学園生活の始まり
「お嬢様、起きてください。そろそろ支度の時間ですよ」
毎度毎度のことながら、フラムリナに起こされる。
社会人経験のある私からしたら、いつもの時間に勝手に目が覚めるのだけれど、私はあえて寝たふりをしている。
フラムリナに起こされるのを待っているのだ。
学園に入学する以前の話だけれど、一人で勝手に起きて支度を始めてしまうと、フラムリナは大層悲しそうな顔をしてしまうのだ。
言葉では、
「流石グリフォーラお嬢様です!」
と、言ってはくれるのだけれど、それはもう一目でわかるほど寂しそうにしていた。
だから私は起きずに、起こされるのを待っているのだ。
「おはよう、フラムリナ。今日も起こしてくれてありがとう」
「いえ、これが私の務めですから」
私の言葉にはにかんでいる表情が実にきゅーと!
思わずフラムリナの手を取って、ぐいっと引き寄せてしまった。
「……あ」
私の上に覆いかぶさるように倒れこむフラムリナ。
鼻が触れ合いそうなくらい顔が近づいて、赤く染まったフラムリナの顔の熱と息遣いが伝わってくる。
「……お嬢様」
潤んだ瞳で何かをねだるように私を見る。
私はフラムリナの腰に手をまわし、強く抱きしめた。
私と彼女だけの息遣いだけが聞こえる時間がしばらく続く。
「……そろそろ支度を始めなくてはいけませんね」
少し名残惜しそうではあるけれど、ツヤツヤした表情で起き上がり、私を引き起こす。
フラムリナ、私知ってるよ。
貴女がこれを見越して、私を少し早くに起こすことを……。
はあああああああああああああああ、くっそ可愛い!!!
健気かよ!
制服に着替えさせてもらい、女子寮の一階に併設されている食堂へと赴く。
朝食は、三つあるうちの一つを選んで食べる形式。
今日はハムエッグトーストセットにしよう。
私が食堂へと入った瞬間、それまで賑やかな声が聞こえていたのが、すうっと静かになっていく。
そして、視線が一斉に私に集まっている。
……帰ろうかな。
めっちゃ居心地悪いんご。
さしものワイ氏でも、こうあからさまに静まり返らると傷つくんご。
「おはようグリフォーラ」
どうしたものかと一瞬考えこんでいたけれど、すぐさま聞き覚えのある声が聞こえ、私の肩を叩いた。
「おはようアルキュリア」
「朝何するか決めた?」
あ~アルキュリアたそ~。
愛してるちゅっちゅー!
これで私は怖いものなしだ。
いいよこいよ、かかってこいよ。
神様だってぶん殴ってやらぁ!
そう思っていると、私に気づいたのだろう一人の女生徒がこちらにやって来た。
相変わらず食堂は静まり返ったままで、私達の一挙手一投足に注目が集まっている。
「おはよう」
「おはようございますレンティヌラ」
「王女様も大変ね?」
「まあ仕方ありませんわ」
お互い苦笑して見せる。
「あらグリフォーラ。もうお友達が出来たの? 私にも紹介してちょうだい?」
「そうね。こちらはレンティヌラ・ホワイトホース。昨日私が道に迷ってしまったところを助けてくれた方で、お友達になったの。レンティヌラ、こちらはアルキュリア・フォン・バスカー。私の小さな頃からの幼馴染なの」
「ただいまご紹介にあずかりました、私はレンティヌラ・ホワイトホースです。お会いできて光栄ですアルキュリア様」
少しぎこちなさはあるが、綺麗にカーテシーをするレンティヌラ。
「これはご丁寧に。初めまして、アルキュリア・フォン・バスカーです。……レンティヌラ……って呼ばせてもらうわね? 貴女もアルキュリアって呼んで欲しいわ。だってグリフォーラのお友達なのでしょう? だったら私ともお友達になってもらわなくちゃ」
レンティヌラのフルネームに"フォン"がついていない時点で平民だとわかっているはずだけれど、アルキュリアは嫌味なくそう言ってのけた。
こういう分け隔ての無い所は、彼女の良い所だ。
「……」
レンティヌラは私をじっと見る。
本当にそうして大丈夫? と目で訴えてきている。
「レンティヌラ、彼女は私の親友よ?」
それだけを言って、パチンとウインクしてみせると、レンティヌラはすぐに微笑んで、
「よろしくね、アルキュリア」
と、手を差し出した。
「ええ、こちらこそよろしくレンティヌラ」
