二日目(後編)
誤字脱字等多くて申し訳ありません。
改めて迷宮の入り口を封鎖した私は、昼食をテーブルに並べています。今日の昼食は、干し肉と野菜のスープとパンです。あからさまに嫌そうな顔をするご主人様にショックを隠しきれない私はご主人様の好みを聞いてみました。
どうやら元いた世界の食べ物と似てるのに違う味のする食べ物に違和感を感じているそうです。まあ、当然ですよね。甘い果物と見た目が同じ食べ物が、肉類と一緒になって温かいスープに浮かんでたりしたら食欲を無くしますよね。
ちなみに先ほどの奴隷の処遇については、すぐに売ることを決められました。不思議な事に、ご主人様のいた世界では奴隷制度はずっと昔に廃止されていたそうなので、奴隷とかは馴染めないそうです。ですが、同族の奴隷なのに、解放せずに積極的に売る事を決められるあたりは、流石は人間と言うべきでしょう。
かわいそうとか以前に、値段ばかり気にしている様子からすると、ご主人様は元商人かなにかだったのでしょうか?
「魔界でも人間界でもほとんど同じですが、人間の場合は、男が40万G、女が30万G程で売れると思います。もちろん能力や年齢によって値段は異なります。エルフやドワーフは利用価値が高いのでもっと高いです。獣人はちょっと特殊で、人間界での価値は、低いのですが、魔界での価値は人間より高いです。まあ、獣人はいろんなのがいますので一概には言えませんが。」
「女のほうが安いのか・・・。」
当然のように値段に食いつきつつ、納得していないご様子。
「奴隷は基本的に労働をさせる対象なので、おかしいところはないと思います。耐久性を考えるともう少し男性のほうが値段が高くなりそうですが。」
「それより獣人の奴隷とか話をしてみたいな。魔界に輸出とかしたら儲かるかな?」
やっぱりご主人様はちょっと変わっておられる方みたいです。人間は差別意識が強く、エルフとドワーフ以外の種族は差別を受けているらしいのですが、ご主人様は違うみたいです。
そうそう、所望の魔法使い系の職業は、才能がなければつける職業は限られてしまいます。基本誰でもなれる、幻術魔法士、破壊魔法士、変性魔法士。それなりに才能が必要な、召還魔法士、治癒魔法士、強化魔法士、暗黒魔法士等があります。
昨日の、双子の姉が破壊で妹が強化でしょう。ご主人様が望まれているのは召還魔法士でした。召還といっても異世界の扉を開き、魔物とかを呼び出して従えたり、作り出したり、元の世界に戻したり。オーブを使って召還した魔物との違いは取引出来ることぐらいで、迷宮管理者にとっては価値の無い職業と言われてますが、ご主人様は元の世界にお帰りになりたい為、召還魔法士を望んでおられます。
実際に帰ることが出来るのかわかりませんが、もし帰れるのなら一緒に私も飛び込んでみようと思います。もちろん、秘密にしていますが……。たとえ、帰れなくてもオーブの魔力を使って使い魔を作って売りさばこうとか考えておられるようです。実際に売れる使い魔を作るのは大変らしいですが、自信がおありのようです。
次は迷宮の改造を行います、一階層増やして地下三階に合わせ鏡のような階層を持ってきて、従来の地下一階を現在の地下二階へ、新たに生まれた地下一階層は魔物を見てから決めようと仰いました。魔物のカタログを見ながら今後の計画を立てます。
「使える魔物が少なすぎるのだけど・・・。」
「今は、ご主人様は迷宮管理者(仮)ですから。使い魔を一体買うことで迷宮管理者(見習い)になれます。見習いになるだけで急に扱える魔物が増えるので、迷宮管理が楽になると思います。あと、使い魔をお買い上げ頂いたら、すぐに次の使い魔がレンタルで来ます。売り込み目的ですが。」
これは私を買って欲しいからではなく、ご主人様の為を思っての発言でした。
