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「申し訳ございませんでした、アラミレーテ様」
皆さん、こんにちは。アラミレーテです。現在なぜか護衛についていた騎士に頭を下げられています。もちろんぼくよりも年上の男性に。えーっと、この状況どうしよう? 確かに帰り際すごい暗い表情しているな、とは思ったんだよね。
「やはり、許してはいただけないですよね……。
護衛失格です」
今までありがとうございましたと言って去ろうとする騎士たち。え、ちょっと待って⁉
「あの、どちらに行かれる予定ですか⁉」
「騎士の位を返そうかと……」
「そんな深刻にならないでください!
僕は騎士をやめてほしいなんて思っていませんし、実際何の被害もありませんし」
「それはアラミレーテ様が対処なさったからです。
それに、何か、がないようにいるのが我々なのに」
ああああ、元気づけようと思っているのになぜかより落ち込んじゃった。ど、どうしよう。隣にいるシントに助けを求めるも無視するし! 今回はたまたま僕が反応できただけなのに。
「あの、本当にやめてください……。
僕よりも皆さんの方がお強いのですから」
「いえ、それすらもどうか。
あのように向かってくるものの力を利用して優位に立てる判断力は優れています。
……、アラミレーテ様はどうして剣ではなくナイフを持たれているのですか?
剣を持たれたらここにいるどの護衛騎士も優れた騎士になれる可能性を秘められているのに」
ああ、まあ可能性はあると思えるかもね、うん。隣からなんかくく、と笑い声聞こえるんですけど。確かにシントは知っているだろうよ、僕がいかに剣を扱えないか。なんでナイフが扱えるのか不思議なくらいだよ、ええ。
「あの?」
「アランは、剣を見事に扱えないんだよ。
僕と一緒に剣の訓練をしたんだけどね、才能がある魔法に時間を使った方が良いでしょう、って」
「シント、殿下、笑い堪えられていないからね」
「ごめんごめん、だって」
シントの場合はラルヘを知っているから余計におかしいんだろうけど、やっぱりなんかいやだ。
「あんなにナイフを見事に扱えるのに、ですか?」
「ええ、そうです」
もう知らない。子供っぽい態度ってわかってはいるけど、むすっとするのは許してほしい。これは彼らが悪いからね。
「こんなところで何をしている」
騎士たちが未だに本当に? という顔をしている中、低い声が響く。驚いてそっちを見るとダブルク様。なんだか怒っている?
「アラミレーテ殿を守れなくて、そのうえで貴殿らはここで何をしている?
どうしてさらにアラミレーテ殿に迷惑を掛けているんだい?」
ひっとひきつった声を出した騎士さん。気持ちはすごく分かります。正直怒られていない僕も結構怖いです。
「も、申し訳」
「言い訳は向こうで聞こうか。
申し訳ございませんでした、シフォベント殿下、アラミレーテ殿。
ゆっくり休まれてください」
あああ、あっという間にいってしまった。なんだか、ダブルク様最強?