第19話 お休みの理由と、少し熱い朝
朝。
カーテンの隙間から、やわらかな光が差し込んでいる。
ノエルは、ゆっくりと目を覚ました。
「……ん……」
ぼんやりと、天井を見つめる。
――熱い。
身体が、じんわりと熱を帯びている。
少しだけ汗が服ににじむ。
額に手を当て、
「……あつい……」
少しだけ、息を吐く。
(……風邪?)
「よし!」
起き上がろうとするが、力が入らない。
「え、なんで?」
そのまま、ベッドに戻る。
(今日……学校……)
頭の中に浮かぶのは、昨日のこと。
セラフィナイトの笑顔。
モルディナのからかう声。
カトレアの冷静な言葉。
そして――
ヴォルガドの
「礼を言う」
低く、静かな声。
「……っ」
顔が、さらに熱くなる。
布団を少しだけ引き寄せる。
(……昨日のこと)
(こんなに……思い出すの……)
胸が、どくん、と鳴る。
落ち着かない。
息が、少しだけ浅くなる。
「……だめ……」
小さく呟く。
(学校……行きたいのに……)
昨日、あんなに楽しくて。
「また行こう」って思ったのに。
(休んだら……遠くなりそう)
胸が、少しだけ痛む。
(セラフィナイトさんのせいじゃないのに……)
(わたしが、勝手に……)
ぎゅっと、シーツを握る。
(……はしゃぎすぎたのかな)
目を閉じる。
でも。
頭の中は、静かにならない。
「……ヴォルガドさん……」
ぽつり、と零れる名前。
その瞬間。
自分で、はっとする。
「……っ」
顔を埋める。
(ちが……)
(ちがう……)
でも。
否定しようとするほど――
心臓が、うるさくなる。
(……とても気になる)
(あんな一言で……)
分からない。
分からないのに。
どうしても、消えない。
「……やだ……」
小さく呟いて、目を閉じた。
同時刻・学園
「……あら?」
セラフィナイトが、首をかしげた。
「ノエルさんが、いらっしゃいませんわね」
モルディナが腕を組む。
「ほんとね、休みかしら」
カトレアも静かに言う。
「珍しいわね。あの子が」
一拍。
セラフは少しだけ考えて――
「……何かあったのかしら。心配ですわ」
ぽつり、と呟いた。
モルディナが、ちらりと視線を向ける。
「……ねぇ、魔王」
「なんだ」
「あなた、昨日変なもの出してないでしょうね?」
ヴォルガドは眉をひそめた。
「変なものとは失礼な」
腕を組む。
「魔界に咲く高級な茶葉だ」
「心を落ち着かせ、魔力を高める効能がある」
一拍。
「……ただ」
少しだけ視線を逸らす。
「刺激は、やや強いかもしれん」
沈黙。
モルディナ、ため息。
「え!絶対それよ」
カトレアも頷く。
「原因、それじゃない?」
セラフィナイトは、心配そうに手を胸に当てた。
「まぁ……」
「ノエルさんは、とても繊細な方ですもの」
やわらかく微笑む。
「少しだけ、刺激が強すぎたのかもしれませんわね」
モルディナが、くすっと笑う。
「私たちは平気だけどね」
カトレアも肩をすくめる。
「慣れの問題ね」
ヴォルガドは、静かに頷いた。
「……ああ」
少しの沈黙。
そして――
セラフィナイトが、ぱっと顔を上げた。
「先生」
セラフは優雅に先生に駆け寄る
「わたくし、ノエルさんが気になりますわ」
ぺこり、と軽く礼をする。
「連絡のプリントをお届けに行ってもよろしいでしょうか?」
教師は少し驚いたあと、やさしく微笑んだ。
「ええ、もちろん」
「貴女なら安心して任せられるわ」
「はい!お任せいただきありがとうございます」
セラフィナイトは嬉しそうに微笑む。
「行ってまいりますね」
その様子を見て。
モルディナが、小さく呟いた。
「……行くわよね?」
カトレアも即答。
「当然ね」
ヴォルガドは、当然のように頷く。
「余もだ」
こうして。
放課後――
一行は、ノエルのもとへ向かうことになった。
ノエル、健気だね




