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「それで結局約束をしてしまったのですね」


「う、うん」


 行きの僕とは違ってあきれた、という意味でため息をつくのはサイガ。それは確実にお誘いがありますね、という。うん、わかっていた。でも今は何も考えたくない。疲れたんだ。あ、でも一つだけ気になることがあるんだ。


「なんで、ルルベ様も誘ったんだろう……」


「それは、一門の問題でしょう」


 うとうととし始めながらぽつりとつぶやいた言葉にすぐにサイガが答えてくれる。詳細は言っていないのに、どうしてわかるんだろう?


「シベフェルラ家、やその侯爵家は調和者としてなかなかに忠実ですからね」


 忠実、それは? そんなことを考えつつ、ついに僕は眠りに落ちていた。




 結局しっかり眠ってしまったらしい。次に目が覚めた時にはすでに外は暗くなっているようで、しっかりと厚手のカーテンが閉められていた。そして案の定体がだるい。いい加減この弱い体にいやになってくるよな。そろそろ強くなりたい。

 そんなことを考えつつ、体をおこす。


「あれ、目が覚めたの?」


 え⁉ 誰もいないと思っていただけれど! 声のする方を慌ててみてみるとそこにいたのは兄上。全然気が付かなかったよ……。


「兄上、いつからそこに……」


「うーん、さっきかな?

 よく眠っていたから」


「起こしてくださってもよかったのに」

 

 そんな僕の言葉にまさか、と返される。そこまで否定しなくてもいいのに。


「最近の話をいろいろと聞いてきたよ。

 僕も学園が始まったばかりだからと、報告を遠慮してくれてたみたい」


 報告って……。しかもいろいろっていったい何を聞いたんだろう。こう、なんというか兄上の笑顔が怖い。


「え、えっと?」


「ああ、でも少し熱が出ているね。

 後でゆっくり話をしようか。

 今はひとまずゆっくり眠るといいよ」


 いや、それは熱が下がったら何があるんだ。でも、今は兄上がものすごく優しい。なんならのど渇いている? と言って僕を助け起こして水を飲ませてくれた。そして今日はよく頑張ったねと言って頭をなででくれる。その優しさにむしろびくびくとしながら僕はまた眠りに落ちていった。




「それでゆっくり話を聞かせてもらおうか」


 さてさてしっかりと体調も元通り。そして今日は学園もお休み。つまり準備は万端。そんな本日、僕と兄上は向き合って座っています。前に言っていたように話を聞くつもりなのだろう。


「まずは……

 魔法学の授業は順調だそうだね。

 あまりにも優秀だと先生方が驚いているという話を聞いているよ」


 え、っと。これは褒められている。素直に喜んでいいやつ? 怒られると思って身構えていたから拍子抜けしてしまう。ひとまず僕はありがとうございますと返事する。あまりにも、という言葉が少しだけ気になったけれど、自分から突っ込むこともないでしょう。うん。


「それと、チェシフェラ侯爵家の人に屋敷に招待されたんだって?

 ルルベ侯爵の令嬢と一緒に」


 う、やっぱりそれも聞いたよね。やんわりと拒否できればよかったのに、それもうまくいかなかったし……。申し訳なさから思わずうつむいてしまう。


「怒ってないから、そんな顔をしないで」


 そんな僕の様子を見て、兄上が苦笑いしている。本当に怒ってはいないみたいでよかった。でも、じゃあなんでこの話を今僕にしたんだろう。


「今日僕がこの話をしたのはね、チェシフェラ侯爵子息が何を考えて行動したのか教えておこうと思ったんだ。

 もちろんこれはあくまで僕の考えだけれど」


 そういって兄上は紅茶を一口飲む。うーん、相変わらず様になるよな。じゃなくて、チェシフェラ様の考え。あんなに僕のことを観察していたことにも関係しているのかな。


「チェシフェラ家はシベフェルラ一門の家だ。

 それは知っているね」


 確認するような兄上の言葉にうなずく。それはさすがに知っている。


「シベフェルラ一門、特にシベフェルラ公爵家、そしてその一門の侯爵家は調和をつかさどっている。

 この調和はいろいろな意味を含むんだけれどね。

 詳しくは知らないんだけれど、きっと今回に関してはアランが話していた人に偏りがあったんじゃないかな?

 だからバランスを保つために屋敷に誘ったんだろう。

 まだ学園に入る年ではないとはいえ、侯爵のことだ。

 きっとしっかりと躾けているだろうし、変な提案でなければ受け入れていいよ。

 これはチェシフェラ家のことだけじゃなくて、ほかの二家も一緒だ」


 調和のため。そういえばどうして僕を屋敷に誘ったんだろうって聞いたときに一門の問題だろうって言っていたもんね。きっとそれもそういうことなんだろう。お茶会に出てもそういうことを考えなきゃいけないなんて大変だ。

 ひとまずうなずいていいとのことなので安心しました。これで思い当たる話はおしまい。思ったよりも大丈夫で安心した。


「で、ここからが本題なんだけれど」

 

 まだ何か話があったかな? そう思いながら兄上の方を見ると、見たことがないくらい冷たい笑みを浮かべている。いやいやいや。この一瞬で何があったの⁉


「シフォベント殿下のところに行った際に二人きりでよく何かをしているみたいじゃないか?

 いったい何をしているの?」


 嘘は許さないといった様子の圧力に震えながら、僕は必死に言い訳を考えることとなってしまった。



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