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足して2つの高校生活  作者: 赤槻春来
11月.2人の誕生日
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21/51

弟達の誕生日




「はじめぇ…助けて…」

「ん?どした吉田。最近妙にやつれてる気がするけど…もしかしてそれとなんか関係ある?」

「さすがはじめ!我が言いたいことを瞬時に見通すとは…!」

「あ、うん。そういうのいいから」

 11月20日、朝。最近やつれ気味の吉田は俺の席に来るとそんなことを言い出した。

 俺としては亮と椿ちゃんの誕生日を明後日に控えているのでコイツの相談に対してあまり乗り気ではないが…まぁ話を聞いてやるだけ聞いてみることにした。

「で?何があった」

「…最近、響のアタックが強くなってきた」

「…」

「な、なぜ黙るのだ!」

「いや、あんな美女にアタックされるとかお前…ただの惚気だろ。それともなんだ?モテない俺に対する嫌味かなにかですか?」

 まぁ響ちゃんが吉田のこと好きすぎるのも知ってるし今更って感じなんだが…

「何を言うにのまえよ!我にとっては死活問題なのだぞ!」

「…おーい?中二病モードと素が混ざってるぞー?」

「ぇ…ぁ…ぅ、コホン。それはこの際どうでもよいのだ。うん。それよりもはじめぇ…我、これからどうすれば…」

「いや、どうすればって言われても…まだ吉田のその悩みとやらの根幹にも触れてないし」

 吉田は俺がそう言うと、今自分がどんな状況なのか中二病モード全開で話してきた。

 まぁ面倒くさいから完結にまとめると「最近(文化祭終わったあたりから)響ちゃんがまた一緒に風呂入ろうとか一緒に寝ようとか言ってきてなかなか1人になれる時間がない」とのこと。響ちゃんが小学校卒業するまではよくやっていたことらしいんだが中学に上がったと同時にキッパリなくなったとは聞いていたが…

「…響ももう今年で中学校卒業だし、これじゃまずいと思うんだ」

「最後の方だけ聞けばいい兄の話だな。まぁそもそもの前提を知ってるから否定せざるを得ないけど」

「中学入ってからしばらくは家でも我とあまり関わらないようにしていたんだけど…」

 うーん…多分その吉田が意図的に避けてたせいだと思うんだけどなぁ…今の響ちゃんの行動をその反動と考えるのが妥当か。

 ってか吉田は響ちゃんの通ってた中学がここだって何故気付かなかったんだ…

「ま、こればかりは響ちゃんに直接聞いてみるしかないでしょ。案外あっさり解決できるかもしれないし」

「そうか…わかった。試して見るとする!では、にのまえよ、さらばだ!」

 吉田はどこか清々しい表情をすると、そう叫びながら自分の席へと戻っていった。

 …直接聞く…ねぇ…あっ!自分で吉田にあんなこと言っといてなんだが俺も2人に直接何がほしいか聞けばよかったわ…帰ったら聞いてみるとするかね。



ーーー



 翌日。2人に何がほしいか聞いた俺は、欲しい物を書いたであろう紙切れを渡されたので放課後にそれを買ってきてあげようと心に決めながら授業を受けていた。

「それじゃ、今日の内容はここまで。チャイムがなるまでは今日を出るなよ」

 教科担任ハゲジジイはそう言うと、さっさと教室を出ていった。

 さて、これでようやく6限も終わったし、後で霞と春に連絡したら買い物にでも行きますかね。

「俺のにのまえ、何か落ち着きがないけどどうしたんだい?」

「俺はお前のもんになったつもりはねぇよ仲村」

 仲村はいつものように俺のほうを振り返りながらそう言うと、どこか楽しそうに笑っていた。

「で、何の用だ?」

「相変わらず冷たいなぁにのまえは…ま、そこがいいんだけど」

「いいから本題を言えよ」

「むふふ…にのまえ、コレなーんだ?」

「…は?おい、なんだよコレ!」

 仲村が満遍の笑みを浮かべながら渡してきたソレは、文化祭の時のメイド服を着た俺の写真だった(しかも10枚以上、どれも超高画質)。

「昨日友人に頼んで現像してもらった写真が届いたんだ〜!で、コレが俺のお気に入り」

「いや、明らかに盗撮だろコレ…ってか本人に見せるなよ!気持ち悪いわ!」

「そうなんだよ!わかってくれるかいにのまえ!?俺がその友人にこの写真を現像してって頼んだら『え、誰この可愛い子、超タイプなんだけど!仲村、お前ついに女に興味が出たのか!?今度紹介してくれよ!』なんて言うんだよ?どこからどう見ても俺のにのまえじゃないか!なのに俺が女に興味が出たのかなんて意味不明なこと言ってくるんだよ?」