二人はしっかりと握手を交わした。
「……あら?」
握手をしていたレンティヌラが、首を傾げて扉の方を見た。
釣られて私もアルキュリアもそちらを見ると……。
扉からプルプルと震えながら、こちらにちょっとだけ顔を出している、黒髪の小さな女生徒がいる。
今にも泣きそうな表情をしていた。
「あら、一夜さん。おはようございます」
それは昨日学園長室で出会ったさくら皇国からの留学生、響 一夜さんだった。
私と目が合った一夜さんは、慌てて私の前まで飛び出してきて、
「おっ! おっおおおは、おっおお……!」
口をパクパクさせて何かを言おうとしていた。
ぐっと握られた手を昨日みたいにまた優しく触れて、
「大丈夫。落ち着いて、ゆっくり、深呼吸して?」
昨日のように、すーはーと深呼吸して見せると、一夜さんも深呼吸をして、
「お、おはようご、ざいます、おっ王女様」
「はい、おはようございます。それから、グリフォーラと呼んでください」
「いいん……です……か?」
「ええ、私と一夜さんは、もうお友達ですから」
「おっお友達!」
緊張でがちがちだった一夜さんの顔が、ぱあっと笑顔になった。
「ねえアルキュリア」
「何かしらレンティヌラ」
「グリフォーラっていつもあんな感じなの?」
「貴女も心当たりがあるのね?」
「ええ、昨日ちょっと」
「以前はあんな風じゃなかったわ。真面目で少し頑ななところがあったかしら? 昔のグリフォーラも好きだったけれど、私は今の彼女の方がずっと好きよ」
「そう。以前の彼女がどうだったかは私は知らないけれど、素敵な人ね」
私が聞いてないと思ったのか、レンティヌラとアルキュリアがこそこそ喋っている。
ばっちり聞こえとるわい。
まあでも、今度は先程以上に力強く手を握っていることを見るに、何かわかり合える所があったんだろう。
……知らんけど。
食堂はかなり広く作られていて、私達が固まって食事をする分のテーブルの余裕はまだまだある。
しんと静まり返った食堂だったけれど、私達が朝食を食べ始める頃には少し賑やかさが戻って来ていた。
まぁ相変わらず私達に視線は集まっていたのだけれどね。
気の重い朝食が終わり、私達は揃って教室へと向かう。
私達は学習棟にある三階の一年一組の教室に入った。
学園長先生が言っていたから一夜さんと同じクラスなのは知っていたけれど、アルキュリアとレンティヌラも同じクラスだと知って、みんなで喜んだ。
「おはよう、グリフォーラ」
「王女様、おはようございます」
先に教室に入っていたブラッシカとすずしろが、揃って挨拶をしてくれた。
二人はもう既に仲良くなっているらしく、二人で何かを話していたようだ。
うひょー!
イケメンが二人並んでる尊い!
朝からええもん拝めたわ。
あー神様仏様感謝いたします。
殴ってやらぁなんて言ってしまって申し訳ありません。
許してクレメンス。
よし、これで天罰は落ちてこんやろ。
「……グリフォーラ、急に手を合わせてどうしたの?」
アルキュリアが首を傾げて私を不思議そうに見ていた。
やっべ!
無意識にリアルで拝んでたわ。
「……こほん。いえね? 私の知っている方々全員と同じクラスになれたのがとても嬉しくて、つい祈りを捧げそうになってしまいましたわ」
「もう、グリフォーラってば大げさね?」
「でも、そういう些細な事にも感動してしまえるなんて、素敵なことだと思うわ」
アルキュリアとレンティヌラが微笑んで、その横でふんふんと大きく頷いている一夜さん。
「一夜、もう王女様と仲良くなったのか? 意外……いや、王女様の優しさを鑑みると、当たり前の事なのかな? なんにせよ、少し安心したよ」
「し、心配してくれて、あ、ありがとうすずしろ君」
まだまだ緊張しすぎではあるのだけれど、一夜さんは話せるくらいにはなっている。
「すずしろさん、私の事はグリフォーラとお呼びください。ここでは王女ではなく、一学友として扱ってくださいな」
「はっ! 畏まり……いえ。わかった。そうさせてもらうよ、グリフォーラさん。お気遣い感謝する」
すずしろさんのこういう少し大仰な振る舞い、カッコいいわよねー。
ふへー、写真がだめなら絵に残して保管してー。
……いっそ私が描くか?
