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【完結】「君を愛してる」と脅されても、もうすぐエンディングなので全力で応援します! ~悪役令嬢ですが、ヒロインと婚約者様が結ばれるのを待ってるんですが?~  作者: ましろゆきな
第二部:聖女と騎士の恋騒動編

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第二十七話(最終話):【第二部・完結!】聖女の卒業と、甘美な堕落

 1. 聖女の決断(初夜)


 結婚式の喧騒が去り、静寂が訪れた夜。  豪奢な天蓋付きのベッドに腰掛けるアリスの前に、クラウスが跪いていた。


「アリス……最後に、もう一度だけ確認させてください」


 クラウスの手が、震えるようにアリスの頬に触れる。その表情は、いつになく真剣で、どこか恐れを含んでいた。


「僕と結ばれれば、貴女は『聖女』としての力を失います。  あの奇跡の力は、貴女のアイデンティティそのものだ。……それを、僕ごときが奪ってしまって、本当に後悔しませんか?」


 アリスはきょとんとして、それから鈴を転がすように笑った。


「もう、クラウスったら。何を今更」


 アリスは彼の手を取り、自身の胸に押し当てる。


「私にとっての奇跡は、誰かを癒やす魔法なんかじゃありません。  ……貴方に出会えて、こうして愛してもらえたこと。それが私の一番の『奇跡』なんです」


「アリス……」


「だから、いりません。聖女なんて肩書きも、力も。  ……私はただの『アリス』として、貴方の奥さんになりたいんです」


 アリスの覚悟を聞き届けたクラウスは、短く息を吐き出した。それは安堵のようでもあり、同時に、これまで彼を縛り付けていた何かが弾け飛んだ音のようでもあった。


「……言いましたね、アリス」


 クラウスの手が、ゆっくりと自身の顔に向けられる。  カチャリ。  静寂な寝室に、眼鏡がサイドテーブルに置かれる音がやけに大きく響いた。


 露わになった素顔の瞳が、アリスを射抜く。  いつもの冷静沈着な光はそこになく、代わりにあったのは、飢えた獣のような、昏く熱い情欲の色だけだった。


「ひっ……クラウス……?」


「もう、手加減はできません。聖女様を堕落させる背徳感に、僕の理性が持ちそうにない」


 言うが早いか、クラウスはアリスをベッドに押し倒す。抗議する間もなく、唇が塞がれた。  先ほどまでの慈しむようなキスではない。息継ぎも許さず、アリスの全てを貪り尽くそうとするような、激しく深い口づけ。


「んぅ……っ、く、ふ……っ!」


 酸素を求めてアリスがクラウスの肩を叩くが、彼はびくともしない。  ようやく唇が離れた時、アリスは酸欠で涙目になり、荒い息を繰り返していた。


「はぁ、はぁ……っ、クラウス、すご、い……」


「まだ、挨拶代わりですよ」


 クラウスの唇が、アリスの顎から首筋へと滑り落ちる。


「あっ……そこ、くすぐったい……!」


「……聖女としての貴女は、誰のものでもなかった。ですが、これからは違います」


 ちゅ、と強い音がして、首筋に鋭い痛みが走った。アリスが小さな悲鳴を上げる。


「痛っ……!?」


「……ここなら、ドレスを着れば見えませんね」


 クラウスが唇を離した場所には、鮮やかな赤い痕――所有のマーキングが刻まれていた。  彼は満足げにそれを眺め、熱を帯びた指先でなぞる。


「貴女は僕の妻だ。僕だけのものだ。……その体に、嫌というほど刻み込んで差し上げます」


「うぅ……暴君……っ」


「ええ。貴女だけの暴君ですよ」


 クラウスの手が、純白のネグリジェの裾から滑り込む。  彼の手が触れるたび、アリスの体の奥底で燻っていた温かい光――「聖女の魔力」が、急速に熱を失い、溶けていくのが分かった。


