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第十五章 決断 一

第十四章で開かれかけた扉が、この「一」でついに開かれます。七日という沈黙の後、三成が下したのは、次郎兵衛たちの提案をそのまま受け入れる決断でした。ですが「ただし」という一言が示す通り、これは単純な譲歩ではありません。

「吹っ切れたような趣」という三成の変化は、これまで峻厳な忠義の人として描かれてきた彼の、新しい一面の始まりです。三成が提示する「三つの条件」が、次章にどんな意味を持ってくるのか——静かな緊張感のうちに幕を開ける場面です。

 三成からの返答は、それから七日後に届いた。


 次郎兵衛は、秀家と共に、再び佐和山城の一室を訪れた。三成は、前回と変わらぬ静けさで書見台に向かっていたが、その表情には、どこか吹っ切れたような趣があった。


「中納言様。先だっての件、お答え申し上げる」


 三成は、静かに、しかし力強く言葉を紡いだ。


「某は、隠退の道を受け入れる」


 次郎兵衛は、思わず息を詰めた。秀家もまた、驚きを隠せぬ様子で三成を見つめた。


「治部殿、それは――」


「ただし」


 三成は、鋭い眼差しを崩さぬまま、言葉を継いだ。


「無条件ではない。三つ、条件がある」


この場面で書きたかったのは、三成の決断を、敗北としてではなく、彼自身の選択として描くことでした。「某は、隠退の道を受け入れる」という一言に、これまで積み重ねてきた次郎兵衛との対話——特に「治部少輔様御一人が身を引かれることが、最も重い戦になる」という第十四章の言葉——が、確かに三成の中で結実したことを込めています。

「ただし、無条件ではない」という展開は、三成というキャラクターの矜持を最後まで損なわないための、大切な一線として書きました。ただ従うのではなく、自らの意志で条件を提示する——最後まで自分の意思で動く三成の姿を描きたかったのです。

その条件の中身は、次の「二」で明らかになります。三成が何を第一の条件に、そして何を最後の条件に選んだのか——そこに、この物語のもう一つのクライマックスが待っています。

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