「仮免だったのか・・・。それにしても、使い魔を迷宮管理センターから購入することでランクアップって。しかも、女性の容姿の魔物はその能力にかかわらず、見習いより上にならないと扱えないあたりが怪しいな。エサをぶら下げているような。」
お金に関わることには急に鋭くなるご主人様です。
ちなみに、そこはご主人様の場合は女性の容姿の魔物であるだけで、正確には管理者の異性の魔物といいなおしておきましょう。やっぱり、商人系の職業が似合ってます。優しそうな外見と口調を持ちながら、陰険な集金システムを構築しそうです。迷宮管理センターの幹部にもこういうひといましたし。
「迷宮管理センターって営利目的の団体?」
ほら、もう気づかれてしまいました。
「残念ながら、今はお話しするわけにはいきません。私をお買い上げ頂いた暁には、すべてお話します。申し訳ありません。」
私自身、事務作業をしていて気がつきました。サポートを謳っておきながら初心者に厳しく、お金を落とす管理者に様々な特典を与えるシステム。それもオーブは破壊されてもすぐに新しく生まれる特徴から、こういったシステムにしたのでしょう。
下級魔族とか弱い連中に管理者の座に居座られるよりは、さっさと消えて頂いて、上級魔族様の為の席を開けろということでもあります。上級魔族様の場合、管理者になられたばかりの状態でも、ベテラン冒険者相手に戦えます。そしてすぐに稼ぎ出すからです。
「まずは、リリを買い取らないとな。よく働いてくれるし。てか、見習いにならないとまともな稼ぎ方が出来ないし。」
ありがたいお言葉に涙が出そうです。
「私の値段は現在200万Gとなっています。なかなか買い手がつかない為、値が下がっています。ちなみにアリス型だと1000万G以上します。」
「最初にレンタルでアリス来たら積みだな。」
「初心者の場合、上級魔族様の管理者の所しかアリス型は来ませんよ。上級魔族様なら迷宮なんて無くても、お一人で街を滅ぼしたり出来るので、すぐにお金を稼ぎますし。管理者になる前から十分な資金をもってますし。」
既にお金があるところに、お金は集まるものです。身一つで異世界から来られたご主人様の場合、辛い戦いになりますね。
「我々のライバルである、龍族の作った迷宮支援組合も似たようなシステムをとっています。扱う商品も似たようなのばかりです。」
「商品を真似るのは当然だね。それよりオーブを複数持つことはできるの?」
意外なことを言い始めました。そんな事を考えるのは使い魔を数十人購入した魔王クラスの方々くらいです。
「迷宮支援組合に所属している管理者からなら奪っても大丈夫です。ただ、龍族は手ごわいです。自力で管理者のいないオーブを見つけるのは不可能かと思います。あとオーブの機能は別のオーブにコピーできるので、オーブさえ揃えていたら、幾つもの迷宮を管理出来ます。」
「龍族の管理者に攻撃を受ける可能性もあるのか・・・。」
たしかに、人間の管理者の場合は、大いにあるかもしれません。
「一度、迷宮管理センターへ行ってみますか?」
「魔族のいっぱいいる所に人間が行っても大丈夫なの?」
大変、不安がられています、無理もありません、明確に敵対している種族ですし。
「管理者同士は対等な存在であり、所属を同じくする管理者は争ってはいけない規約があるので、大丈夫です。」
私とご主人様は、一人の奴隷を連れて迷宮管理センターへと飛びます。
白一色に統一された内装の迷宮管理センター、懐かしい感じがします。魔族の容姿ですが、人間であるご主人様からすると、人間に翼と角と尻尾が生えている感じでしょう。翼と角と尻尾の形は様々で、鳥の翼を黒くしたものや龍と同じ翼、まっすぐの角や羊の角やら、尻尾も様々な種類があります。
「これなら角とか尻尾とか適当に作って装備してくれば良かった。」
