始まりの頭蓋鉄拳
『条件を満たしました。世界に機構を適用します』
いつものように友人と過ごしていた高校の昼休み。時刻はちょうど午後一時頃だろうか。機械的な声が頭の中に響いた。
周りを見回すと、皆にもその声は聞こえていたようで、惚けた顔をしているものがほとんどだ。
しかし、次の瞬間に最もうちのクラスで目立っているといえる俺の友人、峯 隼人が皆に質問をする。
「みんな、今の声が聞こえたか!?」
その声に応じて皆がはっとしたような表情をして口々に、『聞こえた!』とか『俺も!』と繰り返している。
中には下を向いて気味の悪い笑顔を浮かべている者もいるが、大体の者はうろたえているようだった。
「皆、落ち着いてくれ! 俺はここで騒ぎを起こして統率が取れなくなった場合今後が困ると思う。何もないならそれでいい! だが何かあってからじゃ遅いからな!」
隼人の言葉で皆は正気を取り戻したかのように思えた。しかし、次の瞬間あの機械的な声がまた頭の中に響く。
『条件を満たしました。適合者に初期スキルを与えます』
『スキル、【火魔法Lv.1】を習得しました』
俺はすぐに回りを見回すが、今の声に反応を示したのはおそらく数人だけだ。隼人は苦虫を踏みつぶしたかのような顔をしている。隼人にも今のは聞こえていたっぽいな。
「まずは教員に確認を取ろう。話はそれからだ。皆はここで落ち着いて待機していてくれ。俺が先生を呼んでくる」
隼人はそう言って教室から出て行った。しかし、昼休みのクラスメイト全員が教室にいるなんて珍しい事もあったものだな。他のクラスより団結力のあるうちのクラスだったらおかしくはないか。
「皆、頭痛とかそういった症状はないか?」
俺は一応皆に確認を取ってみる。すると、1人が手を上げた。
「竜二くん、私ちょっと、頭が痛くて……」
彼女は加賀屋 瑞希さん。先ほど二回目の声が響いたときに反応を示していた人の1人だ。
「わかった、少し教室に少し広めにスペースを作ろう。余り心地は良くないと思うけどそこで横になっててくれ。隼人が戻ってきて、状況が把握できたら保険室だな」
俺は数人の男子を呼んで机を寄せ、スペースを作った。これで一応横になっておけるだろう。人も余り近寄らせないようにするか。
『条件を満たしました。世界に迷宮を作成します』
『条件を満たしました。ステータス、マップを確認可能になりました』
三度目、四度目の声。迷宮、それにステータス、マップ。どうやら世界はゲームのように変質してしまったらしい。
俺は早急にマップの確認を行う。念じると同時に俺の目の前に地図を映したウィンドウが現れた。もし本当に迷宮が作成されたのであればここが危険な可能性すらある。
マップを確認した限り、この学校付近には迷宮が存在していないが、最寄りの山にはそれが確認できた。
【竹達山洞窟迷宮:難易度G(推奨Lv.1~5)】
推奨レベル……。これに関しては基準が分からないから何とも言えないが。
次に自分のステータスを確認する。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
名前:大西 竜二
レベル:1
ステータス:攻撃力 14
守備力 13
魔力 18
知力 19
精神力 21
速度 18
スキル:【火魔法Lv.1】
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
なるほど。これは完全にゲームだな。世界がゲームと同化した。そう言って差し支えないんじゃないだろうか。
と、そこへ先生を連れた隼人が帰ってきた。
「皆、大丈夫だった?!」
教室に入ってくるなり俺たちの担任である東 華先生……通称ハナちゃんがかなりの焦り用でそういった。
正直大げさだと思うが、緊急事態への対応となればそうもなるか。
俺はハナちゃん先生に加賀屋さんのことについて伝えた。
少し話して、すぐにハナちゃんが保健室に彼女を連れて行くことになった。ハナちゃんの話によると、もうすぐ職員室から放送をかけるそうだ。他のクラスからはいまだに喧騒が聞こえている。それを抑えるためだろうな。
ハナちゃんが教室から出て行ってすぐ、俺は隼人にこっそり質問をした。
「隼人、お前、スキル手に入れただろ。なんだった?」
「竜二もあの時聞こえてたのか。俺は【剣士Lv.1】だったよ」
「俺は【火魔法Lv.1】だな。ありふれた感じか」
正直クラスをまとめるリーダー的存在の隼人なら、勇者、とかそういうスキルがついてもおかしくはないかと思ってたんだけどな。そんな甘い世界じゃないらしい。
俺はその後何気なしにマップを開いた。すると、そのマップには大きな変化があった。
学校の裏に迷宮ができていたのだ。
【鴉羽高校地下迷宮:難易度E(推奨Lv.5~10)】
しかもどう考えても難易度高め。そして次の瞬間、その迷宮を表示する文字が黒から赤に変わった。
俺は急いで廊下に出て窓から学校裏を確認する。
すると、裏手にいつのまにか開いていた穴から人間の骨……有体にいえばスケルトンが何体も出てきていた。
なるほど、文字が赤くなったのは迷宮の氾濫か。マップをもう一度確認すると、赤くなっている迷宮は付近でここだけ。ここから逃げれば他の所が氾濫しない限り安全ではあるか?
いや、そうとも言えないな。いつ同じ事が起こるかわからない。
そんな事を考えている暇はない。まずは皆を逃がさないと。俺は急いで教室に戻って皆に今の事を説明する。
「学校の裏手に迷宮ができて氾濫を起こした! スケルトンがすでに出てきてる! ここは危ないから逃げるぞ! 放送なんて待っている場合じゃない!」
「それは本当か!? 皆、聞いたか!? すぐに逃げるぞ! 教科書とか、荷物とかは気にせず、早く!」
隼人が皆を指揮してくれる。
「隼人、皆を頼む。俺はハナちゃんにこのことを伝えてくる」
「わかった。後で合流しよう。気を付けてくれ」
「ああ。じゃあ、頼んだぞ!」
「おう!」
俺は教室をでて、喧騒をきって保険室まで向かう。保険室は一階にある。俺達の教室は二階。そう遠くはない。急がないと。
階段を降り切った非常口の近く。
曲がり角を曲がった瞬間、俺は見つけてしまった。
もう来てやがんのか!
スケルトンが一体、目の前をうろついている。
幸いにして武器は持っていない。やれるんじゃないか?
スケルトンに気づかれないうちに近寄り、その頭蓋骨をぶん殴る。
拳が痛い。しかし、スケルトンの頭蓋骨は粉砕された。
『最初の討伐【モンスター】が確認されました。対象者に称号、スキルを授けます』
『称号【切り開く者】を獲得しました』
『スキル【成長補正】を獲得しました』
『最初の討伐【アンデット】が確認されました。対象者に称号、スキルを授けます』
『称号【聖者】を獲得しました』
『スキル【聖魔法Lv.1】を獲得しました』
あ? なにやらスキルを獲得したようだが、今はそんなことはどうだっていい。とにかく保健室だ。
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