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ゴッド

ふと座り込んでいる副組長と目が合う。恐ろしいほどの気迫を感じる。

いや、気迫なのか・・・?なんだろう。とにかくとてつもない何かを感じさせられる。

何も言えず互いに目線を合わせていると、副組合長が口を開いた。


「貴方は・・・神なのか・・・?」


「いや・・・あの・・・」


陶酔の眼差しでこちらを見てくる。なんだか気まずくて目線を少し横にそらすが、首を伸ばしてこちらに目線をすぐに合わせようとしてくる。

どうしよう、怖い・・・怖くない?これ自分がコミュ障だとか人が怖いとか、そういうの抜きでちょっと雰囲気がヤバいのだが。

うわ何かちょっと泣いてるぞ。ヤバいってこれマジでどうすれば。


「ま、待ち合わせが・・・」


言えた!ちゃんと喋れた!逃げよう!


「お待ち下さい!」


屈んだ状態からものすごい速度で回り囲まれた!さっきまでの穏やかで優しそうな老紳士という印象を、一瞬でブチ壊すような移動速度だった。

とてつもなく失礼な言い草だが、色の白いゴキブリのような動作だった。加速魔法でも使ったのかもしれない。

更にピンと出た耳がまるで虫の触覚に見えてくる、やべえ。それこそ攻撃魔法でもぶつけないと逃げれる気がしなかった。

いやこの距離でさっきのスピートなら詠唱の前にやられる可能性も・・・この場を切り抜けられる魔法を本気で模索する。

駄目だ隙が見当たらない。やばいぞ。


「重ねて訊かせて頂きます、スガヌマ・ナオ様。貴方は神、もしくは神の遣いであったりするのでしょうか・・・?」


「・・・いえ。」


「おお・・・しかしその御力は紛れも無く神に等しき奇跡・・・。」


「・・・」


「ギルドへの登録をご所望でしたね・・・早急に係りの者を叩きつけ登録させます。」


「は、はい・・・」


「しかしできれば先ほどの御業をできればもう一度・・・」


そうしてる間に全身のほのかな光は消えていた。テリトリー・ブーストが時間切れということだろう。

再使用可能時間までまだあるはずだから、多分さっきのはできない。ていうか自分から状態異常に掛かって行くのか・・・。


「え、えっと・・・ごめんなさい。」


「そうですよね・・・しかしあんな一瞬でブラインドを解除されるとは。世の中には凄いものがあるのですね・・・。凄い・・・いやすごい・・・。」


・・・え、攻撃魔法じゃなくて、状態異常回復の方なの。

いやある意味そりゃそうか。この人がそっち専門の人だったら、そっちの治癒の方が凄いと思うよな。

ウィザードのアンティードだと、プリーストの状態異常回復ボーナス付かないから回復すんな死ねボケとかゲームでは言われそうなもんだったけど。


そうだな例えばだ。格ゲーなんかでもやってなくても、1位の人が凄いのはわかるけれど、10位あたりの人でも相当凄かったりするのって

やっぱそのタイトルやってないとわからない、みたいな所あるじゃん?例えがオタクっぽいというか、そもそも例える必要あんのかって感じだけど。

この人自身が回復や補助魔法でやってる人だからこそ、あえて攻撃魔法よりそっちが評価の軸になるのかもしれない。

攻撃魔法をアピールしたつもりだったんだけどな・・・まあいいか。


しかしここまで膝を折ってひれ伏すような態度で、異常なまでに崇められると反応に困るばかりだ。

とはいえ何だ。落ち着いて考えてみれば、自分の衣食住を確保する上で、きっと役に立ってくれるはずだろう。

ちょっと不気味というか近寄りたくないけど・・・まあうん。そこは我慢だ。いやでも別に尊敬はしてくれてそうだし・・・でもうん・・・どうだろう。

とりあえず何か仕事がもらえないか聞いてみる、


「あの・・・もし仕事・・・。」


「おおお!我がギルドの依頼を引き受けてもらえるのですか!今すぐうちの奴を叩いて仕事を作らせますよ!いや本当に貴方にして頂けるならいくらでも仕事はある!」


・・・なんかテンションがすごかった。どんだけ叩くんだよ。

ていうか言ってる途中だったのに。なんかもうあれだ。帰りたい・・・。どこに帰るのかわからないけど・・・。

転移する前の家?うーん帰らなくていな・・・。こっちも大概そうだが。てか大丈夫かこの副組合長って人・・・。


「あ、あはは・・・」


愛想が全く無い自分ですら愛想笑いしてしまった。

いやてか愛想笑いというかなんかもっと乾いた笑いをせざるを得なかったというか。あと今更だがほんと声甲高い。

もうちょっと重みというか、説得力があるというかそういう声にしとくんだった。

アニメ声は好きなのだけど、自分がそうなりたいかって別だよなあ・・・。いや声優さんの声とか凄くかわいいんですけどね。


「それでは共に行きましょう!」


一緒に行きたくねえよ・・・行くけどさ。なんだか胸に蒸れているような生暖かいような、いやーな感じが来る。

助けて誰か・・・助けてくれそうなのノエラくらいしかいないけど。ていうかノエラも今日会っただけの自分なんか助けてくれるのか知らんが。

そういえばノエラどこにいるんだろうな・・・合流したいけれど、このままで大丈夫なのだろうか。

おかしなテンションで歩く副組合長を見ながらそんなことを考えていた。もうなんか嫌だ。はあ。

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