「あ……っ、力が、抜けていく……」


「分かるのですか、アリス。僕が触れるたび、貴女の中から聖なる加護が失われていくのが」


 クラウスの声は、微かに震えていた。それは武者震いのようでもあり、極上の愉悦に浸る声音でもあった。


「ぞくぞくしますね……。  高潔な『聖女様』が、僕の腕の中で、ただの無力な『雌』に堕ちていく。  ……この瞬間を、どれほど待ちわびたか」


 魔力を失い、力の入らなくなったアリスの体に、クラウスの熱い体温が覆いかぶさる。  逃げ場はもう、どこにもない。


「……覚悟なさい、アリス。今夜は、一睡もさせませんよ」


 月明かりさえも恥じらって雲に隠れる中、寝室には甘い衣擦れの音と、熱っぽい吐息だけが満ちていく。

 彼はアリスを抱きすくめ、熱のこもった口づけを落とした。


「……愛しています。僕の全てを懸けて、貴女を幸せにします」 「はい……私も、愛してます」


 その愛の言葉は、どんな魔法よりも深くクラウスの心を射抜いた。  甘く、優しく、そして深い愛の時間は、夜明けまで続くのだった。


 ◇◇◇


 2. ただの女の子(翌朝)


  夜が明け、小鳥のさえずりで目を覚ましたアリスは、自身の体調の変化に気づく。  体の奥に常に感じていた温かな光の奔流――聖なる魔力が、綺麗さっぱり消え失せていたのだ。


(あ、本当に……なくなってる)


 喪失感は、驚くほどなかった。  代わりに隣を見れば、穏やかな寝顔で眠る愛しいクラウスがいる。  その温もりが、何よりも代えがたい「幸せ」の証だった。


「……ふふ。おはよう、私の旦那様」


 アリスはクラウスの頬にキスを落とす。  聖女アリスは伝説となり、ここにはただ一人の、幸せな新妻アリスがいるだけだった。


 ◇◇◇


 エピローグ:お茶会という名の公開処刑


 数ヶ月後。  公爵邸の庭園で、リリアとアリスのお茶会が開かれていた。  護衛として控えるのは、騎士団長のクラウス。そして、リリアのそばには当然のようにエリアスが張り付いている。


「あの、リリア様。


 キスをされた後、そこを舐められるのって普通なんですよね?


 クラウスが『これは消毒とマーキングを兼ねた礼儀です』って……」


「ブッ!!」


「礼儀!! 消毒!! くくく、クラウスの奴、とんでもないデタラメを教えてやがる!!」


 リリアは紅茶を吹き出し、エリアスが腹を抱えて爆笑する。


 笑うにとどまらず、涙を流しながら、テーブルをバンバンと叩いた。


「えっ? 違うんですか?


 あと、気絶しちゃったら、起きるまで『人工呼吸』してくれるんですけど……」


(もうやめて……聞きたくない……!!)


 リリアが赤面して固まる背後で、公開処刑に晒されたクラウスは魂が抜けかけていた。


「くくく……! 傑作だ。なぁクラウス、お前そんなデタラメを吹き込んでいるのか?」


「…………」


 直立不動のまま、クラウスは能面のような無表情を貫いている。だが、そのこめかみには冷や汗が流れていた。


「おいアリス。もっと聞かせろ。  まさか『消毒』だけで終わりじゃないだろう?」


「はい! あとはですね、クラウスったらすごく心配性で……お風呂上がりのケアもすごいんです!」


「お、お風呂上がり……?」


「ちゃんと自分で拭いたのに、『湿気はカビの元だ』って……お風呂上がりには必ず、『あそこまで』クラウスがタオルで丁寧に拭いてくれるんです」


 アリスに悪気がないのはわかっているが、夫婦の秘め事を聞かされているリリアの背中に嫌な汗が伝う。


 エリアスはその横で優雅に紅茶を飲む。


「ほう? 『あそこ』とはどこだ?


 指先か? それとも……もっと奥か?」


「ええ、指の間の水かきまで全部です!


 『湿気は病気カビの元だ』って、一本一本舐めるように……」


「なるほど、()()()()()()、か。


 おいクラウス。聞いたか?