「…」

 前々からコイツはどこかヤバいと思っていたが、俺は今の仲村の発言が何を意味するのか早口すぎてほとんど耳に入ってこなかったんだが…唯一わかったことといえばこの写真を現像したやつが俺のことを女だと思い込んでいるということ。

 いや、別に女装したわけじゃないんだけど…

「まぁ捉え方はそれぞれだし、別にいいんじゃね?迷惑さえかけなければ」

「うん、そうだねにのまえ。全く持って君の言う通りだよ」

「あはは…理解してくれたようで何より…」

 仲村は俺の手から写真を取ると、先程よりも上機嫌な様子で前に向き戻った。

 …一体何をしたかったんだコイツは。



ーーー



「起立、礼」

『さようなら』

 学級委員の佐藤の号令に、みんなは一礼すると各々帰り支度を済ませて帰路や部活動場所へと向かっていった。

「はじめ!一緒に部活いこ!」

「いっちゃん!一緒に部活いこ!」

 うーん息ピッタリ…

 霞と春はそれぞれ荷物をまとめると流れるような動作で俺の席へとやってきた。

「悪い、今日はちょっと用事が…」

「用事?なにそれ聞いてない…」

「いっちゃん、浮気?」

 あ、やべ…コレ言葉ミスったやつだ…

「いや、ちょっと私用で…ってか浮気じゃねぇよ!そもそもまだ誰とも付き合ってないわ!」

「えっ…この前はあたしにあんなことまでしたのに…」

「私だって…」

「えっ、いや、その…あれはお前らが無理y…」

「そんなの関係ないよ」

「真実が全てだから」

 い、言い逃れできねぇ…

「ねぇはじめ、なんで私を置いてくの?」

「えっ」

「そうだよいっちゃん。あたしというものがありながら…」

「いや、部活の話だよな!?なんか全然違って聞こえてくるんだけど!?」

 2人とも目に光が灯ってなくて怖いんだが…それともなに?俺死ぬの?

 俺はとりあえず暴走気味(?)の2人を抱きしめるようにして落ち着かせることにした。

「は、はじめ!?」

「い、いっちゃん!?」

「とりあえず2人とも落ち着いて」

 うん。いつも思うが落ち着かせるにはコレが1番だな!まぁ明と仲村だけは抱きしめようとは思わないが。

「落ち着いた?」

「うん」

「ごめん」

 俺が声をかけると、2人はどこか申し訳なさそうにそう言った。

「あー…私用ってのはな、明日亮と椿ちゃんの誕生日だからそのプレゼントを買いに行こうと思ってて…」

「椿ちゃんってあのいっちゃんの弟の彼女って人?」

「まぁそうだね。でも今は養子だからただの兄妹だよ。数年後には変わると思うけど」

「え、養子なの?じゃあ兄妹で恋愛ってこと…?」

「…そうなるな」

 一昨日、何故椿ちゃんがうちに養子に来たのかは実のところ俺もわからなかったりする。一応明以外は養子だってことを知ってるんだが…アイツは知らなくてもいいだろ。まぁ親父も母さんも家事を俺と亮に任せっきりだし、正直俺も親同士がどうやって今に至ったかも知らないし、聞くタイミングもない。むしろ家にいる方が珍しい。

