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愛される王女の物語  作者: ててて
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月光

「お似合いですわ、シルフィオーネ様っ!この艶やかな青色のドレスをここまで着こなせるお姫様はいませんわっ」


そう意気込ませ、ドレスのレースを細かく整えているのはメイドのミーナ。


「えぇ、その通りでございます。そして、このプラチナにペリドットのティアラがまた…お美しいですわ」


そういいながら銀色の髪を結つけ、ティアラを着けてくれるマーサ。



遂に…この日が来てしまった…

マナーレッスンや国の歴史、貴族の名前や地位を覚えた私は遂に社交界へ出ることになった。


今までは病弱で屋敷から出られなかったのだが、少しずつ免疫を高めやっと社交界へ出られるようになった、というのが貴族への説明らしい。


それでも、好奇の目で沢山見られるだろう。そんな話をあっさり信じるか分からないし、第一に怪しすぎる。



はっきり言って気が重い。

そして尋常じゃないほど緊張している。


思わず下をむいてしまう。

群青のような青から少しずつ緑にグラデーションされた美しいドレス。

頭に輝くペリドットのティアラ。

私自身だけが浮きそう…



「シルフィオーネ様…ご緊張されているのですか?」


「…えぇ、そうね…」


「大丈夫ですよ、シルフィオーネ様。

この日まで貴方様が努力していらした所を見てきました。あなたの立ち振る舞いも、姿も、どこから見ても王女です。恥ずかしくなることなんてありません。

前を向いて堂々としていらしてください。」


マーサにそう言われて初めて鏡に映った自分を見た。


あの日、レオンお兄様とお庭で出会った日。

陛下に初めて会った日。

あの家から解放された日。

お兄様とお呼びした日。

お父様とお茶会をした日。


たくさんの事があった。


あの日々から少しずつ私は成長したのだろうか。


鏡に映る銀色の少し伸びて触り心地よくなった髪。青色の瞳。傷が癒えた白い肌。少しだけ伸びた気がする身長。後宮にいた頃より健康的になった頬。あの時より笑えるようになった表情。


変わった。変わることが出来た。


あの頃の私は部屋の隅で蹲っていた。


だけど、今は想像もつかないような姿で立っている。



あと少しだけ、変わろう。



顔を上げる。

自分に自信を。


そして…


コンコン


「はい」


扉が開けば黒い正装に身を包んだお兄様が入ってきた。


「…シルフィ、すごく綺麗だ。

あぁ、可愛い…!!!!」


「お兄様…ありがとうございます。

お兄様もとてもかっこいいです。」


「…えっ、本当…?あ、ありがとう。

毎日正装しようかな…」


そう言って照れけさそうに頬をかく姿はとても可愛らしい。でも、キリッとした正装に青色のネクタイ、いつもより手が加えられた髪型のお兄様はとてもかっこよかった。



「レオン様、シルフィオーネ様の準備はまだ終わっておりませんっ!シルフィオーネ様も勝手に入室を許可しないで下さい!」


マーサに怒られてしまった。

レオンお兄様はごめん、と謝るとミーナから最後の仕上げの口紅を受け取る。


「シルフィ、じっとしていて」


私の顔を少し上に向かせると、端正な顔立ちのお兄様が目の前にいた。

真剣な表情で私の唇に口紅を塗る。


「はい、おしまい…とても綺麗だね、シルフィ」


この顔の近さで微笑まれると、ドキッと来てしまった。思わずたじろぎながらお礼を言う。


「さて…そろそろ、行こうか。お父様が痺れを切らしていると思うよ。本当は父上がここに来ようとしていたけれど、ニクロスが止めててね。変わりに私が来たんだ。」


そうお兄様が言うと、マーサとミーナはあぁと嘆息を漏らした。私は訳が分からないままお兄様の手に手を重ねる。マーサとミーナにお礼を言って部屋を出た。



お兄様は歩きながらずっと私のことを見ていた。何か変かなとお兄様を見ると目が合い、おもむろに立ち止まった。


「…シルフィオーネ、本当に綺麗だ。

………今日のお披露目パーティーには貴族もかなり呼んでいるし、挨拶に来る貴族もいると思う。その貴族たちに何か変な事を言われたり、嫌なことをされたら迷わず私に言うんだよ?ね?」


