86
すみません、80話がぬけていました…。
挿入したため、これ以降87話まで1話ずつズレております。
その日はそのまま薬を飲んで休んだため、屋敷の人とは顔を合わせずに済んだ。あまり体調がすぐれないときに、自分にいい感情を持っていない人に会いたくないからね。まあ、それでも使用人たちはとても丁寧にもてなしてくれたから、快適に過ごせたけれど。
「おはよう、アラン。
ゆっくり休めた?」
「おかげさまで。
シントは昨日の夕食、一緒に食べたの?」
「まあね。
あれだけわかりやすくアランを攻撃していたくせに、僕にはすり寄ってくるんだもの」
口にはしないけれど、思いっきり嫌そうな顔している。根がまっすぐな人間だからな、シントは。僕も正直あのご令嬢はいい感情を持てないから、同意しかない。
「アラン様、シフォベント殿下、そろそろ食堂の方へ向かいませんと」
「ああ、そうだね」
しまった、しまった。準備はとうに終わっていたのにゆっくりしてしまった。このままだとまたリークアル嬢に何を言われるか。シントも同じことを思っていたのだろう、行こうか、と苦笑いで言われてしまった。
両親の前だからか、さすがにリークアル嬢に何も言われることなく無事に朝食を終える。今日はいつも通り視察にはついていかずに子息令嬢との交流を深める予定。さてさてどうやったらリークアル嬢を除いて、グリーサカ様だけと話せるかな。
「おはようございます、シフォベント殿下、アラミレーテ殿。
あの、本日は視察団についていかないのですよね?」
「おはよう、グリーサカ殿。
ええ、その予定です」
「それでしたら、一緒に裏山へ行きませんか?
ぜひ見せたいものがあるのです」
「まあ、裏山へ?
グリーサカ、あそこは殿下に勧めるところではないわ。
今日はゆっくりお茶でも飲みながらお話ししましょうよ」
おや、これは。相変わらずリークアル嬢は僕のことを無視しているみたいだし、ひとまず黙っていよう。
「そうだね……。
裏山、行ってみたいな。
案内してもらえるかい、グリーサカ殿。
ああ、リークアル嬢はどうぞお茶を楽しんでくれ。
せっかくだ、同い年の男三人で行ってこよう」
「ありがとうございます。
リクト、準備をお願い」
お、話がまとまったみたい。リークアル嬢が口をはさむ前にさっさと片付ける。うん、これが一番手っ取り早いね。姉のほうが強いのかなって思っていたけれど、グリーサカ様もなかなか強い。
そして一度部屋に戻って裏山を登るために動きやすい服装に着替える。サイガは昨日の今日で、と心配げだったけれど、今日をのがすと下手したらリークアル嬢抜きで話せないかもしれないからね。大丈夫、大丈夫と言って無理にできてきました。
「ゆっくりと行きたいので、昼食も用意してもらいました」
どうぞ、と差し出されたお弁当は少し重い。けれど、これでしばらく三人でゆっくり話せるってことだ。ありがとうございますと言って、受け取ると早速裏山に向けて出発することになった。
「裏山にも宝石が取れるところがあるのです。
道具はカルーに持たせますので、よければ自分でも取ってみませんか?」
「それは面白そうだね。
ぜひ」
「宝石が自分で?」
「ええ。
案内しますね」
やっぱりグリーサカ様は特に僕に関して悪い印象を持っているわけではなさそう。僕の質問にもにこやかに答えてくれる。そして裏山は本当に近いみたいで、話しているうちにすぐに入り口についた。
「ここは侯爵家所有の山で、ほかの者は入ってこられないので安心してください。
ひとまず宝石が取れるところまでご案内します」
「よくここで宝石をとっているの?」
「最近はあまり。
ここでとれる宝石はかなり上質で、よく姉上に取りに行かされたのです」
「侯爵家の嫡子が自ら?
それもまた領地の特色でしょうか」
「ふふ、そうですね。
小さい頃は親から注意されることがあったのですが、最近は全く。
とはいえ、正式に貴族の一員になったので他のことが忙しくてそもそも登っていないか……。
今日はお付き合いいただけて幸運です」
「いや、山は登ったことがないから楽しんでいるよ。
誘ってくれてありがとう」
迷いのない足取りは本当に慣れているようで、案内人がいらないというのもうなずける。きっと彼一人なら道具も自分でもってしまうんだろうな、と予想ができる。よかった、思ったよりも仲良くできそうだ。




