。安ければ買う」
俺はまず側近の二人を言い値で買うと申し出た。
それのオマケとして厄介者の奴隷姫を名指ししたのだ。
ダンキンは思案すると厄介払いが出来ると思ったのか首を縦に振った。
「わかりました。合計2500万Gでお売りしましょう」
側近が一人1000万Gに奴隷姫が500万Gだ。
「それでいい。良い商談が出来た」
俺はギルドカードで決済した。
その残金を見て目を見開くダンキン。
「これからもご贔屓に。クランド様」
慇懃に頭を下げるダンキン。
「それでは奴隷契約の譲渡手続きをいたしましょう」
俺を上客だと確信したダンキンは上機嫌だった。
奴隷契約魔法専門の公選魔法使いが呼ばれ、奴隷の所有権が俺へと移った。
奴隷契約魔法は国家で管理されていて、公選魔法使い以外が行うと違法らしい。
ん? 性奴隷? 魔法式に俺の意図しなかった文言が入っていた。
そう、ダンキンは若い男が若い女性を求めに来たため、性奴隷をご所望だと勝手に空気を読んだのだ。
それで牧畜のスキルがあり綺麗どころを揃えてクランドに見せたのだ。
最初から「性奴隷>牧畜スキル」だったのは言うまでもない。
そしてプチのスキルが作動した理由にこの後悩ませられることになる。




