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月下アキラ②
―――私の友人の中幸さんの父親は月下家に使えているらしい。
『息子はどうも女性を避ける節がある。生憎うちには既婚の婆やしかいなくてね。
だから若い女性の君にどうにかしてもらいたい。いっそ君とそういう仲になっても……それで、どうだね?』
『しっかりメイドの役目を果たさせていただきます!!』
だから私の境遇を聞いて、月下家の当主に口利きをしてくれた。
「はあ……」
「ご主人様、お手紙です」
「君はわざとやっているのか……?」
彼はまた怒っていらっしゃる。
メイドの知識なんてテレビでしかないし、言われたことをやってるだけなんだけどなあ。
「……すみません」
「手紙のことはご苦労。しかしその呼び方はどこぞの店のようで好きじゃない」
「では月下様……」
「アキラでいい」
普通にアキラ様と呼ぶことになった。