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 王都へ入るための門はとても混雑している。おそらく不当に入ってくる人を防ぐためにだろうけれど、門は本当に馬車一台が通れるほどしか幅がないよね。これはめちゃくちゃ混むよね……。横には小さな門もあって、徒歩の人はそこからでも入れるみたい。現に今も馬車から降りて歩いてそちらに向かっている人もいる。

 そして、我が家の馬車も入場待ちの列に並ぶかと思ったんだけれど、列からは横にずれていく。どこに向かうんだろう?


「イシュン兄上、馬車はどこに行くのですか?」


 列はあそこですよね? と指さすとああ、とうなずく。


「あそこは一般の入り口だからね。

 大手の商会と下級貴族の門で一つ、上級貴族の門で一つまた別にあるんだよ」


 それらは台数も多いからね、と付け足す。確かに僕たちのだけでも結構な台数だ。どうやら門を分けるのは貴族を待たせない、というのと一般門の混雑を避けるためでもあるらしい。


 貴族用の門に行くと、こちらは全然並んでいない。カーボ辺境伯領は名の通り国の端の方にあるため、ほかの家はだいたいもうついているとか……。まあ、カーボ辺境伯領よりも遠いところもあるんだけれどね。


「それにしても大きい壁ですね……」

 

 馬車の中からだからか、上はぎりぎり見えるほど壁は高い。それが横は視界いっぱいに広がっているのだ。


「そうだね。

 これは王都をぐるりと囲っているから」


 え⁉ もしかして、とは思っていたけれど本当に囲っているとは……。それは端が見えないはずだよ。ほわぁ、と放心しているうちに手続きは済んだようで、一度止まっていた馬車が動き出す。やっと王都に入るんだ。なんだか緊張する。


「ちょっと、ごめんね」


 どんな景色が広がっているんだろう、そうどきどきしているとひょいっとイシュン兄上が身を乗り出す。すると、窓にかかっていたカーテンを閉めてしまった。こちらの方を閉めると、続いてイシュン兄上の方も閉める。


「どうしてですか⁉」


 どんな景色が広がっているのか、楽しみにしていたのに。すぐにイシュン兄上に聞くと、貴族は平民にそうそう顔を見せないんだよ、と言われてしまいました。


「じゃあ、市場とかに行かないの?」


 にぎわっている市場にも顔をだしてみたい。そう思っていたのにこれは思わぬ誤算だ。


「そもそも買い物にあまり行かないからね。

 まあ、お忍びで行く人もいるけれど、それはまた別の話かな」


「あれ、ではなぜ今まではカーテンを閉めていなかったのですか?」


 確かにたまに閉めることはあったけれど、人が通るところでカーテン開けっ放しだったところもあったはず。


「だって、ずっと閉めっぱなしだと息苦しいだろう?」


 あ、確かにそうですね。イシュン兄上の言葉に何も返すことができませんでした。



 王都の貴族街、その我が家の屋敷の前で馬車が止まる。やっと到着!

 扉を開けられると、なぜかイシュン兄上にエスコートされて馬車を降りる。いや、もちろん一人で降りられたんだけれどね⁉


「おかえりなさいませ」


 扉から僕たちがいる馬車までずらりと使用人が2列に分かれて立っている。ぴしっと立って頭を下げているのもきれいにそろっていてすごい。じゃなくて、なんでこんなことに?


「父上、母上、長旅お疲れさまでした」


「久しいな、ヘーリ。

 息災か」


「はい。

 父上もお元気そうで何よりです」


 玄関ホールにて兄上と父上が言葉を交わすと、それを邪魔しないように父上のコートを受け取ったり、荷物を運び入れたりしている。さ、さすが。


「アランもよく来たね」


 にこっとほほ笑んで僕に話しかけてくれる。久しぶりの兄上だ! いつもは会うとぎゅっと抱きしめてくれるけれど、今日はしてくれないんだ。


「お久しぶりです、兄上」


 でも初めて会う使用人の前で兄上に抱き着くのも恥ずかしくて、僕もほほ笑んで返す。ああ、なんだか兄上が寂しそうにしているけどさ! あとで兄上の部屋にこっそり行こう。


「アラン様、お部屋にまいりましょう」


 挨拶を交わしてどうしたらいいのかと戸惑っていると、サイガが声をかけてくれる。


「サイガ、場所わかるの?」

 

 僕が生まれる前に来ていたとかならわからないけれど、ここ来たことないよね? すたすたと迷いなく歩いているのが不思議でそう尋ねると、もちろんでございます、と答えられてしまった。


「ここに来た事あったの?」


「いえ、初めて参りました。

 ですが、アラン様を案内するために屋敷図の把握はしておりますので」


 おお、つまり僕のために事前に覚えていてくれたってことだよね。本当に仕事ができる……。ちなみに今回、馬車は違っていたけれど、サイガもアベルも僕の専属ということで付いてきてくれているので心強いよね。


「お疲れでしょうから、お部屋につきましたらひとまずお休みください」


 2階に上がって大分奥の方へと進んでいく。そのうちの一室の扉を迷うことなく開ける、すると、領都の自室と似た景色が広がっていた。シンプルなデザインの本棚、机、ソファ、そういうものが置かれている部屋。あまり家具にこだわりはないけれど、ごてごてしたものが苦手、という話をしたときに屋敷の内装はシンプルで品がいいものでまとめられた。それがここにも反映されている?


「どうかされましたか?」


「いや、なんだか僕の部屋と似ているなって」


「ええ、領都のアラン様のお部屋を参考にしておりますので。

 こちらの使用人が、アラン様が慣れない王都でもくつろげるようにと用意したみたいですね」


 そう、だったんだ。それはなんだか僕のことを歓迎してくれている感じがしてうれしいな。


「後でお礼を言わないと」


「こちらからお伝えいたします」


 間髪入れずに言われるとは思わなかったよ。それなら、とひとまずサイガに頼んでおきました。



誤字報告ありがとうございます!!

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