私達が教室に入って直ぐの所で立ち話をしていたせいで、教室に入ろうとしていた女生徒一人を堰き止めていたことに気づかなかった。
「ちょっと! 入り口でたむろしないで、さっさとどいてくださる?」
はっとして、私達は慌てて教室の奥に移動する。
不機嫌そうに教室に入って私達を睨みつける女生徒だったが、私と目があってビクッとする。
「こっこれは……。グリフォーラ王女殿下とは露知らず、大変ご無礼を働きました」
紫色のロングヘア―の女生徒が、慌てて頭を下げた。
「そんな、謝らないでください。実際たむろして邪魔だったことに間違いはありませんわ。謝るのなら、私の方です。申し訳ありませんでした」
「そっそんな! 殿下に謝られるなんて恐れ多い……」
「あの……私を王女ではなく、良ければ一学友として扱っていただけませんか?」
「……わっわかりま……わかったわ。えっと、私はレピスタ・フォン・ブッシュミルズ。よろしくね、グリフォーラ」
「改めましてグリフォーラ・フォン・アルボラリスです。こちらこそ」
照れ臭そうにそっぽを向くレピスタさんに、すっと手を出した。
「……ん」
少しためらいながらではあるけれど、私の手を取ってくれた。
照れ臭そうにはしているけれど、どこか嬉しそうにも見えるのだった。
レピスタ・フォン・ブッシュミルズ。
長い紫の髪の、負けず嫌いな女の子。
まだ登場していないけれど、生徒会長を攻略する時にライバルになる女の子。
会長を攻略していない時でも、定期テストや体育祭と言った定期行事の時には、必ず勝負を挑んでくるライバルキャラでもある。
ツンツンプリプリしている所がとても可愛らしい女の子。
あと、おっぱいがでっかい。
大事な事だからもう一回言うよ?
おっぱいがでっかい。
語感最高か?
足とかもムチっとしていて抱き心地がよさそう。
本人は気にしてるっぽいけど。
現れた瞬間視線がおっぱいに釘付けになりそうでやばかった。
カラーンカラーン、カラーンカラーン。
レピスタや他の同じクラスの生徒達にも挨拶をして回っていると、始業の鐘の音が学園中に響き渡る。
それと同時に教室のドアが開かれ、一人の男性が入って来た。
……でたわね。
「ほら席に座れー。出席をとるぞー」
教台に立ち、名簿を雑に放り投げる少し気だるげな先生。
「俺はカプシクム・フォン・ティーチャーズ。一組の担任だ、よろしく」
深緑の髪、眠たげな眼、気だるげな声。
男性なのにどこか艶っぽさを感じてしまい、女生徒達がざわついている。
「えーもう知っている事だろうが、このクラスには王女様がいる。……が、特別扱いはせん。一学生として扱うからそのつもりで。お前らも、一学生として接しろ」
今度は別の意味で教室がざわついた。
「カプシクム先生、お気遣い感謝いたしますわ」
「……ふっ」
私がお礼を言うと、ほんの少しだけ笑って踵を返し、黒板に連絡事項を書き始めた。
カプシクム・フォン・ティーチャーズ。
勿論、本来の乙女ゲーの攻略対象キャラの一人。
気だるげな態度から醸し出される色気で、女生徒にとんでもない人気の男性教師。
実際、乙女ゲーのファンタスティックガーデンで、かなりの人気があったキャラクター。
女好きを公言していて一見男子生徒から嫌われそうな人物だが、生徒一人一人をよく観察していて、大事に思っている。
何より、気だるそうな見た目とは裏腹に、子供を教え導く立場の大人としての責務を人一倍強く持っている熱い部分もあり、男子生徒達からの信頼も厚い。
このカプシクム先生ルートに突入すると、ライバルになってしまうのが幼馴染のアルキュリアである。
アルキュリアは先生に一目ぼれをしてしまうが、グリフォーラの内面に複雑な悩みがある事を察したカプシクム先生は、グリフォーラの良き相談相手になる。
アルキュリアとグリフォーラは、カプシクム先生との距離を詰めるために、お互いが切磋琢磨する……と言う王道の青春シナリオになっている。
幼馴染同士の正々堂々の戦いであるため、後味が悪くなるような事もなく、ルートの人気も高い。
だがアルキュリアたそは誰にも渡さんぞ!!!