変装を考えているご主人様ですが、実際は無駄です。人間以外の種族は動物や魔物を含め、相手の力量や魔力を感じ取れるからです。
あ、あの奴隷は30万Gで売れていきました、もっともすぐに40万Gあたりで売りに出されますが。
「お前が人間の管理者か?」
私達が振り向くと、私にとって一番会いたくない魔族に出会ってしまいました。
私の4番目のご主人様、出会って数秒で解雇された過去が蘇ります、たしか魔王ベルゴ様。ご主人様の三倍近い大きさの筋肉質な体つきで、牛のような角に牙もありとても恐ろしいお顔をしています、黒い鳥のような翼はいつ見ても似合っていません。
あ、後ろに私を男の子にしたような容姿の使い魔、ルルがいます。ご主人様に可愛がって頂いているのでしょう、身なりなど綺麗にしています。やっぱり、いつ見てもルルは可愛いですね。私の次ぐらいに、可愛いです。
「お初にお目にかかります。新しく迷宮管理者になった。人間種族のミストといいます。今後ともよろしくお願いします。」
丁寧にベルゴ様に挨拶するご主人様、あれ?オーブに記録されたお名前はもっと違った名前だったはずです。
「ベルゴ・ド・ミゴールだ。ミスト、よろしく頼む。」
「本日は、どういったご用件で。いらっしゃったんですか?私は迷宮管理センターを一度見に来たのですが。」
正直、もうこの場を離れたいのに、ご主人様は、世間話でも始めるおつもりなのでしょうか?見るものすべてを威圧するような雰囲気が苦手です。
「こんなとこを見ても、面白いものはないぞ。それよりも戦いだな。やはりこの手で人間供を屠ってこそだ。いや、ミストも人間だったか悪かった。」
ああ、あんな魔族でも少しは気を使うのですね、意外です。
「お気になさらずに、もはや私は魔族側の人間です。ついさっきも人間の奴隷を売りましたし。」
「そうだ、ミストよ。種族を問わず、男の奴隷を手に入れたら教えてくれ。俺様が買い取ってやろう。」
少し考えてから、ご主人様はとんでもないことを口にしはじめました。
「じつはご相談があるのです。私に200万G投資して頂けませんか?男性の奴隷を手に入れたらすべて、ベルゴ様の元にお届けします。一年後に、250万Gそれまでお渡しした奴隷の金額を差し引いた残りをお支払いします。それが出来なかった場合は、届けた奴隷の数に関係なく私がベルゴ様の奴隷になりましょう。いかがでしょうか?」
淡々と語るご主人様を目を細めながら見下ろすベルゴ様。
「いいだろう。お前は面白い人間だ。200万Gか、たったそれだけでいいのか?お前にはそれ以上の価値がありそうだ。」
「ありがとうございます。200万Gで十分でございます。」
大笑いするベルゴ様を見上げるご主人様、私にはご主人様が既存の種族とはまったく異なる生物に見えてきました。
興味なさそうにしていたルルも、私のご主人様を変な生物を見るかのような目で見ています。ちょっと、流石にルルでも許しませんよ。
「ここで待っていろ。すぐに金を持ってくる。」
機嫌を良くしたベルゴ様とそれに続くルルはいそいそとどこかへ歩いていきました。
「こえぇ。マジ化け物だよ。喰われるかと思った。夜トイレに行ける自信が無いよ。」
心底恐ろしそうにするご主人様にちょっと安心しました。やっぱり、怖いですよね。
「急にどうしたんですか?もう、なんでそんなお金が必要なんですか?」
流石に、私も強い口調で聞いてしまいました。大切なご主人様が売られていくような気がしたので。
「リリを買って、仮免卒業だ。100年も頑張ったリリへのごほうびだよ。ついでに扱える魔物の種類が増えれば十分稼げる。」
正直な所、私を買うためのお金とは思っていませんでした。私は、嬉しいよりも先に頭に血が登っていき。
