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足して2つの高校生活  作者: 赤槻春来
12月.クリスマス(仮)
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22/51

クリスマスの準備



「お兄さん。大丈夫?」

 12月13日。

 俺はメアリー達の住む早乙女邸の玄関で、1人ぼーっとしていた。

 まぁメアリーが心配してくるのもわかる。きっと今の俺は悲しい顔をしているだろうから。

「大丈夫だよ、メアリー。もう12月だろ?ちょっとプレゼントについて考えててね…」

「プレゼント!?私も貰えるの!?」

「あぁ!流石に流行りの玩具おもちゃとかはわからないから買えないけどね」

 メアリーはプレゼントを貰えること自体が嬉しかったのか、俺の話を聞いていないようだったが…まぁ口からついて出た嘘だ。せめて現実にしてあげなきゃな。

 実際、クリスマスなんてさっき思い出しただけだしな…

 俺がそんなことを考えていると、いつから覗いていたのかこちらを見ていたヘンリーおじさんと目が合った。

「メアリー、まだ10日以上もあるのにあんなにはしゃいじゃって…まだまだ子供だなぁ…」

「いや、あっという間にすぎて行きますよ、10日くらい。…俺も真剣にプレゼント考えてあげないといけませんね」

「ま、はじめがあげたものならなんでも喜びそうだけどな。俺も仕事で世界を飛び回ってばかりでクリスマスなんて祝ってあげられなかったから」

「そう…なんですか…」

「ああ」

 ヘンリーおじさんはそう言いながら俺の隣に座ってきた。いや、わざわざ玄関に座る必要もないのに…

 ヘンリーおじさんは俺の顔をしばらく覗き込むと、不意に俺の肩を叩いてきた。

「はじめ。何かあったのか?俺でよければ話にのるぞ?」

 流石ヘンリーおじさん、と言ったところか。

 どうやら俺のことはお見通しらしい。

 俺は自分だけにとどめておくつもりだったが…ここで吐いたら少し、楽になれる気がした。

「…今日、早乙女先輩の誕生日なんです。それで、失踪してからちょうど1年。なんか毎年のようにここで誕生日祝ってたんでなんか、心にポッカリ穴が空いたみたいで…最近はもう大丈夫かななんて思ってましたけど、やっぱ結構キツいです」

「…」

 ヘンリーおじさんはそんな俺の話を聞くと、無言で俺の頭を撫でてきた。

「そうか。でも、それはあくまで『失踪』なんだろ?ならいつかまた会えるさ。きっとな」

「…だといいですね。俺もまた会えるように願っておきます」

「おう!ま、私も娘に会えたからな。失踪ではないけど」

「娘…?」

「そう、メアリーの姉だよ。ま、私が一方的に離婚を切り出したんだし娘に会えてもアイツに会う勇気は私にはないんだけどね」

 娘にメアリーの姉に離婚…?

 待て待て、ヘンリーおじさんとはそこそこの付き合いだがこんなこと初めて知ったぞ?

 今までシングルでメアリーを育ててきたのは知ってたけど、メアリーに姉がいたのは意外だ。ってかなんで世界中を飛び回るのに妹のほうを連れてるんだこの人…

「いつか話ができたらいいなとは思うよ。まぁアイツは再婚してるかもしれないけど」

「そう…なんですか…」

 ヘンリーおじさんは言うだけ言うと、立ち上がっていつのまにか静かになっていたリビングへと戻っていった。

 唐突な告白ではあったが、少なくとも俺はそんなヘンリーおじさんを見て、どこか心が軽くなった気がした。



ーーー



「義兄さん(おにい)さん!編み物を教えてください!」

 クリスマスも来週に迫った20日の金曜日。

 俺が今日の特売の品である国産牛肉を手に家へ帰ると、ドタドタという足音と共に椿ちゃんが玄関へとやってきた。

「編み物?なんで急に…って、愚問か。明へとクリスマスプレゼントだな?」

「その通りですよ義兄さん…!今年こそは!失敗せずに作ってみせます!」

 全身で頑張るアピールをしている椿ちゃん。

 たしかに去年はクッキーを作ると言って全部焦がしていたが…それでも明は喜んで食べてたけど。

 まぁ今じゃ俺のいないときに任せられるくらい料理は上達したしな。

 そういえば先月誕生日に送ったのは編み物セットだったし、きっとこのために欲しかったんだろうな。

「いや、意気込みはいいんだけどさ…俺も生まれてこの方編み物というものをやったことがなくてですね?教えられないよ?」

「またまたご謙遜を。義兄さんはいつもなんだかんだ言って完璧にこなしちゃうじゃないですか!」

 うん?椿ちゃんの中の俺ってどんだけ美化されてんの…たしかに好きなことはちょっと頑張ればこなせる自信はあるけどなんでもは無理だ。

 そもそも椿ちゃんがウチに来るようになった頃には苦手だった料理をはじめとした家事とか一通り楽しいと感じた後だったからな…

「どうしても明をマーk…明に私からプレゼントしたものを身につけてほしいんですけど…頼れる人が義兄さんしかいないんです!」

 う…そんな上目遣いてこっちを見るんじゃない!

 そんなことされたら兄として断りにくいじゃないか!

 俺は一瞬、流されないように首を振ると小さく息を吐いてから断るために口を開いた。

「わかったわかった。じゃあ俺も頑張るから、一緒に作るか?」

「…!はい!」

 妹には勝てなかったよ。うん。

 椿ちゃんは上機嫌で返事をすると、ものすごい勢いで部屋に戻っていった。

 あ…牛肉早く冷蔵庫に入れなきゃ…

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