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王道ルート拒否!~転生やりこみゲーマーはメインストーリーを避けて通りたい~  作者: 藤原キリオ


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18/52

18:はじめての奴隷商



「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」


「冒険者用の戦闘奴隷で良さそうな者がいれば買いたいと思っている」


「ご要望の条件はどのようなもんで?」


「戦闘系職業(ジョブ)に就いていて戦闘経験は多少あったほうがありがたい。なるべく若いのがいいな」


「種族や性別、職種などはどうでしょう」


「問わない。とりあえず見てから判断したい」


「かしこまりました。少々お待ち下さい」



 一応二人と話し合った内容で注文してみたが……店主がいかにもって感じの奴隷商なのが気になるなぁ。

 【ベレッサの街】で奴隷商はここだけっぽいし、他に行く余地もないのだが。なんとなく不安な気持ちになる。

 ソファーに座って待つこと五分ほど。店主は七人の奴隷を連れてきた。結構いるもんなんだな。


 少年のように見える者から、だいたい二十代半ばってところか。覚職が済んでいるはずだから十五歳以上だろうけど俺より若そうに見えるヤツもいる。

 男性が五名、女性が二名。フゥガとカリンのことを考えれば女性のほうがいいとは思う。

 冒険者ってテントで雑魚寝とかするからな。いくら奴隷とはいえ男性だったらせめて誠実そうなヤツがいい。



 店主により一人ずつ紹介のような形になる。

 名前、職業(ジョブ)、戦闘経験など軽いものだ。俺が条件をゆるくしたからそれに適した説明をしているという感じ。

 そこから質問を色々と投げた。

 奴隷となった経緯、信仰と武器、現在のレベル、ステータス、などなど。


 やはりレベルやステータスは覚えていない人ばかりだ。「一年前に見た時は――」とかいうのがせいぜいだな。全く当てにならない。

 となると、どうやって戦っていたかとか、どんなスキルを使えるかといった質問になる。


 フゥガやカリンは苦笑いしていたが、どうやら奴隷を買うのにそこまで詳しく質問する客というのはいないらしい。後から店主に言われたが。

 しかし俺から言わせてもらえば聞いて当たり前のことだと思うのだ。

 普通に冒険者パーティーに入れるにしてもどれだけ戦えるのかというのは重要だろうし、ましてや俺の場合、育成と「将来的にどんな感じの最強にできるか」というのが命題になる。だからこそ最初から知っておきたい部分が多いということだ。