「え、と…はい。」


「いい子だね」


そう言って私の頭を人撫ですればまた歩き出す。正直、今、お兄様の顔は廊下の窓から差し込む月光の逆光によりあまり良く見えてなかったのだが笑ってなかったような……気のせい、よね。


コンコン


「父上、準備が整いました。」


その部屋は、今回お披露目パーティを開くホールの2階部分。螺旋階段の手前の部屋だ。


そこからお父様…陛下のお言葉を賜り、今回の主役である私の挨拶。そして螺旋階段を降りての入場により、パーティが始まるらしい。


お父様はニクロスと話していたみたいだが、すぐにこちらに目を向けた。そして椅子から立ち上がり歩み寄ってくる。


お父様も相も変わらず黒い髪に青い瞳で2児の父とは思えないほどに美しい。そして、黒い正装に身を包んだお父様は神秘的なほどにかっこよかった。


お父様は私から2歩ほど間をあけて、顎に手を挙げ、私を見る。そして、ニッと口角を上げた。


「俺の見定めは正しかったな。やはり紫よりも青だな。……よく似合っている」


今回のドレスとティアラもお父様がお選びになったみたいだ。いたく満足そうな表情をしている。


「ありがとうございます、お父様」


そう、お礼を言えばまたジッと私を見る。


「……まずくないか?これ」


「え。」


お父様が怪訝そうに眉を寄せるものだから思わず声が出てしまった。

何か、いけなかった?やはりお気に召さないものが………


「…ですよね」


え、何故お兄様も頷くのですか!?

先程似合うって…え?……


「……綺麗すぎる。こんなの貴族連中に見せたら格好の餌食だぞ。」


「…私もそう思います。…ここまで美しいと。それに可愛いですし。」


「ふむ……確かディムクロム公爵の所に同じぐらいのガキがいたな」


「あと、レスモンド伯爵家にも次男がちょうど同じ年頃かと」


この御二方はなんの話しをしていらっしゃるの?


振り向いて、ニクロスと隊隊長のハンスを見れば2人とも真顔で首を横に振っている。


放っておきましょう。とニクロスが口パクでしたのがわかった。


「…やはり、シルフィをパーティで1人にさせるのは絶対に阻止しよう。俺かレオンかハンスか、最悪の場合ニクロスが着こう。」


「…そうですね。その方がいいかと。」


お父様とお兄様のあいだで何か決まったみたいだが、任せることにした。



カチャと、ニクロスが懐中時計を確認する。


「陛下、阿呆なことを言ってないでください。お時間でございます。」


「……お前……チッ」


私は陛下のエスコートを受け、カーテンの前に立った。反対隣にはお兄様も立つ。


忘れていた緊張が再び戻ってきた。

鼓動が早く大きく感じるのを必死に深呼吸して落ち着かせる。


大丈夫、大丈夫。


私は今日も少し変わるんだ。


顔を上げて。

自分に自信を。


そして


「シルフィ、大丈夫だ。私たちがついている。」


「シルフィが今まで頑張ってきたのを堂々と見せればいいんだよ」


家族の愛を感じて。









カーテンが開かれた。










その日、カスティリア王国に月の姫と形容されるような美しい姫が現れた。


姫は、硝子のように滑らかで繊細な立ち振る舞いをし、そこにいた幾人もの人々を虜にした。


だが、隣に立つ二人の男は隠すことも無く険悪な瞳で睨むため誰も近づきすぎるものはいなかった。

それに貴族達も、この姫に近づきすぎてはならないことを理解していた。


フェニエア伯爵家が長女の犯した罪を背負い残酷な結末を迎えたからだ。





あぁ、今宵は月の光を感じながら大人しくワインを飲んでいよう。


ホールで青いドレスを翻し、軽やかに踊る彼女を見ながら。

なんて幸せそうなんだろうか。




目が奪われる。


あまりにも月が綺麗だったから



完結です。

初めてのなろうさんの投稿でしたが、お付き合いくださりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結おめでとうございます!! 続きがもっともっと読みたいです!!! 是非続きも書いて欲しいです!
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