奴隷
目線にくすぐったさを感じ、視線を逸らそうとすると、逆にノエラと目が合った。
「・・・なんでもないのっ!今は大丈夫だよー!」
ノエラは笑顔ではぐらかす。何なんだろう気になる。隠さなくても、大体ノエラに頼まれたら聞くと思うんだけどな。
見ず知らずの自分を拾って、ここまで色々やってくれたのである。
正直申し訳無さしかない。いや感謝だな。本当にノエラには感謝している。
いやでもそれは感謝して、貰った恩に報いようとかじゃなくて。ただノエラが困っていれば助けたい。そんな感じなのだ。
「・・・また、聞くから。」
きっと本人も必要な時が来たら言ってくれるだろう。まあ、そんな大したことじゃないオチかもしれないけど。
笑顔で頷くノエラを見ながら、そんなことを思う。ちょっと照れたのでかがんで床にある下着を着ようとつまんだ。
「うーん、ナオのさ、胸の所に布とか詰めたほうがよくないかな?」
そこで、下着を着ようとする自分の胸を見ながら、ノエラが言う。確かに乳漏れがあるからあった方がいいな。
ただでさえ無駄にデカい胸が、もっと大きく見えてしまいそうだが。うーん、別にそこまで気にすることでもないとは思うんだが。
ていうか今の以外で着ようと思うと、服とか下着とかサイズ選び難しそう。
まあ一瞬で洗濯できるから、困らないと言えば困らないんだが。
「ちょっと待っててねー!」
ノエラがカバンをガサガサと漁る。
引きこもってる時もずっと同じの着てたけど、案外これからもそうなったりするのだろうか。
まあ冒険とか行くとしても、そんなに沢山服なんか持ち歩けないだろうしな。
取得可能スキルにもスメルセイヴとか臭い軽減のがあったな。あれはそういうので役に立つのかもしれない。
「・・・はいっ!」
布切れを渡された、それなりに衛生的なようだった。
「・・・ありが、ふあぁ・・・。」
あくびが出た。まだ多分寝るには早いはずなのだが、凄く疲れた。
本当に今日は色々あった。一日とは思えないほど長かった。引きこもってた時の半年、いや1年以上に相当している気がする。
昨日までは早朝までネトゲして、昼に寝るような生活だったのにな。今俺めっちゃ健康してる・・・。
「今日、疲れた?」
「・・・うん。」
それはもうとても。泣きそうなくらいに。
駄目だ意識すると本当に眠くなってきた、落ちそうだ。
「そっか、おやすみっ!」
頭をグリグリ撫でられた。されるがままである。
まあもういいや。そうだな、もう寝よ・・・。すでに着終えていた下着の胸の部分に布を詰めた。
おやすみなさい。
――――
冒険者の朝は早い。着替えて宿を出ると、途中で買った串焼きを持ちながら、ノエラと自分は朝の街を歩いていた。
目指すは街の北側の出口である。そこが手分けして今回の仕事を受ける、冒険者達の集合場所だった。
しかしこのあたりがいくらオアシスとはいえ、依頼の森はそんなに近くにあるのだろうか。不思議なものである。
ちなみに今朝起きた時、胸の布はビシャビシャだったので、自分でアープの玉で洗濯した。
これなかったらホント大変だったろうなと思う。てかホント面倒くさい身体だ。
乳臭いガキなどと言うが、自分の場合ちょっと意味合いが違うけど、それなのかもしれないなとか思った。
うーんやっぱりガキというか、本当に身長小さいしなあ。でもまだ背伸びるだろうし。・・・伸びるよな?伸びてくれよ。結構真剣に一生この背だとちょっと悲しいぞ。
「・・・(もぐもぐ)」
今食べている串はレバーで、酸味の効いた味付け、更に唐辛子に似た赤い粉がまぶしてある。何の肉かは知らない。
料理の名前はミープとか言うらしい。粉の見た目ほどには辛くなかったが、今の舌では少し来るものがあった。
ノエラは平気でパクパク食べる。うーん自分も初級辛味耐性を取るべきなのだろうか。
そんなことを考えていると出口の北門に着く。
前方に大きな荷物を背負った犬耳の女の子と、生気の抜けた雰囲気の中年の男が前にいた。冒険者だろうか。
女の子の背丈は今の自分と同じくらいだ。つまり結構ちっちゃい。女の子は何かに怯えた様子で辛そうに立っていた。
「・・・あれって?」
目線を犬耳の女の子の方にやりながら、ノエラに尋ねる。
ノエラもそちらに目線をやると、返事を返してきた。
「あの子?」
「・・・うん、見ないなって。」
「ナオもだけどねー。」
それもそうだな、自分もこのあたりによくある見た目とは少し違う。
いやまだ1日しかこの街にも滞在していないけれど。あの子は何か別人種なのだろうか。気になる。
ノエラが説明し始める、
「あの子は獣人系かな、ここからもっと北の方だと多いと思う。見たことない?」
「・・・ない。」
昨日この世界来たばっかりだし。いやああいうのアニメだのゲームだのではよく見たけどね。
まさか生で目にする機会があるとは、異世界に転生するまで考えもしなかった。
「そっか。この辺りだと戦争の影響で・・・奴隷って人が多いかな。」
そうなのか。ノエラの説明に頷く。
「ていうか聞いてなかったけどさ、ナオってどっちの方の人なの?王国?」
うーんどう答えるべきか。王国もわからないけど、日本とか言っても理解してもらえるか。
特に隠す理由もないが、どうもうまく説明できる自信がない。どうしたものか、と思っていると。
「・・・何で。」
犬耳の子が後ろの男に殴られていた。抑えこんだ、それでも悲痛な声がする。
さっきノエラが言っていたように奴隷なのだろうか。いやそれでも、何なんだあれは。奴隷なら何をしてもいいというのか。
「・・・かわいそうに。」
ノエラは同情しつつも、どこか仕方なさそうにも聞こえる声で言う。
この世界では当然なのかもしれない。奴隷だとすれば色々あってもおかしくないのだろう。
そういうものなのかもしれない。しかしそれでも見ていて気持ちのいいものではなかった。
男を睨むと、それが伝わったのか、こちらに振り向いてきて言う。
「・・・今回の森の調査でご一緒に行かれる方々ですか?・・・・よろしく、おねがいしますね。」
生気のない男が手を差し出して言う。形では丁寧なその態度が薄ら寒かった。
少し1話を長くしてみようと思ったのですが、どうもポイント的に短い所で切ってしまったと反省。
ペースというかここまででこのくらいの文字数、みたいにうまく管理できるのは凄いなあと思いますね。次はもうちょっと長くしよう。