だけどもしアルキュリアがカプシクム先生に実際に一目ぼれをしたと言うのなら、私は応援する所存だが、カプシクム先生の背中を蹴り飛ばすくらいはさせてもらおう。
きっとその時の私は、阿修羅すら凌駕する存在になれる事だろう。
と、思っていたのだけれど。
「え? カプシクム先生? うーん。素敵だとは思うけど、貴女の方がずっと素敵だもの」
少し恥ずかしそうに私を見ながらアルキュリアは、そう言ってくれた。
じゃあもう誰にも渡さんからな!!!!!
「それよりも! カプシクム先生とブラッシカが並んでると絵にならない? 最近はすずしろさんとブラッシカのペアもいいわね!」
わかる。
「わか……ごほん。そうね、確かに絵になると思うわ」
やべぇやべぇ、腐ってる部分がでろっと漏れるところだった。
……というかアルキュリアたそ、……腐ってるん?
釣られてお漏らししないように気を付けなくては……。
午前は主に自己紹介と、これからのカリキュラムの簡単な説明が行われただけで、本格的に授業が始まるのは明日からなのだそうだ。
昼食は学習棟に併設されている食堂で食べる。
今度はブラッシカとすずしろさんに、レピスタさんもグループになって一緒に取った。
私が食堂に入るとやっぱりしんと静まり返るのは、いじめられているわけではない事は理解しているけれど、居心地が悪かった。
まあそれはそれとして、仲良くなった人達と昼食をとると言う事は、やっぱり楽しかった。
午後からは剣術の講義を受けることになっている。
本来ならば、更衣室で乗馬の恰好に似たパンツスタイルの衣装に着替えるのだけれど、今日は簡単な講義しかしないそうで、制服姿のままで私達は校庭に集合している。
因みに、剣術の講義は他のクラスと合同で行われるそうだ。
「おらおらぁ! かかって来いやぁ! どいつもこいつも弱っちいなっ!」
赤い短髪の背の高い男子生徒が、木剣を持って暴れている。
最初はじゃれていたんだけれど、徐々に熱が入ってしまったようで、周りの男子生徒達も感化されて模擬戦のようになってしまっている。
さて、私はこのイベントを全力で回避したいと思っている。
「ふぅ。なあ王女様! あんた強いんだってな! 俺と勝負しようぜ!」
ほら来た。
「ごきげんよう。……えっと、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ああ? 俺を知らないのか!? ちっ、俺はダウクス。ダウクス・フォン・デュワーズだ!」
まぁ名前を聞かなくても知ってるんだけどね。
ダウクス・フォン・デュワーズ。
赤い短髪、鋭い目、大柄な体格の熱血漢。
優秀な騎士を輩出している名門、デュワーズ辺境伯の末っ子の男の子。
……なんだけど、登場してすぐの頃は、増長しているチンピラみたいになっている。
辺境伯の領地内では、兄達すら敵わないほどの剣術の腕前を持ってしまったがために、自分は最強だと疑わなくなってしまっているのだ。
顔は当然イケメン。
しっかりと筋肉がついた体は嘗め回して見ていたくなるのだけれど、私はちょっとこのキャラが苦手。
遠巻きに見ている分には、ご飯を三杯ほど食べられるくらいには格好いい。
あと、おバカ。
それはそれで可愛いんだけれど、関わったが最後、終始暑苦しい。
ライバルキャラの女の子は、ダウクスの幼馴染で彼と同じ二組に所属している。
まだ出会ってはいないけれど、ダウクスと接点を持たなくても関わるタイミングがあるので、できるだけこの不良はスルーしてしまいたい。
ダウクスルートに入る一つ目の条件が、この模擬戦の申し出を受ける時にでてくる選択肢。
「全力で戦う」
「相手に合わせて戦う」
「手を抜く」
この三つの内の、「全力で戦う」を選ぶこと。
