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短いですが諦めてください。

ネタが無くなりました。


…すいません。

「え、エスメラルダ様…!」


 ただ、そう呼ばれただけだった。

 そう…ただ一言、名前を。


 でも、それが、それが、ヒロインだと、アカリ様だと言うだけで、私の夢のような思考は一瞬にして吹き飛んだ。


「あの、無礼を承知で申し上げます。…助けていただいて、本当にありがとうございました!」


 あぁ…、本当に殿下に似ている。

 姫巫女特有のピンク色のオッドアイを除けば、本当そっくりだ。

 …なんで、気づかないのか分からないくらいに。


 美しい…殿下の、後ろの一部だけ伸ばし髪留めで止められている金髪が、魔法の残り香に煽られ風の方へとなびく。


「気にすることはないわ。困った時はお互い様ですもの。…それに……」


 続きは、言わなかった。

 ーー『本来、あなたは守られるべきお方だ』

 その、真実を、そっと、言葉を飲み込むだけ。


 王侯貴族なんて、この《プラネット》にとってはまやかし。

 本当の一番はヒロインで、最下位が悪役令嬢。

 そうして、成り立っている。

 いくら私が生きているからと言って、ここが《プラネット》である限り、アカリ様が廻り者である限り、変わらない事実。

 全てを知っている、彼女だからこそ、諦めているのだ。

 未来を、悪夢でしかない現実を。


 知っていて…それでも心にしまっている姫巫女を、アカリ様を、今は尊重しよう。


「そういえばアカリ様、どうしてこのようなことに?」


「あ、あの…ハーツハルク先輩におつかいを頼まれて…」


 …ああ、いたっけ、そんな奴。

 …先輩であるにもかかわらず、逃げ出した哀れな奴。

 いまだ自分は選ばれた人間(エリート)なのだとでも思っているのだろうか。


 呆れた。


 あれで懲りたと思っていたのに。

 …あんなことがなければ、私はまだ、ライナス様と、仲良くいられたのに…っ!


「アカリ嬢、何を頼まれたんだ?」


「え、えっと…薬草です…えっと…」


 えっとえっとと、間をつなぐ言葉を繰り返しながら、アカリ様は、エプロンのポケットを探る。


「あ、ありました! 全部で五種類です。一つ目はーー」


 詳しく聞くと、オオバコ、ガマ、ハマゴウ、ヒオウギ、キハダの五種類の薬草を、それぞれ違う店で買ってこいという命令だったらしい。

 店の指定はなく、ただ違う店で買ってこいと言われたらしいが、都市でもない城下町に教養のある仕事である薬師が、そう何人もいるとは思えない。

 案の定、というか…街の薬屋は回りつくしてしまい、こんな路地裏の薬草屋…おそらく麻薬売りであろう店を目指してきたらしい。


 …甘やかす事は良いことではない、けれど。

 愛の無い、甘やかし…というか放置は…ただ、愛されていないと実感するだけで何も嬉しくはなかった。


 まぁ、その結果『私』は、腐女子になって引きこもってしまうなんてことになったわけだけれど。


 ラガルト(ラガルハーネル×ルリト)の組み合わせが一番好きだった『私』は、いつもエスメラルダにスキル振ってリトとラガルハーネル様が同じ画面に出てくるように何周も何周も周回してたっけ。


 その時は、しゃしゃり出てくるヒロインが邪魔でエスメラルダよヒロインを倒せ〜とか、ガチでおもってたけど…。


「アカリ嬢、ここからもう少し行ったところにドルベラーネル公爵家の誇る…つまり、エスメラルダの家の薬草農園があるはずだ」


「…ああ、ありましたわね。そんなの」


 忘れてた…たしかにあったわ、ちなみに誇ってもいない。

 小さな小さな農園だもの。


「分けてやる事は出来るか?」


「ええ、構いませんわ。…というか、ラガルハーネル様、誇張しすぎです。あれは農園というには少々小さすぎますし…誇ってもおりませんわ」


「ええ、でもそんな! 悪いですし…」


「見くびらないでくださいませ。公爵家にとってそのような粗末ごとを、と思うかもしれない…ですが、別に私個人として許可いたしますので大丈夫ですわ」


 責任は全て私が取る。

 お父様にもリトにも背負わせはしない。

 そう、心で断言する。


「い、いえ…そうではなくて…」


「そうと決まれば早いほうがいいな。お忍びで優雅な馬車には乗れないが、いいか?」


「あ、ありがとう、ございっ…ますっ…」


「…泣かなくていいのよ…アカリ様…」


 先の事がよほど怖かったのか、もしくは。

 真実を断黙するという事すら、繰り返すという意味のあるかどうかも分かりはしない…それこそ、人生が嫌になるような輪廻にうんざりしているのか。


 私は、歩きながらも、まだ泣きじゃくるアカリ様を宥める殿下を見るアカリ様の目(ややこしくてすみません…。)に、少しばかりの感傷というものがあるように見えた。

 懐かしいけれど、触れられない…そんな、一線を引いたような瞳だったように思う。


 それは、私の…気のせいなのだろうか…。

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