 …その分俺らが普通に暮らせるくらいの稼ぎはあるんだけどね。

「ま、いずれにせよ今は俺の可愛い妹だ。誕生日にお祝いくらいはしてやらないとな」

「…はじめも色々あるんだね」

 2人ともなんとか理解してくれたのかしばらく黙り込むと、何を思いついたのか再び俺のほうを見つめてきた。

「はじめ、私もその買い物について行く」

「えっ…」

「椿ちゃんだって女の子。何が欲しいか伝えられているとはいえあたし達女子の意見だってあったほうがいいでしょ?」

 …まぁそうか。たしかに春の言うことも一理あるな。

「じゃあ、2人とも頼めるか?」

「うん!」

「任せて!」

 一時はどうなることかと思ったが、なんとか収集がついたようだ。うん。

 俺は2人に悟られないようにそっと安堵すると、先程からこちらこ会話に参加したそうにしている吉田に声をかけた。

「吉田。これ、部室の鍵な。俺らちょっと今日は部活行けないからよろしく」

「えっ、ちょっとはじめ!?我、今日1人なの!?」

「大丈夫だ。響ちゃんがいる」

「い、いやだ!我もはじめ達に付いt…」


「何が嫌なんですか、兄さん?」


「ひぃ!」

 音もなく現れた響ちゃんは、どこか含みのある笑みを浮かべながら吉田の肩にそっと手を置いた。

 あ、これ巻き込まれたらヤバいやつだ…

「ひ、響…?我、ちょっと用事が…」

「ダメです♪嘘つき兄さん♪」

「はじめ、助けt…」

「あ、あとは2人でごゆっくりー」

 吉田には悪いが響ちゃんが空気読めと無言の圧力を送ってくるので、俺は荷物を持ってさっさとその場を後にした。

 すまんな吉田よ。俺もまだ死にたくない。

 …今度なんか奢ってやるか。



ーーー



 バスを乗り継ぎ、近所のショッピングモールに着いた俺達は、地図の前に立つとどうやってまわるか模索していた。

「で、はじめ。2人の欲しいものって一体なんなの?」

「うーん…ちょっとまって…」

 俺は鞄の中から二枚の紙切れを取り出すと、それを広げた。

「えっと…こっちが椿ちゃんで、『編み物セット』?…で、こっちが亮の…」

「?どうしたのいっちゃん?」

「何だったの?」

 うん?俺の見間違えかなぁ…『はじめが楽しそうに笑ってるとこ…と、新しい家計簿と来年のカレンダー、金属製の洗濯バサミ、洗剤』って書いてあるんだけど…明らかに誕生日に頼むものではないんですが…

「い、いや…ちょっと予想外だったから」

 俺としては亮にはもっと歳相応の娯楽を覚えてほしいんだが。

「はじめ、質問に対する答えになってないよ」

「ちょっと見せて」

 春は俺の手からひったくるようにその紙を取ると、霞と2人で覗き込んだ。

「…いい弟だね」

「まぁいっちゃんの弟だもんね」

「おい、なんだよその反応…もしかしてあれか?俺、最近無理して笑ってるように見られてんの?」

「いや、そんなことないよ!まぁ無理してるなって思うときはあるけど…」

「よく考えたら私達が原因かって思うことが多くってね…」

「は、はぁ…」

 つまりだ。2人の言葉をまとめると俺は自分でも気付かないうちに相当無理してたことになる。亮に心配されるレベルまで。いや…マジで?

