勇者
隼人視点
竜二と別れてすぐ。俺達2年5組一行は順調に学校から脱出できた。……校舎からは。
校門から出ようとしたとき、すでに周りはおびただしい数のスケルトンに囲われていた。しかし、次の瞬間、次のような声が聞こえた。
『最初の討伐【モンスター】が確認されました。対象者に称号、スキルを授けます』
『最初の討伐【アンデット】が確認されました。対象者に称号、スキルを授けます』
この声が聞こえた瞬間、俺は思った。こいつらは無敵だったり不死身だったりするわけじゃない。倒せる、と。
「いいか皆! 俺がこいつらを引き寄せて道を開く! そこから逃げろ! できれば自宅、もし遠ければ近くの交番や消防署まで! いいな!」
皆にそう言って俺は駆け出し、目の前にいたスケルトンを一発ぶん殴る。すると、そいつの頭蓋骨は砕け散ったが、他のスケルトンたちに認識された。
「かかってこい! 皆! 今のうちに逃げるんだ!」
学校の出入り口を完全にふさぐだけの量のスケルトン。ざっと100体以上はいるだろう。これは助かりそうにないな。
でもまぁ、ただでは死んでやらない。
一体でも多く道ずれにしてやる。
俺はグラウンドに向けて走り出す。
俺が走り出すと同時にスケルトンたちがこちらに来て、道が開かれた。
皆がその道を通って逃げていく。それを追うスケルトンは一体もいない。
よかった、これで皆は無事だろう。
「かかってこいよ。俺は甘くないぞ」
剣士というスキルをもらったが、あいにく、剣を持ち合わせているわけではない。素手での戦いだ。
先ほどスケルトンを殴った際に少し痛めてしまっている。
だがまぁ、そんなことは関係ない。死ぬまで殴り続ける。それだけの話。
『条件を達成しました。称号、スキルを獲得します』
『称号【勇者】を獲得しました』
『スキル【聖剣招来】を獲得しました』
『スキル【光魔法Lv.1】を獲得しました』
スキルを獲得したのか。なんでもいい。今この状況を切り抜けられるのなら、それを利用するまで!
「『聖剣招来』!」
俺が天に手を掲げると、いつの間にかその手には光輝く豪華な剣が握られている。
よく手になじむ……。これが剣士のスキルの効果だろうか。
俺は次の瞬間に一番近くまで迫ってきていたスケルトンへ聖剣を振り下ろした。
そのスケルトンは一瞬で真っ二つになり、そして勢い余った聖剣が地面に激突する。
すると、光の衝撃波が発生し、スケルトンたちを飲み込んだ。
おお、今ので3分の1は倒せたか? これならいける!!
『レベルが上昇しました』
『レベルが上昇しました』
『レベルが上昇しました』……
あの声が頭の中を反響する。うるさい。今はそんな事を聞いている暇はない。
もう一度聖剣を振り払い、スケルトンたちを消し飛ばしていく。数回その工程を繰りかえして、ようやくスケルトンを全滅させることができた。
みんなと竜二は無事だろうか。早く確認に行かないと……。
校舎の方に歩いて行こうとしたが、体に力が入らない。
少し考えて理解した。これはおそらく……。
ステータスを確認してその考えは確信に変わった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
名前:峯 隼人
レベル:8
ステータス:攻撃力 52
守備力 51
魔力 49
知力 50
精神力 48
速度 56
スキル:【剣士Lv.2】
【光魔法Lv.1】
【聖剣招来】
称号:【勇者】
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
魔力か知力……どちらかわからないがMPに近いものが存在している。おそらくそれの残量が少なくなったことが原因なのだろう。
招来したままだった聖剣を送り返すと、少し体に余裕ができたので、後のことは竜二に任せて、俺も避難することにした。
これ以上は戦えないだろうからな。
家へ帰る途中にも、あの声は頭の中を響き続けた。どれも俺には関係しないであろう話。どうにかできないものかと、色々確認していた時、マップの右上の方に歯車のマークが存在していることに気がついた。
ゲームでよくある設定のようなものじゃないか?
それを開くと、設定できる項目が一項目だけあった。
『自分と関係のない世界の声をシャットアウト OFF』
当然、ONにした。世界初の討伐による称号スキル等々はまだまだ続きそうだし、俺はそれに興味がないからな。
その流れでマップを確認するが、俄然【鴉羽高校地下迷宮:難易度E(推奨Lv.5~10)】の文字は赤くなったままだ。
まだ出回っているスケルトンが居るのか……。これ以上戦えないと、そう思っていたが……。
「俺がやるしかない。勇者として、逆境くらい跳ねのけないとな」
俺は重い足を動かして、裏手のダンジョン方面に向かった。
辿り着いた裏手には先ほど以上の数のスケルトンがたむろしていた。この量……やはり俺がやるしかないな。
「『聖剣招来』!」
もう一度聖剣を手にした俺はスケルトンの集団に駆け出す。光の衝撃波を出さないイメージで一体のスケルトンを切り裂く。
光の衝撃波は俺の思い通り発生しなかった。これで力を節約しながら戦える。
…………。
向かってくるスケルトンたちを作業のように切り捨ていく。しかし、スケルトンの数が減っている様子が見えない。つまるところ、終わりが見えない。
だんだんと疲労も溜まっている。レベルが上がっているからか、力が増しているのを感じはするが、疲労はどうにもならない。
このままじゃまずいかもな……。
だが……、やるしかない。次のスケルトンを切り裂いた次の瞬間、俺の体が金色に輝き始めた。
疲労が消えていく。これは……。
「無理すんなよ隼人」
「竜二!」
声だけで誰かわかる。俺の最も信用している友人。
竜二が隣に並ぶ。共に戦うつもりだろう。竜二の拳は金色に輝いている。きっと何かスキルをてにいれたんだな。
「休んでていいぞ、隼人」
「まさか。俺もやるよ」
「そうか。じゃあ……行くぞ!」
竜二がスケルトンたちに向かって飛びだしていく。その拳がスケルトンに当たった瞬間、スケルトンは灰になった。
……なるほど、おそらく浄化系の能力。
負けてられないな。俺は聖剣の力を解放して、地面に叩きつける。光の衝撃波が30体以上のスケルトンを消し飛ばした。この金色のオーラがある限り、この攻撃を撃ち続けられそうだ。
力の回復速度を大幅に上昇させている、そんな感じがする。
「すげぇな」
「もう一回!」
二度目の衝撃によってかなりの数のスケルトンが消滅した。後もう少し。そんな所で、裏手の大穴から4mはあろうかというサイズのスケルトンが出てきた。
……今までのものとは格が違う。感じる圧が段違いだ。少しまずいな。
そう思っていた次の瞬間、飛びだしていった竜二の拳によって、その巨大なスケルトンは瞬時に灰となった。
おいおい、まじかよ。
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