 お前、随分と衛生管理プレイに熱心なようだな?」


「…………閣下。


 ……休憩時間を、頂いてもよろしいでしょうか」


「ならん。


 護衛だろう? リリアの友人の悩み相談を聞くのも、護衛の務めだ。


 ……続けろアリス。他にはどんな『指導』を受けている?」


 クラウスはいたたまれず、その場から逃亡を試みるが、あっさりエリアスに却下された。


「はい! えーとですね……」


(やめてくださいアリス……! それ以上は……!!


 そして閣下、楽しそうな顔をやめてください……!!)


 逃げ出せないのなら、地面に穴を掘って埋まってしまいたいクラウスであった。


「くく、衛生管理プレイに熱心で何よりだ。  ……やあリリア。今日も愛しているよ」


 笑い疲れたエリアスは、今度は隣のリリアの腰を引き寄せ、その髪に口づける。


「……もう。おふざけが過ぎますよ、エリアス」


「わぁ……素敵です。  でも、クラウスだって負けてませんよ!  この前なんて、私のことを『砂糖菓子みたいだ』って……」


「あら」


 夫に愛でられ、少し余裕を取り戻したリリアは、妖艶に微笑んで首を傾げた。


「砂糖菓子、ねぇ。  ……ということはアリス様。その後、()()()()()()()()()()()()のでしょう?」


「へっ!? な、なんで分かったんですかリリア様!?」


(リリア様まで……!! もう殺してください……!!)


 クラウスだけが声なき悲鳴をあげる庭園で、エリアスは黒い笑みを浮かべ、リリアとアリスは顔を見合わせ、楽しそうに笑い合うのだった。


 ◇◇◇


 おまけ:その頃、執務室では


 一方、騎士団の執務室。  書類の山に埋もれるようにして、ベルク副団長(実質団長)はペンを走らせていた。


「……ふぅ。これで今月の決算処理も終わりか」


 窓の外からは、遠く平和な笑い声が聞こえてくる。  ベルクは引き出しから、支給された最高級胃薬『ハイ・ポーション』を取り出し、一気に煽った。


「苦い……。だが、効く」


 彼はふと、デスクに飾られた家族の肖像画に目をやる。  子供たちは希望の学校へ進み、妻には新しいドレスを買ってやれた。  激務と引き換えに、彼の家庭は円満そのものだ。


「まあ、平和ならそれでいいか。  ……さて、次の書類ボーナスを片付けるとしますか」


 胃薬の瓶を置き、ベルクは再び戦場デスクワークへと向かう。  この国の平和と、二組の夫婦の幸せは、彼のような名もなき英雄の胃袋によって支えられているのであった。


(おしまい)

本作を最後まで見守ってくださり、本当にありがとうございました!

ついにリリア編に続くアリス編が終わり、この物語が幕を閉じます。


もし「クラウスの執着、たまらない!」「エリアスの画策にゾクッとした」と感じていただけましたら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、完結のお祝いをいただけると、歓喜で跳ね上がります!

皆様の評価とブックマークが、完結後の「ランキングの波」を後押しする最大のガソリンになります。応援、どうぞよろしくお願いいたします!


さて、明日月曜日3/9は22:40より新連載開始します!


『追放された無能聖女ですが、世界樹の精霊王に拾われて1000%偏愛されています』

https://ncode.syosetu.com/n9772ls/


寝る前のひとときに、精霊王による圧倒的な「執着愛」を楽しんで頂けたら嬉しいです。


続く、火曜日(3/10)も朝7:00より、こちらも新連載スタートします!


『公爵子息に夢中な悪役令嬢は、今更「もう戻れ」と言われても絶対実家には帰りません!』

https://ncode.syosetu.com/n2703lw/


今度のヒロインは、自己評価底辺の魔道具師・メリア。

彼女を保護して甘やかしまくる「氷の公爵」ヴァイス様ですが、言葉足らずゆえにメリアは「私は本命を守るための『お飾りのダミー』なんだわ!」と、斜め上の方向に全力疾走してしまいます。


胃を痛めながら溺愛をこじらせる公爵様と、囮の仕事を完璧にこなそうとする令嬢の、すれ違いまくりの溺愛ロマンス。


火曜日からも、朝7時の「重すぎる愛」の習慣、ぜひお供させてください!


新作二作もどうぞよろしくお願いします!

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