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「君を愛してる」と脅されても、もうすぐエンディングなので全力で応援します! ~悪役令嬢ですが、ヒロインと婚約者様が結ばれるのを待ってるんですが?~  作者: ましろゆきな
第二章:怒涛の学園イベント

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第九話:夕暮れの告白と、世界のエラー通知

 修学旅行の帰路。  窓の外は茜色から群青色へ変わる黄昏時。  行き(朝)の騒がしさとは対照的に、車内は静まり返っている。  リリアは首元のスカーフを無意識に押さえ、少し気まずい。


 ずっと黙っていたアリスが、静かに口を開く。


「……リリア様。綺麗になられましたね」


「え?」


「あ、お召し物のことではありませんよ.。……纏う空気が、変わりました」


 アリスの瞳は、全てを悟ったように澄んでいる。聖女の直感が、リリアが「少女」から「女」になったこと、エリアスに愛されたことを見抜いている。


 アリスは少し寂しげに笑い、過去を語り出す。


「……リリア様は、覚えていらっしゃいますか?  私たちが初めて言葉を交わした、あの中庭での出来事を」


 平民だが聖女候補として王立魔法学園に入学したばかりのアリス。  貴族ではない彼女は教科書を隠されたり、水をかけられたりして、泥だらけで泣いていた。  周囲の貴族生徒は冷笑して見ているだけ。


 そこへ現れたリリア。  リリアは震えるアリスを見て、自分を重ねてしまい、つい口を出してしまう。


「……何をしているの? ローゼンハイムの名において、このような見苦しい真似は許しません」


 座り込むアリスにぴしりと扇子を向ける。


「そこの貴女アリス。いつまで泣いているの?  さっさと立ちなさい。……私の学友として恥ずかしくないようにね」


 厳しく言いながら、ハンカチを手渡し、魔法で泥を払いおとす。呆然とするアリスを残してリリアはそのまま立ち去るのだった。


 この出来事、「公爵令嬢」がアリスを肯定したことで、周囲の空気が一変する。  いじめっ子たちは青ざめて逃げ出し、翌日からアリスへの態度は劇的に改善された。


「あの日、泥だらけの私に手を差し伸べてくださったのは……王子様でも、誰でもない。  リリア様、貴女だけでした」


 決意を瞳に宿し、アリスは静かに微笑んだ。


「だから……私は決めたんです。この命ある限り、貴女をお守りすると」


 アリスの深い愛情にリリアは涙ぐむ。


「アリス……そんな風に思ってくれていたのね。ありがとう……」


 しかし、感動と共に、冷静な「前世の記憶」が警鐘を鳴らし始める。


(……でも、待って。  ヒロインのアリスが、『王子様なんていらない』?)

(『貴女だけが光』?)

(それって……本来結ばれるべき『正規ルート』を、私(悪役)が完全に奪っちゃったってこと!?)


 リリアは血の気がさーっと引くのを感じた。ああ、私はなんてことをやってしまったんだろう!


 そんなリリアの変化に気づかず、アリスはある決意を口にする。


「でも、貴女がエリアス様を選び、幸せになれるのなら……私は引き下がります」

魔王エリアスの手からお守りしようと思いましたが……今の貴女は、とても幸せそうですから」


 アリスの健気な言葉とは裏腹に、リリアの背筋は凍りつく。


攻略対象エリアスは私に執着し、ヒロイン(アリス)は私に恋をして身を引いた)

(……終わった。シナリオが、跡形もない)

(これ、絶対に『バグ』判定されるやつだわ……!!)


 ガタンッ!  馬車が大きく揺れる。――ただの揺れだが、リリアには『世界の崩壊音』に聞こえるのだった。

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