絡まれました。
判断を失敗したな、と思った。
一日の授業を終えて放課後。特に用事があるわけでもないので、まっすぐ帰ろう……と思ったんだけど、ちょっと尿意を感じてしまい、トイレに寄っていく事にした。
この体に慣れてないから、どこまで我慢が効くかわからないからね。こないだの一件みたいにデッドラインギリギリになるのは嫌なので、早めに行くようにしている。
ただ今回はその判断は失敗だった。
その理由は今の状況だ。
「ね、どんな感じなの? 教えてよ」
今僕は男子生徒に絡まれている。しかも6人。囲まれてしまった感じだ。
「何度も言うけど、ちょっと行かなくちゃいけない場所があるんでどいてくれないかな」
「別にそこまで急ぐことないじゃない、その恰好で訓練もないでしょ?」
まぁ今の恰好完全にカジュアルだから、戦闘服には見えないしな……実際違うし。
むしろ制服だったらそもそもこんな所で捕まってない可能性も高かったかも。早く来週になーれって感じだ。いやスカート穿きたい訳じゃないけれど、やたら目立つのに比べればスカート穿くくらいなんともないだろう。
しかし、それはそれとしてどうしたものかな、これ。
人数多いから強行突破は難しいだろうし、そもそも今の僕の力は体相応になってるっぽく、男の時でもそんなに強くなかった力が更にひ弱になってるっぽい。腕とか掴まれたら多分振り払えない。魔法使えば逃げられるだろうけど、基本的に学園内では訓練棟以外での魔法の使用はご法度だ。
勿論身の危険を感じれば特例で使用は許可されるけど、今の状況がそれに該当するなんてことは当然なく。というか学園内だし、向こうもそこまで強硬的な手段には出てこない。
ただ……とにかくしつっこい。
行きたい場所があるのは本当だけどトイレだし、そんな事いったらトイレの前までついてこられそうだし……というか行けないと思うと行きたい気持ちが強くなってきた。
うーん……この子達多分下級生だよなぁ。同級生では見ない顔出し、体を見る限り上級生って感じもしない。というか上級生は那美が「うちの妹に妙な事にしたら(親指を下に向けて首を掻っ切る仕草)だからね?」とやったらしいので、視線を向けてきたり軽く話しかけてくる人はいても、妙なちょっかいを出してくる人はほぼいない。
非常にありがたいけど、弟だってことは忘れないでね?
ま、上はそんな感じで那美が抑えてくれてるから、こういう事をしてくるのは彼女と接点のない下だよねぇ。となると、那美の名前出しても無意味かなー。実戦にあまり出てないと那美の実力はわかってないだろうし。
はぁ。
「あんまりしつこいと、先生方に相談するよ?」
「おや、先輩。いい年して先生に泣きつくんですか? まぁか弱い女の子じゃしょうがないっすよねぇ?」
……女の子にもてなそうだな、こいつらー。
どうしよう、僕が元からの女の子だったらこういう連中の上手いあしらい方とか知ってるのかな。
とりあえず逃げてみるかな。それで捕まえてくるようだったら大声で悲鳴上げてやればいいし。放課後になったばかりとはいえ、訓練棟も今はある程度人がいるだろうし、誰か来てくれるだろう。目立つのはいやだけどいつまでもこんな面倒な奴等に絡まれていたくない。
よし、それで行こう。
そう決めて、僕が身を翻そうとしたその時だった。
「おい、お前ら何をやってる」
そこにいる下級生たち、それ以外の声がかかった。僕を含めて全員がそちらに視線を向ける。
そちらには明らかに上級生という様相の男子生徒が三人ほど立っていた。どうやら男子生徒が(外見だけなら)女子生徒を囲んでいるのを見て声を掛けてくれたらしい。ありがたい。
下級生は乱入者の存在に顔をしかめると、慌ててあっさりと引いていった。……多分先輩方の顔を知っていたのだろう。
なにせその男子生徒は僕でも知っている顔だったから。




