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ムネヨシ  作者: 大原英一
第二章 大川と舞っちんぐ
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パーティーのメンバー

「派遣会社の営業担当に、どうして尾白川行きなんてプライベートなことを伝えるのよ。妻のアタシですら知らなかったっていうのに!」

 真紀は口元を震わせて言った。

 たしかに、おかしな話だった。おまけに剛流さんは美人だから、あらぬ疑いを持たれても仕方ない部分がある。美人もラクじゃない。

「まあ奥さん、落ち着いてください。夫の吉宗さんがいなくなったことに関しては、事件と事故の両方の可能性が考えられます」

 佐久間刑事が口を挿んだ。

「とりあえず、山梨県警に捜索の応援要請を出します。奥さん、あなたは私と一緒に尾白川へ行きましょう。旦那さんを探すんです」

「……ええ、わかりました」

 真紀もどうやら落ち着いたらしい。刑事の説得力すげー、と大川は思った。


「あの」

 沈黙を破ったのは剛流さんだった。

「私たちもご一緒して、よろしいですか」

「たち? ちょっと剛流さん……」

 大川が慌てて言った。パーティーのメンバーにカウントされていそうだったからだ。

「貴女、どうしてそこまで」

 真紀が怪訝そうな顔をした。ほうら、せっかく収まったってのに……。

「鬼怒川さんに無事戻って私との関係を説明してもらわないと。あくまでビジネス上の関係だってことを」

 剛流さんは顔を紅潮させて言った。真紀に言われっぱなしでキレたのかもしれない。

「私は賛成です」

 佐久間刑事が意外なことを言い出した。

「捜索する人数は多いほうがいい。それも知人のかたなら尚いい」

 えーと、これはパーティーに参加確定ってことでよろしいですか。大川が不安げな視線を竹井部長に送った。


 すると部長はコホン、とひとつ咳をして言った。

「大川くん、ぜひ協力してあげてください。有給(休暇)をつかってもらって、かまわないから」

「でもシフトは、どうするんです?」

 たしかに、吉宗がいないうえに大川までが現場からぬけたらヤバいことになる。だが竹井部長は動じなかった。

「私が有事町の現場に入る。弊社で起きた問題だ、それくらいのことはする」



 そんなわけで、かなりムチャ振り感満載ではあるが、大川は剛流さんの付き添いで尾白川渓谷へ行くことになった。

 これが彼女とふたりきりなら多少テンションも上がろうというものだが、今回は吉宗の妻真紀とあと刑事さんも一緒だ。むしろ主役は彼らのほうだ。

 一〇月一日水曜日に四人で東京を出発した。佐久間刑事の運転する車で、である。正直めっちゃ快適だった。だが遊びに行くわけではない。

 吉宗の失踪からすでに四日が経過していたが、尾白川の件以外に手がかりらしいものは何も出なかった。真紀は傍から見ても憔悴しきっている様子で、気の毒だった。

 大川は水木金と有給休暇をもらい、土日と併せて五連休だ。尾白川での捜索がどれだけのものになるかわからないが、最長でも日曜日までには東京へ帰らないといけない。逆にいえば日曜日までは捜索に付き合わされる可能性があった。


 急な話で旅の準備もろくにできなかったが、とりあえず一週間分の着替えだけ持って大川は出かけた。

 渓谷はもちろん野山へ分け入るケースも想定して、くれぐれも軽装は控えるようにと言われていた。が、九月もまだ終わったばかりで、冬物の支度など当然できていなかった。大川にできることといったら、せいぜいウィンドブレーカーと内に着込めるトレーナーの類いを用意するのが関の山だった。

 いっぽう剛流さんは、これから登山ですかくらいの重装備であらわれた。なんかホーキンスのトレッキング・シューズみたいのすら履いている。

 アウトドアが趣味なのか、それとも天然なのか……。


 佐久間刑事の、つーか警察の計らいで、大川たちは尾白川渓谷近くのけっこう立派なホテルに部屋を取ってもらった。

 大川は剛流さんと相部屋、というわけにはいかず、なぜか佐久間刑事と同室になった。現職の刑事と一緒に寝泊りできるなんて、考えようによっては贅沢なことかもしれない、となるたけポジティヴに大川はとらえた。

 女性陣(真紀と剛流さん)は個別に部屋をあたえられた。まあ、このふたりを同室にするのはちょっと無理があるだろう。

 べつに尾白川まで来ていがみ合っているわけではないのだが、真紀の精神状態を考えると、やはり気がねない環境を用意してあげるのがいい。


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