「ご自分を大切にしてください!ご主人様あっての私です!それに頑張ったってまだ昨日お会いしたばっかりじゃないですか!」
声を荒らげる私に、ご主人様は得意げになっています。
「どうせ冒険者に負ければ死ぬんだ、問題無い。それに召還士になれれば使い魔でも稼げる。」
どうやら勝算があるようです。
それにしても、だんだん冷静になってきたら、すごく恥ずかしいやら嬉しいやら。ついに、私もご主人様の物に。この身も心もご主人様に捧げる日がこようとは。
「待たせたな。約束の金だ。それとこれを渡しておこう。」
いつの間にかベルゴ様が来て、お金の入った袋とネックレスを渡します。
「これは何ですか?」
お金を確認しながらネックレスの事を聞く、ご主人様。あ、お金の入った袋を私に、差し出します。そういえば、お金の数え方は知らないはずですよね。
「それはたとえ死んでも、それを無かった事にして登録した場所(俺様の迷宮の監視室)に帰還できるアイテムだ。発動すればオーブの魔力を大量に消費するけどな。一年後までに金を用意できたら、それもくれてやる。」
ベルゴ様はそう告げると満足げに、去っていきました。
その後姿を青ざめた表情で見る、ご主人様。死が逃避では無くなりましたね。
「まだだ、まだ、召還士がのこっている・・・。」
力なく、自分に言い聞かせようとするご主人様。先ほどの凛々しいお姿はどこに行ったのでしょうか?
次に、いよいよ私が貰われて行くときが来ました。ええっと、何か事務手続きをしていたみたいですが、ボーっとしていて全然覚えていません。多分、顔を真っ赤にして俯いていたんだと思います。
印象に残っているのは、私を御作りになった上級魔族様がいらっしゃって、ご主人様とお話をしているようでした。創造主様は、涙を流してご主人様にお礼を言っていたり、新たな時代の扉がどうとか。あ、あと、ご主人様がツインテールがどうとかツンデレがどうとか言ってお金を受け取っていたようです。
創造主様、さようなら、リリは貰われていきます。長い間お世話になりました。私を生んでくれたご恩は一生忘れません。
こうして迷宮管理センターを後にした私達は、ご主人様と私の迷宮に戻りました。さあ、ご主人様の転職を行いましょう。転職は簡単です。オーブに手をかざしてご主人様の能力を読み取らせます。
色違いのオーブが様々な色を放ち、それを神妙に見つめるご主人様。しばらく経つとモニターに転職可能な職業が並んでいきます。
まず戦士系は、剣士や騎士の適正を持ってるみたいです。やりましたね、剣士になれば火炎斬り使えますね。多分、あまり強くはありませんが。それより、騎士って響きが格好いいですよね。
次に、商人系は、すごい全部なれるんじゃ。特別に奴隷商人のすごい才能を持っているみたいです。やっぱり、あの娘を商品としか見てなかったですものね。
次にスカウト系は、忍者の適正があるみたいです。やったー。私の職業と一緒ですよ。おそろいで忍者なりましょうよ。まあ、黒髪、黒瞳だったら誰でもなれるそうですが。
そして、魔法系は、幻術魔法士のみでした。……私でも基本の幻術、破壊、変性の適正あったのに。
幻術士って誰からも見向きもされない残念な職業です。だって、魔法で幻覚とか幻聴とかを感じさせる魔法ですよ。自分よりずっと強い相手にはまったく効果ないですし、幻術使うくらいなら弱い破壊魔法撃ったほうがましなレベルです。しかも、たいした効果も無い幻術をあらかじめ自分で作らないといけないのです。
面倒な上魔力も消費して効果も無いなんて。職業は幻術士になってしまいました。がっかりした様子ですが、大丈夫です。いつか元いた場所へ帰れますよ、きっと。それに帰れなくてもいいじゃないですか、私がついていますから。
「やっぱ男は強くないとね。ベルゴのやつも言ってたし。ちょっと剣の練習でもするよ。」