「ま、まぁとりあえず買いに行こう?ね?」

「お、おう…」

「今日はあたしも料理とか手伝ってあげるから、ね?」

「う、うん?」

「よし、そうとなれば決まりぃ!」

「プレゼント選びは私達に任せて!」

「えっ…あ、おい!」

 2人は俺の言葉を無視するように俺の両腕をがっしりと組むと、そのまま俺を連行するようにモール内へと入っていった。



ーーー



「はじめ、これはこんな感じでいい?」

「あー…うん。あ、そうだ、テーブルの上片付けといて」

「りょうかーい」

「いっちゃん。そろそろ3分経つけど…」

「じゃあ火を止めて蓋閉めといて。ちょっと放置しとくけどその間にスープとか作っちゃおう」

「わかった」

 11月22日、夜。さも当たり前のように家に上がってきた霞と春は、夕食の支度、部屋の飾り付けを手伝いながら亮達の帰りを待っていた。

 まぁ2人とも勘付いているとは思うが、一応明に6時くらいに3人で帰ってくるように伝えておいた。

「よし、これで準備完了…かな?」

「うん。後は並べるだけだよ」

「いやぁ…助かったわ2人とも。俺1人だったらもっと時間かかってたかもしれん」

 まぁぶっちゃけ言うと料理に関してはあんまり変わらなかった気もするが、意外と春が手際良かったので邪魔にはならなかった。うん。

「あたしといっちゃんの初めての共同作業だね!」

「いや、たしかにそうなんだけどさ…その言い方はちょっと…」

「私よりも少し料理ができるからって調子に乗らないでよ!」

「あたしは事実を言ったまでですぅ!家事の一つもできない若林さんに何か言われる筋合いはないよーだ!」

「なんですって…!」

 …あれ?さっきまで仲良かったのになんでこいつら言い争ってんの?

「まぁでも、害虫あなたの家事スキルだって所詮はその程度でしょう?はじめのほうができてるよ」

「ぅ…それは…否定できない…」

 俺は2人の言い合いを横目に料理を盛り付けていると、不意にガチャリと玄関の戸が開く音がした。

『ただいま』

「おう。亮、椿ちゃん、それと明、おかえり」

「あ、みんなおかえりー!」

「おかえりなさい」

 亮と椿ちゃんは部屋の飾り付けやテーブルに置いてある料理を見て理解したのかそのまま手を洗いにいった。

「はじめ、なんで義姉さん達がいるの?」

「…さぁ?なんか、着いてきた。亮と椿ちゃんの誕生日を一緒にお祝いするらしい。ってかそれよりお前は早く手を洗え!お前はいちいち行動が遅いんだよ!」

 俺が急かすと、明は渋々と言った様子で亮達のいる洗面所に向かった。


「それじゃあ亮、それに椿ちゃん。誕生日おめでとう!」

『おめでとう!』

 俺の掛け声に合わせて霞、春、明がおめでとうと声をかけると、亮と椿ちゃんどこか嬉しそうにはにかんだ。

「ありがとうはじめ、義姉さん達!」

「え、俺は?」

「明はリョーの誕生日も忘れてたみたいだし論外」

「なんならわたしの誕生日も忘れてたもんね、明は」

「はい、すみません」

 明…さすがに自分の彼女の誕生日を忘れるのはどうかと思うぞ…いや、俺に彼女がいたことなんてないけども。騙されていたとはいえ早乙女先輩だって相手の誕生日は覚えてたしな…

「義兄さん、わたしがローストビーフ食べたいって言ってたの覚えてたんですか?」

「あー…うん。まぁ今日これを作ったのは春なんだけどね」

「あたしの力作だよ!たーんと召し上がれ!」

「はい、いただきます!」


 夕食が終わり、俺達は食器を片付けると、用意していたプレゼントを2人の前に差し出した。

「2人とも、改めて誕生日おめでとう。これ、俺と霞と春からのプレゼント」

「ありがとうございます義兄さん、義姉さん達!わたし、早速使ってみます!」

「亮のはこっちね」

「はじめ、これは…?」

「新しい手袋だよ。家計簿とかはさすがにプレゼントにするわけにはいかないからね。それに、穴空いてたみたいだし、これから使ってくれると嬉しいな」

 亮はしばらく驚いた表情をして固まっていたが、俺がそう言い終えると嬉しそうにそれを握りしめた。


 一途な愛を永遠に。(挨拶)


 みなさんこんにちは。赤槻あかつき春来はるきです。


 11月編、いかがでしょうか?唐突に養子になった椿ちゃん…もう加藤じゃないんだよね。

 如月先輩は癒しです。少なくとも私は彼女を癒しだと思ってる。うん。


 前半はお互いの呼び方について。前回のこと(由良とのデート)を説明する時のはじめちゃんはどんな気持ちだったんでしょうね?


 後半は正式にはじめの妹ととなった椿ちゃんと亮の誕生日!亮の欲しいものってやつがもう…ね?


 さてさて次回は12月編!クリスマスももちろんあるんだけど…って感じの内容ですぅ!


 感想や意見、アドバイスなどありましたら感想欄やツイッターのほうに書き込んでくれると幸いです。

 またのんびりと更新していく予定なので気長に待っていただければ幸いです。

 それでは皆さん、またどこかであいましょう。

 バイバイ!

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