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 終戦後から始まった大田村の事業報告においては、進駐軍関係に納める青物野菜の契約農家に対して、全員の虫下し薬の使用と人糞の肥料としての使用を一切禁止したことを条件とした旨を話した。

これはほとんどの日本人が長期の人糞の肥料使用によって、体内に寄生虫が発生している状態で、進駐軍にとって考えられない程の不衛生を日本人全体が持っていると感じていることに我々以外が気づいていない現時点で最も進駐軍から信頼される食の供給者としての優位性を勝ち取ることに成功した所以であることを話した。

 ざわめきは驚きと共に、その点に注視を向けた俺に対しての賛同となった。細やかな正しい判断を持って進駐軍と誠実に対応しているから彼らからの信頼が重なって現在の大田村の地位が築き上げられていると。

 当然直に進駐軍の食堂に所属する人間には更にいくつもの衛生に関わる規則が厳格に守られていることを告げた。

 農業部門については大地主に対して荒れ地として放置されている土地に対する5年ほどの短期的土地借り受けを募集したところ、政府の土地政策の行方を睨んで当該地の不動産所有税免税を条件にほぼ無償で貸してくれる地主が予想以上多く、葉物野菜などの試験栽培を行ったり、来年早々の麦や蕎麦・大豆などの雑穀類等の植え付けが出来るよう圃場整備を行う事であり現在は赤字部門。

 但し土壌に詳しい人間と圃場整備の段取りが上手な人に予めの計画の手順と完成予想図を示してもらうひと手間を掛けることによって熟練してくれば一区画を50人のチームで短期間で効率よく圃場整備が整うことが予想されることを表明した。

 水産部門も人員増加に新しい漁網が増え定置網も行えるようになったこともあり漁獲量は大きく増える事になった結果、魚製品加工業も小屋を2棟も増やす盛況ぶりとなった事を報告した。

 原木・製材・建築部門も家屋建築材料の市場が一面の焼け野原ばかりの為、圧倒的に供給不足で高騰していたことを背景として多大な利益を上げていた。また、大工のような技能専門職は引く手あまたであり、その技能研修を目的とした簡易共同住宅建設や耐震家屋補強の部門は根強い人気を保っていた。もっとも、補強工事そのものはほとんど無償で行っていたため原木・製材部門の新規設備投資費用以外は利益を出せていなかった。

 そう、この大田村の外郭団体としての基本的方針として新規設備投資費用を賄える以外の利益は出さない方針が最初から意図されていた。これによって政府からの横やりを緩和させる意図があった。

 12月に入っては輸送・配送部門への仮雇用や他部門からの応援が増えているが、これは安全な食料品の宅配が今後の有力者の信頼獲得に繋がる切り札となることを表明すると、一時的な大きな前払いであり大赤字となり得る事案であるが、進駐軍の許可を取ってのことであり予想以上の結果をもたらしてくれる案件であると一任されることになった。

但しこのことは、昭和21年以降政府から目を付けられる大きな原因となるのだが、それはまた。


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