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013 フラグ

 俺は大通りを歩くと洋品店を探した。

貴族用のオーダーメイドを扱う仕立屋と、一般人向けに古着や既製品を売る洋品店に分かれるようだ。

前者は目抜き通りに、後者は街はずれか脇道に沿った場所にあった。

ちょっと今は路地に入るのは避けたいところ。

尾行がバレないとでも思っているのか、バレても良いと思っているのか、明らかに尾行者が付いて来ている。


「どうするかね? 抑止力として武器屋で武器でも買おうか?」


 俺は目に付いた武器屋へと入った。

別に武器なんか必要ないんだけど、武装していると見せるのは犯罪抑止に繋がる。


「ご主人、このロングソードを売ってくれ」


「あ? それは重いぞ」


 武器屋の主人は俺の体格を見て、重すぎると判断したのか、あまり乗り気じゃない。

売れれば良いと適当に売ってしまうような主人ではないようだ。

好感が持てる。


「大丈夫だ。ほれ」


 俺はロングソードを片手で振ってみせる。

それを見て目を丸くする武器屋の主人。


「お前さんなら、こっちの方がお勧めだ」


 武器屋の主人は、俺を使い手と見込んだのか、上等な武器を薦めてくる。


「悪いんだが、俺は魔法使いでね。ちょっと変な連中につけられてるから見せつけるための武器を買いたいんだよ」


「なんだそうだったのか。なら使えそうに見えない武器よりこっちの方がいいぞ」


 武器屋の主人が持ち出したのは魔銃だった。

何それ? やばい。好みど真ん中じゃん。


「買った。それと見せ武器はアドバイスに従ってショートソードにしとくよ」


「まいど」


 冒険者ギルドカードで支払ったが、魔銃、いくらなのか聞かずに買っちゃったよ。


「剣帯とホルスターはオマケしとく」


 うわ。これがオマケになるって魔銃、いくらだよ。

俺は武器屋の店内で武器を装備すると、これ見よがしに見せつけるように武器屋を出た。

これでフラグが折れると良いんだがな。


 護身武器を手に入れたので、少し路地に入った洋品店へと向かう。

まだ尾行はいるが、ここでは襲って来ないようだ。

洋品店では下着と農作業用の服を買った。

農作業用と言っても街の市民が着るような、そこそこ高級な品だ。

洋服はあまり新品は売れないらしく、お洒落な服は全て古着だった。

まあそのような文明レベルなんだろう。

その中で新品の服を選んで買う。


 そういや、生活魔法の『クリーン』で体を清めていたけど、そろそろ風呂に入りたい。

農場に帰ったら作ろう。住に足らないものがまだあったわ。


 店を出ようとして、外の様子に嫌な気分になりテンションが下がった。


「プチ、何人だ?」


「うんとね。15人かな?」


 洋品店に入っているうちに仲間を呼んだらしい。

俺が武器を買ったので、人数を増やすことにしたのだろう。

洋品店が路地を入った所にあるのをいいことに、店の出入口から通りを塞ぐように集まっていた。

俺は相手を避けるように壁際を通ろうとした。すると髭面の汚い男が壁に手を付いて通せんぼをした。


「ちょっと付き合ってくれよ」


 髭面のニヤニヤ笑いが止まらない。


「俺は用事がないんだが、通してくれないか?」


「なら金をよこしな。亜空間倉庫から素材も出せ」


「つまり強盗でいいのか?」


「いや、俺達に分けてくれればいい。仕事の報酬って扱いだ」


 なるほど、譲渡なら犯罪歴が付かないということか。


「お前たちに仕事をしてもらった記憶がないが?」


「ちっ。いいから渡せばいいんだよ」


 髭面が俺の肩を掴もうとした。

それを見たプチが胸から飛び出す。


「ご主人に何をする!」


 小さなチワワのプチが大男に体当たりをする。

質量的に不可能なはずだが、その体当たりで髭面が吹っ飛んで伸びた。


「この糞犬! 何をしやがる!」


 手下たちが一斉に刃物を抜く。

プチも臨戦態勢で大型化しそうな気配がした。


「待て、プチ。ここでは拙い」


 俺はプチを止めた。

いくら聖獣でも街中で暴れたらどんな扱いを受けるかわからない。

殺処分だなんてことになったら俺はどうすればいいんだ。

しかし、俺が止めたことで手下がプチに接近してしまった。

プチを蹴り上げる手下。

俺の命令で待てをしていたので避けられないプチ。

プチが蹴り上げられて宙を舞った。


「プチーーーーーーーーーーーー!」


 俺の中でタガが外れるガチリという音がした。


「よくもプチに危害を加えてくれたな」


 俺は道の真ん中に『ファイア』の魔法を放った。


ドカン!


 炎の柱が立ち上がり、熱波が強盗どもを襲う。


「お前たちを強盗と断定する。刃物も抜いた。正当防衛で処刑する。

俺は魔法の威力を抑えられない。覚悟するんだな」


 俺はプチを蹴り上げた手下に手をかざす。


『ウインドカッター』


「ご主人、だめ」


 プチの声に正気を取り戻す。プチがやられて頭に血が上ったようだ。

風の刃が手下に向かう。風の刃は手下の頭を掠めると頭頂部の髪の毛を刈り取った。

手下のズボンが水に濡れ気絶する。


「外れたか。久しぶりなので手元が狂ったかな」


 なんとか制御して殺すのは回避できた。

俺の脅しに強盗達は恐怖にかられて方々へ逃げていった。


「プチ、止めてくれてありがとう。大丈夫か?」


「わん。平気」


 プチのおかげでこの国の法律に違反したかもしれない危機を回避できた。

俺はプチに体当たりをくらって伸びている髭面と気絶した手下をロープで縛ると門の衛兵詰め所に引きずって行った。


「強盗に襲われたので捕まえました。洋品店の前です」


 衛兵は事情を詳しく聞くと強盗を牢へと放り込んだ。

尋問して仲間もそのうち捕まえるそうだ。

そいつらから俺が強いという情報が裏社会に伝わってくれることを祈る。

また襲われることがないようにして欲しい。

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