実はグリフォーラは、めちゃくちゃ強い。
それはもうダウクスをぼっこぼこにして、鼻っ柱をへし折ってしまう程には。
ここでコテンパンにのされることで、自身が増長していたことに気づき、今までの行いを自ら反省して、真に強い騎士を目指すと言う物語。
グリフォーラと共に切磋琢磨して成長するスポコンシナリオになる。
ちなみに「相手に合わせて戦う」を選んだ場合、しつこく付きまとわれてしまうことになる。
何度も「今度は本気で戦え!」と所かまわず挑戦してくることになるのだ。
で、私は最後の選択肢、「手を抜く」を選びたいと思う。
この選択肢を選ぶと、何度か打ち合った後に手を抜かれていることに気づいたダウクスは、自身の腕がまだまだ未熟だったことに酷く落ち込み、反省して真面目に学生生活を送ることになる。
だけど、グリフォーラの強さに恐れ慄いてしまい、関わってこなくなるのだ。
ダウクスは不敵な笑みを浮かべて、私に木剣を放り投げてよこす。
「どうせ、家臣たちに手加減されて、お強いですねーってもて囃されただけだろう?」
グリフォーラがどうして、この模擬戦を受けなくてはいけないのか?
そう、ダウクスはグリフォーラの教育係を一生懸命務めてくれた者達の侮辱をするのだ。
だから、グリフォーラは引けなくなるのだ。
以前のグリフォーラだったら、ここで少しイラついているのだろうけれど、そこは中身はワイ氏。
木剣を触れて少しテンションが上がっていた。
木刀みたいに刀を模しているんじゃなくて、ちゃんと西洋の剣を模しているんだ。
あ、ずっしり重い。
でも両手持ちが出来るから、しっかり持てる。
私の意識が混ざった時から今まで一切鍛錬なんてしていなかったのだけれど、元々グリフォーラが頑張って鍛錬していた体だけあって、木剣の扱いはお手の物だった。
え、九頭龍閃とか出来るかな!?
いやいやそれより炎の呼吸でしょう!!
そんな事ばかり考えていた。
たぶんこれがまずかった……。
「じゃあいくぜっ!」
こちらに向かってくるダウクス。
私は遊び半分でこう言って地面を蹴った。
「炎の呼吸、一の型! 不知火!」
なーんてね!
あはははは!
ゴゥ!!
足元で火炎が爆発し、とんでもないスピードで加速し、振り下ろした木剣からはなぜか真っ赤な火炎が吹き上げて、木剣同士なのにどうしてかダウクスの木剣を綺麗に真っ二つにした後、消し炭にしてしまった。
「……」
……なんか炎出たんご。
冷汗がダラダラと溢れ出る。
え、グリフォーラネキ、こんなこと出来たんすか?
ゲームではこんな技なかったんすが。
先に言っといてもろていっすか?
心の中のグリフォーラネキが、ちょっと乙女がしちゃいけないような顔で驚いている気がする。
あ、ネキも知らんかったんすね。
……。
ヤバいですね!
ヤバいわよ!
構えを解いて、ゆっくりとみんなの方を振り返る。
「魔法かと思ったが、魔力の反応がなかった……。今のは、今のは何ですかグリフォーラ殿下!!!」
剣術の講師の男性が、血相を変えて近寄って来た。
実はこの世界、魔力は皆が持っているものだけれど、魔法は資格が無いと使ってはいけないのだ。
それは、グリフォーラも例外ではない。
魔術教師がいる場合、許可がある場所で練習することは可能ではあるのだが。
「今のは魔力を一切使っていませんので、魔法ではありませんわ。我々王族に代々伝わる剣術の秘奥です。昨今、周辺各国と良好な関係を築いてから、眼にする機会はなかったでしょうから、知らなくても無理はありませんね」
「そんなものがあるなんて……。殿下、拝見できて大変光栄です!」
んなもんねえよ!!!
嘘だよ!!!!
でも信じてもらえたので結果オーライ!
……パパン。
後の事は任せたんご。