 俺はまず、六人パーティーを固めることを目標とした。

 そうなると斥候、盾役(タンク)、火魔法使いは除外となる。クランを作るつもりなら被ってもいいけどな。今は必要ない。

 正直、欲しいのは前衛の物理アタッカー、回復職(ヒーラー)、火魔法以外の後衛職の三人だ。

 俺たち三人が今後転職するのでそこまで門戸を狭めるつもりはないのだが、現時点で不足している点を考慮するなら、欲しいのはそこら辺になる。


 七人の詳細を色々と聞いたところで店主に「ちょっと三人で話させて欲しい」と一度退室してもらった。

 俺の独断で決めていいものではない。買うなら全員が納得する形で買いたいものだ。



「二人はどんな感じだ?」


「私はエルフの彼女か、【ソードマン】の彼だろうか」


「私もフゥガと同じです。しいて言えば【ランサー】の彼もどうかって感じですけど……ジェイルさんはどうなのです?」


「俺はエルフの彼女くらいかな。【ソードマン】はあまり欲しいとは思わない」


「ではとりあえず一人にしよう。残りは【交易都市デュッセル】で探せばいい」



 エルフの彼女というのは【ネフィリア】という七十歳の女性。人間年齢で換算すると十七歳くらい。

 職業(ジョブ)は【ハンター】。斥候職ということで俺と被るのだが、武器が弓なのだ。斥候もできる後衛物理職と言ったほうが正しい。

 斥候二人体制というのは安全面を考えてもありがたいし、不足していた後衛なのだから尚更良い。


 レベルは不明とのことだが<ハイド>が使えるそうなのでLv25以上は確定。

 弓も<アローレイン>が使えるということだから、おそらく弓ばかり使っていたのだろうと予想できる。

 俺たちのレベルに近いから置いて行かれるようなこともないだろう。



 そもそもエルフのモブというのはゲームだとほとんどお目にかかったことがない。

 シュトローゼル王国内の冒険者ギルドではまず紹介などされないし、他国でやっと出てくるかというところだろう。

 エルフ自体の数が少ないというのもそうだが、住んでいる場所的に地域差があるのだ。モブでわざわざエルフを仲間にするというプレイヤーはよほど酔狂なヤツだけだろう。


 ユニークや準ユニークならばエルフもいるが、どれも強キャラである。非常に人気のキャラばかりだ。

 それはエルフの性質にあるのだが、エルフにしか就けない職業(ジョブ)というのが存在するのだ。それが強い。

 ネフィリアを買おうと思ったのも将来的にその職業(ジョブ)にしたいなぁという欲からだ。


 あとはまぁ単純に美人だしな。エルフだからそりゃそうなのだが。

 フゥガやカリンと一緒のことを考えると、むさい男よりも美人なエルフを隣に置いたほうが絵になる。俺としても安心感がある。

 下心がないとは言わないが、第一はパーティーに不和が起きるような事態にならないこと。パーティーリーダーとしてそこは考えないといけないだろう。……と律するわけだ。己自身を。



