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エピローグ
清明祭が終わった。
開催前から『恋が成就する』などの無責任な噂が広まりもしたが、特に混乱もなく無事に最高動員人数を達成した。
それもどうでもいい話。
「なぁ、貴方もそう思うだろ」
私は北浦将吉の墓前に立っていた。
「私も貴方も臆病だったのかしれない」
彼が酒を嗜むかどうかは、私の取材では分からなかった。
それでも酒を供えたのは、私が北浦将吉と酒を酌み交わしたかったからだ。
「お互い、臆病故に孤独を選んでしまったな」
答えることのない彼の言葉を待った。
それに意味などない。
でも待ちたかった。
「四葩おばさん、お花ちょうだい」
彼の代わりの声を風が運んだ。
「じゃぁ、拓じいじにもあげてね」
「美禰子、そろそろお父さん呼んで来て」
「それじゃぁ、また」
私は立ち上がると、北浦の墓石に軽く手を挙げた。
まるで友人にするように。
彼が最期にそうしたように。
轍はもう薄く、微かに跡を残すだけだった。
花物語 【完】




