そんなこんなで、入社したって訳です
連休明けの十一月四日、とうとうアルバイターを卒業した有利は正社員として出社した。
「おはようございます」
しかし、いつも通りだ。「新たな気持ちで臨むぞ!」とかにはならない。
アットホームでブラックな職場にはもうすっかり慣れた。気をつけなくてはブラックに飲まれるだろうが、気をつけてさえいれば何とかなりそうだ。
それに、ディストーションは毎日発生する訳ではない。時間の歪みがそんなにポンポン発生しても困る。全人類、いや、生きとし生けるもの全てが困り果てる。そして、日本、しかも有利たちの担当の関東周辺のみとなると、数か月の間が空く事すらある。
だから、有利は今日も関東支部メンバーと通常業務だ。能登は大分紙のメモを減らしているし、有利のマニュアル作成は無事終了した。そのお陰なのか、能登の仕事は以前と比べると、「サクサク」とまではいかないにしても、「よしよし」くらいには捗っている。
今日も今日とて普通だ。有利にとって、九月までの自分とは何もかもが違う事が普通だ。いつもどこか重苦しいものを感じていたのに、それはすっかりなくなっている。
「津幡さん、エナドリばっかりじゃ体壊すから、お茶淹れますね」
そんな事を口にしつつ立ち上がる動作ですら、以前とは違うのだ。
ヒュージ・ナレッジ・ジャパン東京本社ビルが見えるカフェで、くたびれたジャケットを羽織った丹原がブラックコーヒーを飲んでいた。
(小松有利、とうとう入社か。あの色々おかしい総務部で、親父みたいに潰されないといいんだがな……)
その苦々しい表情は、コーヒーのせいではない。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
私は一般的に言われている「アットホーム」とか「みんな親切」とかが苦手すぎるので、
ヒストリー・キーパーズで働ける気がしません。
だから、この能力のことは隠さなくちゃ……!
丹原さん、がんばってー。




