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018

今回は早めに投稿出来ました!

エスメラルダを作っていくのが楽しいです。


最新話です。どうぞ

 あれから月日は流れ、私は10歳になっていた。


 が、憂鬱だ。

 私は、はあ、とため息をついた。

 でも、ちょっとくらいいいと思う。


 何故か?

 そんなことは簡単。

 今日の午後から、私と殿下のとお茶会があるから。

 それもたった二人で。


 リトは座学の家庭教師が来るから敢え無く断念。

 キールとクラリーチェはもちろんアウト。

 ラルダはいるけれど、多分暇になって寝てしまうだろう。

 私だって寝てしまいたい。


「おほほ」

「うふふ」

「あはは」


 なんて、やってられない。

 思い出しては多くなるため息に、私は自室の机に突っ伏した。

 こんなところをメイドにでも見られたら卒倒されるだろうか。

 むしろ、それで殿下とのお茶会が無くなるならどんとこいだ。




「エメお嬢様、お時間です。ご支度のほどを」


 …キールか。

 もういっそ逃げ出してもいいかな?


「エスメラルダ様。ドレスはこちらを。メイクは私が担当させていただきます」


「着付けは私が」


「私は、髪型を整えさせていただきます」


 ……主人に尻尾を振る犬が。

 私欲の為に私に擦り寄るのはやめて。

 どうせ、エスメラルダが公爵令嬢じゃ無くなれば、お金が無くなれば。

 ……エスメラルダでは無くなれば、貴女達は手のひらを返したように振る舞うのでしょう?


 その後は、コルセットを締め直してドレスを着直し、姿カタチを整えて完成だ。


『エメ、エメ。キレイよ』


『ありがとう、ラルダ』


 濃いめの紺色のシルクのドレスを身に纏った私は、ゆっくりと馬車に乗り込む。

 お茶会の開かれる場所が、王宮の中庭らしい。

 正直、ここでいいと思う。


 私、婚約する気なんてサラサラ無いのですから。


 馬車には、私の他、侍女としてクラリーチェを。

 護衛としてキールと、うちの騎士団隊長である、マッサングルを連れてきていた。


 と言っても、キールは馬車の運転のため、車内にはいないのだが。


 マッサングルは《プラネット》では出てきていない……いわば未知のキャラだ。

 攻略はおろか、彼の素性も分からない。

 まぁ、それぐらいは調べればわかるかも知れないが。


 実力は十二分なので護衛としてはなんの文句もない。

 ちなみに私はと言うと、もしものためにシルクの下のパニエに小さな短剣を仕込んでいる。

 この短剣にはリトの雪魔法で作った氷の短剣だ。

 鞘は解けない雪で、刃の部分は解けない氷で出来ている。

 なんとも器用な魔法だ。


 私も光や水の短剣は作らないことも無いが、二、三日もすれば消えてしまう……いわば即効にしかならないような諸刃の剣しか作れない。

 ……これも実力の差か。


 その点弓なら一度出したら終わりだし、刺さってからなら消えても問題ない。

 そこから踏まえても私は後衛の方が向いているのかもしれない。

 魔力を練るのは唯一、リトよりも速いのだから。


 馬車の外から歓声が聞こえた。

 王都の門をくぐったようだ。

 歓声は…クローエフェアラ派の住民か何かだと思う。

 何せ、殿下との婚約はクローエフェアラ公爵家の拡大にも繋がるのだから。

 ……婚約する気はありませんけれどね。




 馬車が止まった。

 とうとう王城に着いてしまったようだ。

 こんなところでイベント起こして死亡フラグなんてやってられないのですが。

 そんなに私にフラグを立てたいのですか?


 ま、まだ婚約してないし不敬罪を、しなければ大丈夫だと、思いたい。

 こんなところで原作補正なんか来ないで下さい!


 て言うか、殿下からの婚約を断ったらそれもう不敬罪なんじゃ…。

 神様!《プラネット》の神様!

 私にどうしろと言うのですかっ!

 ……って叫んでしまいたい衝動と戦っています。

 でも本当にどうしたら……。



「こちらでございます。エスメラルダお嬢様」


 王宮の侍女に案内されて、殿下のいるサロンに案内された。

 中庭にはまだ行かないらしい。


「クローエフェアラ公爵家令嬢がご到着なされました」


 そう言って臣下らしき人が、ガラス張りのサロンのドアを開ける。

 ふわりと、花の香りが漂ってきた。

 これは…ラベンダー?

 いけない、いけない。

 挨拶を忘れていた。


「クローエフェアラ公爵令嬢、エスメラルダです」


 腰を下げ、頭を下ろし、ドレスの裾をつまんで、最上の礼をとる。

 向こうにその気は無いのかもしれないが、こちらにとっては、お茶会もただの面接にしか感じない。

 いや、それよりも緊張する。

 顔が強張る。

 面接で断罪される事なんて無いのだから。



 ……。

 いつまでたっても殿下からのお声掛けがない。

 そんなに可笑しかったのかな?

 すると、さっきの臣下の人が殿下にこっそりと耳打ちするのが見えた。

 何を言っているのだろう。


「殿下…?」


 不思議になって、つい、声をかけると、殿下からの声が上がった。


「…い、いや。すまない。顔を上げろ」


「ありがとう、ございます」


「今回はプライベートだ。そんな畏らなくて良いのだが?」


「ありがとうございます」


「エスメラルダ嬢。普通に、とは出来んのか?」


「ありがとうございます」


 じれったくなったのだろう。

 というかエスメラルダ嬢とかやめてほしい。

 だが、殿下は、あろう事かあの時の話を持ち出してきた。


「…普通に接しろと言っている。……クレア殿」


 ぐっ。

 まだ覚えていたとは思わなかった。

 なら……こちらも。

 殿下から始めたのですから、私にだけ不敬罪とかやめてくださいよ?


「これが普通ですよ?ダリウド様」


「口調を変えただろう。それは平民の喋り方だ。あの時のような、な」


「お褒めにあずかり光栄に存じます」


「不敬罪に訴えられたいのか?」


「それは…困ります。殿下」


 内心動揺しているのを悟られないようにして、微笑みかける。


「…中庭に移動するか?」


 殿下も本当に不敬罪にする気は無かったらしく、予定通り中庭に行くか聞いてきた。


「はい。殿下が宜しければ」


 ここは…満面の笑みでエスコートを受け取っておこう。

 笑顔は取引の必須科目だ。


「…エスメラルダ公爵令嬢?、お手をどうぞ」


 殿下の差し出した手に右手をそっと乗せる。

 私たちは、そのまま歩き出して、中庭へ向かって行った。








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