 それから店主を呼んでネフィリアを買う旨を伝えた。

 すると今度はネフィリアのみが部屋に入ってくる。正式な契約となるわけだな。



「契約の内容をご確認下さい。これで問題なければ契約魔法を結びます」


「主人への攻撃禁止ってこれ、俺が混乱した時の気付けとかはどうなるんだ?」


「できませんね」


「気付けの場合のみ攻撃できるとかは?」


「判断が曖昧になる部分がありますので契約魔法には盛り込めない部分になります」



 なるほど、そういうものか。じゃあ俺も状態異常耐性のアクセサリか何か用意しないとな。

 フゥガとカリンにも契約内容を確認してもらい、良さそうだったので契約となった。

 主人が奴隷を虐げるようなことも禁止とされているのだが、俺の無茶な熟練度稼ぎとかは虐待扱いにならないのだろうか。そこが心配なところではある。言えないけど。


 店主が契約魔法を行使すると、ネフィリアの首輪が光を放つ。これで契約となったらしい。

 今後、ネフィリアが契約に違反するような行動をとった時、首輪が絞まるとのことだ。なんだかなぁ。


 ちなみにネフィリアの買値は七人の中で一番高かった。エルフだから仕方ないのだろう。

 【レームル山】で荒稼ぎしておいて良かったよ。

 次の街でも奴隷を見繕う予定ではあるのだが、その前に【幽霊屋敷】や【梟のアジト】の物品を売らないとダメだな。次の街に行ったら優先してやらなければ。


 そうして俺たちは四人で奴隷商を出た。



「改めてよろしくな。俺たちは【レッドヘア】ってパーティーなんだが、俺がリーダーをやっているジェイルだ」


「私はフゥガという。【ナイト】の盾役(タンク)だ」


「私はカリンです。【マジシャン】の火魔法使いです」


「ネフィリアです。どうぞよろしくお願いします」



 奴隷と言うから悲壮感のかたまりのような感じを想像していたが、ネフィリアはそんな感じでもない。

 無表情で生真面目という印象。キリッとしている。

 真面目っぽいという点ではフゥガと仲良くやれるかもな、とちょっと期待している。



「とりあえずネフィリアの生活道具とか衣類とか弓とか買って、今日は終わりだな」


「冒険者登録も必要だろう」


「ああそうだ、ギルドも行かないと。……あ、教会もいかないとだった」


「ステータスですね。やっぱり最初に見るですか」


「そりゃそうだろ。そんで明日はもう出発だ。ネフィリア、忙しない感じだけど悪いな。何かあったら遠慮せずバシバシ言ってくれ」


「はい、かしこまりました」



 硬いなー。こういうものなのだろうか、奴隷というのは。





■ネフィリア 70歳 エルフ

■ハンターLv28



 大陸東方、リッツエルデ王国とイーステッド武国に挟まれるようにしてエルフの住む森がある。

 内向的な者の多いエルフの民は里から出ることも少ないのだが、森の外の世界に憧れて出る者もいるし、悪意ある人間に拉致され売られるエルフもいるという。


 私の両親もその森の出身だったらしい。共に外へと出て冒険者となって暮らしていた。

 やがて二人の間に私が生まれるわけだが、冒険者とは危険なもの。

 今から五十年ほど前に二人は帰らぬ人となった。私は家で待ち続けていた。訃報が届いたのは随分後になってからだ。


 独り身となった私は、結局両親と同じように冒険者となった。

 危険な仕事だとは分かっている。それでも両親の話を聞いていたせいだろう、それ以外の選択肢を持てなかったのだ。


 しかし私が加わるパーティーは人間ばかり。誰もが私より先に引退し、私はまた新人の冒険者を見つけてはパーティーを組むというのを繰り返していた。

 ランク自体はCにまで上がっていたが停滞していたと言っていいだろう。

 危険な仕事と分かっていたので無茶なことはしなかったし、最低限の生活ができれば十分という方針でいた。


 人間から見れば随分と悠長に見えただろう。

 だが私から見れば人間は誰もが生き急ぎ、危険な冒険者活動において自ら死地に向かうような暴挙に見えていた。

 エルフと人間は共に歩むことはできない。そう結論付けるのに時間はかかったほうだと思う。



 安全に、慎重に、と気を付けていてもふいに危険に陥るのもまた冒険者というもの。

 私は当時のパーティーメンバーに騙され多額の借金を負うはめになった。エルフが高値で売られるというのを利用されたのだ。

 奴隷商へと連れていかれる最中、私の中では全てが終わったのだと自暴自棄になっていた。

 怒りや悲しみなどではない。全てを諦め、何も考えられなくなっていた。人生はすでに終わったのだと、そう感じていた。


 ところがそこに一筋の光が生まれる。


 その男性は忌避すべき『客』であった。私を買う『主人』であった。

 悪感情しか持てないはずの相手に、なぜか光を感じたのだ。暖かな、まるで家族のような光を。


 その男性は私とは真逆の存在だった。

 安全に、慎重に、ゆっくりと続けていた危険な冒険者という活動。

 それを彼は考えられない早さで、危険を危険とも思わず、私を振り回すように連れまわすのだ。


 考えている暇などなかった。付いて行くだけで必死だった。

 明らかに普通の冒険者とは一線を画している。そう思わせるだけの行動力を見せ続け、私の心を躍らせ続けた。


 こんな人間がいるとは思わなかった。

 その感想は呆れも含まれるが、同時にとても暖かく笑えるもので。なぜかそれが私には光に見えたのだ。



 おそらく彼は歴史に名を残す御仁になるのだろう。

 彼に買われたことが良かったのか悪かったのか、今はまだどちらとも言えない。

 しかし掛け替えのない出会いであったのは確かだろう。私はそれを記憶に残し続けなくてはいけない。


 私は彼の後ろを追い続ける。光の方へとひた走る彼の背中を見つめたまま――。



=====

Name:ネフィリア エルフ

BIL:森と精霊の神

JOB/Lv:ハンター(28)

WEP Skill:パワーシュート(5)、スパイラルシュート(2)、ダブルシュート(1)、パラライズシュート(2)、トリプルシュート(1)、アローレイン(1)

JOB Skill:エイムアップ(6)、ホークアイ(4)、コレクトサーチ(2)、エネミーサーチ(3)、ナイトビジョン(1)、ハイド(1)

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