021
その後、無事屋敷に戻った私は簡単な食事を取ると医務室に連れていかれた。
別にラルダが回復してくれたから怪我も何もないのだけれど。
強いて言うなら腕のアザ、か。
あのアザ。
なぜか薄くなったのに微妙に治らない。
別に傷物といわれるほどでもないし、痛くもない。
どうしてもであれば魔法で隠せばいいことだ。
この事は忘れよう。うん。
次の日には、私を誘拐した人らは全て捕まった。
私が場所を案内したこともあり、案外あっけなく事件は幕を閉じた。
ちなみに捕まった人たちがどうなったかは私が知る由も無い。
むしろ、知りたくない。
でも…メイドたちは、私の学園への入学準備のためいそがしいらしくそんなことは気にしていられないようだった。
そう。
学園への入学は《プラネット》の始まりを意味する。
ヒロインである姫巫女が平民枠に推薦入学するところから始まり、次々とイベントが起こっていくのだ。
しかも…この《プラネット》。
何故か、物語が終わるに連れて、結局はエスメラルダ一人が悪かったようなエンディングとなる。
それこそ、バッドエンドでもグッドエンドでもハッピーエンドでも。
ほとんど出てこないコースにいても、何故かエスメラルダは処刑されたり追放されたり、えげつないのでは島流しもあった。
攻略対象は全員で五人。
一人は隠しキャラ…このコースはリトのコースをクリアしないと出現しないので除外してもいいだろうと言うことで、まぁ、四人だ。
一人目はまぁ、お馴染み。
ラガルハーネル殿下。
このコースは一番簡単と言われている。
何故か?
簡単。
ラガルハーネル殿下は世間知らずなせいも相まってか、ヒロイン姫巫女と二、三回イベントをクリアしただけで弱愛し始めるからである。
反対に、そのヒロイン姫巫女をいじめるエスメラルダを嫌悪していった。
次は、私の弟でもあるルリト。
ラガルハーネル様とは違い、このコースは一番難しいと言われている。
理由は《プラネット》製作者の設定ミスだったのだが逆に好評だったため正式にプログラム化されたのである。
まぁ、リトはある意味一番難しい…と思う。
だって性格が全然違うし、まず第一に攻略の要となる閉ざされた心が存在しない。
だってリトは心を閉ざしてなどいないのだから。
次はテーマス。
テーマスは幼い頃、親の不正な取引の発覚により貴族から没落し、攻略対象で唯一姫巫女と同じ平民である少年。
この世界では珍しい美しい黒髪と目を持ち、ファンブックでは大変人気があった。
あと、テーマスは姫巫女が裏キャラルートで進むと何故か途中で消息不明になってしまう。
消息不明…というか、ゲームに出てこなくなってしまうと言う方が正しいかもしれない。
この件に関しては公式では何も語られていないので私には分からない。
次、クロネカル。
子爵子息だが、感情の波が大きく、時に癇癪を起こす。
弱愛していた妹の死で自暴自棄になっており危険な事をする事が多い危険人物。
姫巫女ごら他の人のルートで行くと、クロネカルは事故にあい死んでしまう設定になっている。
どうしてもというなら助けなくもない。
だが、姫巫女がこのルートで進むと、最終的にはクロネカルは竜退治の功績が認められて勲章を得、名誉貴族となっていた覚えがある。
つまり、姫巫女はクロネカルと結婚するのが一番いいと思うのだけれど。
五人目…は、まぁ、出てきた時に語るとしよう。
私自身もこのキャラについては分からないことが多いし。
まぁ、注意すべきはこの四人で間違いない。
リトとラガルハーネル様は大丈夫だとして、テーマスとクロネカルは物語上で逆に嫌がらせをエスメラルダにしていた記憶があるから要注意だ。
この件にに関してもなぜかエスメラルダしか刑罰を受けないと言うハテナな設定がある。
この二人は、逆に姫巫女を守ったと褒められるのだ。
まぁ。これは姫巫女の生まれに答えがあるのだけれど。
姫巫女は、姫、なのだ。
姫巫女ではなくて、《姫》つまり王女様。
現、王の妹の娘…つまり殿下の従兄弟。
それなら殿下と結婚できないんじゃと思うかもしれないが、この国では王族同士の結婚は当たり前。
時には兄妹や姉弟で結婚する事もある。
まだ、DNA鑑定などの技術…科学技術が発展していない為、そう言うことには疎いのだ。
イコール、殿下と姫巫女が従兄弟でも関係無い。
むしろ、身分の差が消えると考える方が正しい筈だ。
私よりも身分が高いのだから、まぁ虐めたら不敬罪に問われるのは頷けるけど…私より身分が低いテーマスと、クロネカルが私を虐める…悪戯しても名誉とされるのはいただけない。
《プラネット》製作者に恨みを言いたいくらいだ。
それは、姫巫女を守ろうとしてやったことなのかもしれないけれど、貴族としてそれぐらいの名義分は守ってほしい。
「お嬢様、香油はどれを持っていかれますか?」
「そうね…オレンジとローズ…それからラベンダーも入れておいてちょうだい」
「かしこまりました」
「エスメラルダ様、アクセサリーは持っていかれますか?」
「いえ…必要になったら、あちらで見繕います」
「左様でございますか」
時々、メイドが私に質問をしに来る。
それに私は丁寧に答えてあげる。
と言うか、それしかする事がない。
移動すれば、メイドがどうすればいいのかおどおどと迷い始めるし、移動するといったってする事がない。
『ラルダ…前やっていたチェスの続きをしましょう?』
『んー、イイヨ〜〜!』
『じゃあ早速始めましょう。僧侶を…』
チェスは飽きたがしょうがない。
する事がないのだから。
しょうがなく私はラルダとチェスに興じる事にしたのだった。
…メイドから見れば一人で喋りながらあたかも相手がいるようにチェスをする変人だったかもしれないけど。
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