87
すみません、80話がぬけていました…。
挿入したため、これ以降87話まで1話ずつズレております。
「本当にすごいね……」
とってくれと言わんばかりに宝石が露出している。それに澄んでいるのに濃い色で一目で質の良さがわかる。とれる、とは言っていたけれどここまでとは。
「え、なんで……?」
「どうかしたのですか?」
「あ、いえ。
最近来ていなかったとはいえ、こんな状況になっているとは思わなくて。
以前とっていたものより量も質もすごい……」
あれ、どうやらグリーサカ様にとってもこの状況は意外だったみたいだ。一緒についてきている先ほどカルーと呼ばれていた人も驚いた顔しているから、やっぱりこの状況は驚くものなのか。
「きっと、お二人にとってもらいたいのでしょうね」
そういうと、カルーから受け取った道具をそれぞれに持たせてくれる。宝石ってこういうのでとるんだ。道具一つでもずっしりと重い。そしてグリーサカ様が慣れた手つきでそのうちの一つを早速採取する。とるときのコツを僕らに話しながらも、その手元は安定している。
「すごい、こんなに取れやすいのは初めてだ。
あ、どうぞ。
お好きなものをとってください」
「だが、これは侯爵家所有のものだろう?
本当にとってしまっていいのか?」
「あはは、父上と姉上には内緒ですよ?」
「内緒、ですね。
ありがとうございます」
内緒で宝石をとる、それがなんだかおもしろくてついつい笑みがこぼれちゃった。そして僕らは言葉に甘えて宝石の採掘を始めた。グリーサカ様の注意を頭に思い浮かべながら、決して宝石を傷つけることがないように進めていく。僕もシントも集中しているから、辺りにはカンカンカンという僕らが岩を打ち砕く音だけが聞こえる。これ、結構楽しい。
「お二人とも上手ですね。
それにとても慎重だ」
しばらくして、僕の手には大粒のサファイアと少し小さめのルビーがあった。これって同じ鉱山からとれるんだ? いや、でも今これだいぶ不思議な状況らしいし……。うん、考えない考えない。そして、シントの手にはゴールド。もう突っ込むまい。たとえその形が初めから妙に整っていたとしても突っ込まない、うん。
「この布にくるんでください」
渡された柔らかい布につつんで、と。
「それでは昼食を食べましょうか。
ちょうどいい場所があるのです」
荷物を再びカルーに持ってもらい、グリーサカ様についていく。結構疲れてきたし、おなかもすいてきた。ここからまた屋敷に戻って、リークアル嬢とともにかっちりとした昼食を避けられることがこんなにもありがたいことだったなんて……。
「歩かせてしまってすみません。
ここで食べたかったのです」
「わぁ!
すごいきれいだ……」
「でしょう!?」
すごい! 一面に広がるのは湖! 山の中でどうやってこんな湖ができたんだろう? 特にどこかに水源があるわけではなさそう。少し水位が低いみたいだから多少の雨は受けきれるのか。湖ももちろんきれいなんだけど、その周りに咲き乱れる花々もすごい。植物の生命力を感じる。
「さあ、お昼を食べましょう」
いつの間にか敷布を敷いてくれて、ご飯が食べられるように整っている。湖にばかり気を取られていて申し訳ない。
「こんなにきれいなことろがあるのですね」
「ええ。
実はここは家族のだれも知らない、僕の秘密の場所なのです」
「え!?
よかったのですか、そんなところに初対面の僕らを連れてきて……」
「ここまでついてきてくださったことが嬉しいのです。
ここはなかなか遠いでしょう?」
「確かに、遠いですが……」
「ふふ、なかなかいないのですよ?
文句も言わずここまでついてきてくださる方は。
一緒に裏山に登ったことがある人がそもそも少ないのですが」
まあ、確かに疲れた。でも最近は馬車に乗ってばかりだからいい運動だったよね。シントのほうを見るとたぶん同じことを考えているのだろう顔をしていた。
「アラン、昨日の今日でここまできて大丈夫?」
「え、それ今更聞く?」
違った。まさかの心配されていた。って、しまった。つい驚いて素で反応してしまった……。ちらり、とグリーサカ様のほうを見ると、ああああ、やっぱり驚いた顔している。