そういってオーブを操作し、適当にリザードマンを3体召還するご主人様。
迷宮のとある小部屋にてリザードマンと一対一で対峙するご主人様。ご主人様は、リザードマンの持ってた両手剣を手にします。相手のリザードマンは、ハルバードを手にしています。
ちょっと、トカゲ。危ないじゃないですか。トカゲは鉄の棒で充分です。両手剣を頭上高くに構え若干腰を落とすご主人様と鉄の棒を両手で正面に構えるリザードマン。流石、ご主人様の構えは威圧感がありますね、ベルゴ様すら小さく見えてしまいそうです。リザードマンは体を右にひねるようにして鉄の棒を右に構え、少しずつ近づいていきます。
この戦い、勝敗は一瞬で決まるでしょう。私の長年の経験がそういっています。実戦経験はあまりありませんが。
お互いの間合いになったその瞬間、先に動いたのはリザードマンでした。右に構えた鉄の棒を全力で振ります、少し遅れてご主人様も両手剣を振り下ろします。先にご主人様の両手剣がリザードマンの頭に当たり、リザードマンの硬い鱗が爆ぜて、まるで赤い花が咲いたかのように血が飛び散ります。両手剣が当たった瞬間、ご主人様はリザードマンを切り裂こうとさらに腰を落とします。でも最初に当たった所から両手剣は動きません。
リザードマンの鉄の棒がご主人様の左わき腹に当たり、ご主人様はその身体を弓なりにしならせ、鉄の棒で一回転しつつ宙を舞います。一瞬で興奮の醒めた私は、ご主人様を急いで寝室まで運びます。ベットに力なく横たわるご主人様、意識はあるようでしばらく一人にして欲しいと仰っています。
寝室を後にした私はリザードマンを肉塊へと変えようかと思いましたが、処遇はご主人様の手でされるのが良いと思い、リザードマン全員を監視室の近くに集めておきます。鉄の棒を持ったリザードマンは、恐怖で全身を震わせています。
両手剣を手渡したリザードマンが、私の前に立ち仲間の助命を願い出ますが、とりあえず肉塊にしておきました。
ショックが大きかったのかご主人様は、なかなか寝室から出てくる様子がありません。やはり、ご主人様を慰めるのは私しかいません。お先に、シャワーを頂いて、いつもよりも念入りに全身を洗い、最高の香水を使い、一番高級で綺麗な下着と服を身につけて、ご主人様の寝室のドアノブへ手をかけます。
ドアノブは自動で回り、ご主人様が出てこられます。思わず目が合ってしまいました、ご安心ください、リリのこの身も心もご主人様のものです。
「奥義が完成した、ついて来てくれ。」
突然そう仰る、ご主人様と供に私は歩きます。
左足を引きずりわき腹を押さえて歩くご主人様に、寄り添う私はご主人様の足となっています。ご主人様は、二体のリザードマンと一個の肉塊の前に立ち、詠唱を始めました。
「遙かなる深淵より来たりし灼熱の巨石よ我が敵を打ち砕けメテオストーム!」
リザードマンの遙か頭上に巨大な魔方陣が現れ、その魔方陣の中には赤熱した巨石が無数に存在しています。ゴゴゴゴゴと音を立て赤い尾を引き一斉に降り注ぐ隕石、周囲を赤一色で埋め尽くします。鉄の棒を持ったリザードマンは口から泡を吹いてひっくり返ります、もう一体のリザードマンはパニックになりながら右往左往しやがて足を縺れさせ転倒します。けたたましい音を立て床に落ち砕ける隕石、砕け散ると同時に炎を吐き出します。この光景を前に世界の終わりを感じずにはいられません。やがて魔方陣が消えて、迷宮の床を赤く染め上げた炎が少しずつ消えていきます。
「どうかな?我が奥義は?」
すっかり機嫌の治ったご主人様に私は言います。
「かっこよくて強そうな魔法です。幻術でなければ。」
すっかり地面を染め上げた炎が消えたそこには、泡を吹いて失神したリザードマンと転倒したままの姿で蹲り痙攣するリザードマンと一個の肉塊がありました。