糸引く雨降り
書き始めたのは、2025.11.27。記憶があやふやな為、地図を確認したりと手間取ってしまった。とうとうロウバイの花咲く頃となってしまい、さすがにこのタイミングを逃したらお蔵入りになるかもと妥協した。最後が尻切れ蜻蛉になってしまい申し訳ない…。
干天がしばらく続いたが、昨日久しぶりにまとまった雨が降った。
一面鈍色の空から白い糸を引くような雨が、次から次へと降りてくる。
雨が降ることは珍しくないけれど、白い糸を引くような雨を見るのは久方ぶりだ。こんな雨降りを何時何処で眺めたんだったか。次々と重ねられる記憶の向こう側のことなので、はっきりしない。ただ、懐かしいという想いが心の奥底から湧き上がってくる。
この「SSSゆる旅日記」とは別作「S S S少し不思議な忘備録」のep210「朝から久しぶりの雨」を書いていて、セピア色の記憶が心の奥底から浮かんできた。もうひと昔は前の、日記に記載の無い旅の記憶の断片だ。
ともすれば侘しい風景になりがちな冬枯れの風景を彩る、黄色い蝋梅の花。まとまった植栽をして、観光資源としている処は少ない。そんな数少ない蝋梅を鑑賞出来る場所の一つに神奈川県足柄郡松田町 寄ロウバイ園がある。
何で奇ロウバイ園を知ったかも、訪ねた時期も、もう定かではない。
訪れたのは、一月下旬の平日。曇天の空の下、小田急電鉄新松田駅から路線バスでロウバイ園へと向かう。バス待ち時間がかなりあり、近くの酒匂川までぶらり足を伸ばしたはずなのに河原が広かったなぁという記憶しかない。
路線バスに乗ってロウバイ園に思ったより早く到着。バスに乗っていた、数少ない乗客は全員ロウバイ園に向かうようだ。さほど歩くことなく目的地に着く。思っていたより広いけれど、平日の所為か来訪者がほとんどいない。十人ちょいくらいだろうか。特にイベントや食事処なども無く、さらりと見て周るだけ。天気も良くない上、冬の寒気に当てられて早々にロウバイ園を後にした。
まだ昼前という早い時刻なので、新松田駅まで歩いて行くことにする。昔からの集落の続く細い道を歩いていると、急にモダンな建物が出現した。どうやら地価の高い首都圏から本社機能を移転させた企業の建物らしい。里山的な周りの風景から思いっきり浮いて見える。建物周辺には人の気配は無いので、皆んなきちんと出勤して働いているんだろうかと他所ごとながら心配していたが、実際はどうだったのだろうか。
駅までの距離がまだまだあるのに、暗い雨雲からとうとう冷たい雨が降ってきた。折り良く小さなお社があったので、レインウェアを用意しがてら雨宿りする。ついでにおやつタイム。温かなハーブティーを飲みながら降りしきる雨を眺める。雨は途切れること無く、次から次へと白い線を引きながら大地に降りてゆく。濃い雨の気配と雨音に包まれて、ただひとり。他に誰もいない。
華やかな蝋梅の花よりも、無人のお社で雨宿りしながら降る雨を眺めた記憶の方が鮮明に残っていたのはなぜだろう。




