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なんで私はこんな目にばっかり合うの!?

一日更新遅れてすいません

<師里レイ>



 路地裏で手早く着替える、と言っても外で服を脱ぐ趣味など無いので制服の上から着ただけだが。

 私より一回り大きいサトネさん用のメイド服だけあって、それでも着にくいということはなかった。……ただ、一部分だけはぶかぶかになってしまったが。

 でも着終わってから思う――


「これ、冷静になって考えるとなんの変装にもなってないよね」


「それを着終わってから言うの?」


 ヒトミが呆れた顔で言う。


「さっきは色々と焦ってたから気付かなかったけど、顔を隠してないから結局バレないかな?」


「バレると思うわ」


「やっぱり!?」


 あぁ、なんか騙されたのかもしれない。

 これじゃ本当にただのコスプレ女じゃん。


「着替え終わりましたか?」


 私が着替えている間、校舎の様子を窺いに行っていたサトネさんが戻ってきて声を掛けてくる。


「着替えは終わりましたけど、これよく考えてみたら顔でバレバレなんじゃ……」


「それなら心配ありません」


 サトネさんはそう言うと同時に私へ、片手で持っていた何かを放り投げてくる。


「え? おっと!」


 放物線を描き飛んできたバスケットボール大のそれを胸に抱え込むようにして、両手で捉える。

 想像以上の重さがありちょっとした衝撃が胸を突く。


「これは……ヘルメット?」


 飛んできたそれは顔をすっぽり覆い隠すフルフェイスタイプのヘルメットだった。


「それを被れば顔を隠すことは出来るでしょう? 顔を隠したメイド服の女。それなら流石に正体がバレる心配はないでしょう」


「確かにそうかもですが……これ何処から持ってきたんですか?」


 さっきまでサトネさんはこんなものどこにも持っていなかったはずだ。


「落ちてました」


「落ちてた?」


 こんなものがそこら辺に落ちてるとは思えないんだけど。


「ええ、あっちの方に」


 そう言って指さす先には、学校の端にある駐輪場。

 そこには多くの自転車が止められているが、一部には原付バイクや先生の誰かが乗っているのだろうか、大型のバイクが停められている。


 ……。


「盗ったんですか!?」


「落ちてたんです」


「か、返してきてください!」


「いいんですか? それだと貴女は素顔を晒したままになりますけど」


「ウッ!」


 そう言われると困るけど……。


「いいじゃないの、借りておけば。あとでそっと返しておけばいいのよ」


「ヒトミまで!」


「何も盗むわけじゃないの、ちょっと借りてすぐ返せばレイも正体を隠せて、そのヘルメットの持ち主も盗まれ――借りられた事に気付かない。誰も傷つかないわ」


「もう盗むって言っちゃってるよ……でもそれ以外方法が無いか」


 勝手に借りるのは気が咎めるが、それよりも我が身が大事だ。

 それに今は人命もかかってる緊急事態だし。

 ゴメン、ヘルメットの持ち主さん。絶対返すから。

 心の中でそんな風に言い訳したり、ヘルメットの持ち主に頭を下げながら、私はヘルメットをかぶった。



 ☆★☆



<校門前>


 校門前には依然、人が集まっていた。

 いや、近所にまで騒ぎが広がったことで周辺住民も集まってきており、先程よりも人が増えているようにさえ見える。

 そんな大勢の群衆の頭に2つの影がサッとかかった。

 その影は校門の外から中へ、学校の敷地内へと向かって飛ぶ。

 頭にかかった影に気づいた鋭い人は咄嗟に空を見上げ、その存在に最初に気付く。

 彼らが大なり小なり声をあげたことで、周囲の人々も僅かに遅れてその存在に気付いた。

 その存在を目にした人々は細かな差異はあれども、殆ど同じことを偶然にも呟く。


「空飛ぶメイド?」


 と。



 ☆★☆



<師里レイ>



「うわわわっ!」


 浮遊感に戸惑い声をあげるも、フルフェイスのヘルメットに遮られてブモブモとした音にしかならない。

 だがそれも数秒、すぐさま地面が近づく。

 いつもよりも狭い視界、さらにバインダー越しということで距離感が取りづらいが、何とか着地を成功させる。

 ズザッといつも履いてるローファーで感じた事のない強い衝撃を感じる。


 ――壊れてないかな?


 と不安になるも、隣で着地してそのまま駆けだしたサトネさんに置いてかれる訳には行かないので、サトネさんを追いかける形で私も駆けだす。

 背後から聞こえてくる群衆の悲鳴めいた騒ぎ声は無視だ。

 魔力による身体強化を施した私の体は、今さっき数メートルの距離と高さを跳んで着地したにもかかわらず何の痛みや痺れもなく駆けだすことが出来る。

 そうして駆けること数秒。

 あっという間に校舎の近くまで迫る。

 そこで、僅かに先行していたサトネさんが校舎を背にして私へと向き直った。

 腰を深く落とし、まるでバレーボールのレシーブの様に両手を組むサトネさん。

 そこに向かい、一段と足に力を込めてタイミングを計る。


 いち……

  にの……

   さんっ!


 心の中で唱え小さく飛ぶ。

 向かう先はサトネさんの組んだ手、そこに両足で着地した。

 それと同時に足元が爆発したかのように、急激な加速でもって全身が押し上げられる。

 いや、押し上げるというよりも"射出"と言った方が正しいか。

 まるでペットボトルロケットのように急激な加速でもって私の体が、サトネさんの手によって打ち出された。

 グングンと離れていく地面。

 反対に迫りくる校舎。

 校舎に対して斜めに打ち出された私の体は、高さを増すごとに校舎との距離が狭まる。

 その勢いのまま一階、二階を通り過ぎ、三階のとある教室のとある窓。その僅かなスペースを――


 ガッシャァン!


 派手な音を立ててぶち破った。

 そこで見た光景は――


 ボロボロになってイスに縛り付けられた岩神(やがみ)君。

 その脇で驚きの表情を浮かべている坂上(ばんじょう)と言う男。



 ――そして、急速に迫りくる教室の天井。


 ズゴンッ 

「へぶっ!」


 厚みのある音ともに視界がグワングワン揺れる。

 窓を突き破って斜めに教室へと突っ込んだ私だが、空を飛んだり、空中で止まる方法なんて持っていない。

 だから地上から三階まで飛んできた勢いのまま天井に頭からぶつかるのは必然と言えば必然なのか。

 ピシッという嫌な音が頭の上の方から聞こえたけど、多分空耳だと思いたい。

 そのまま為す術もなく、ベチャリと教室の床におちた。


 ……いや、身体強化してたよ。

 だから生身で地上三階なんて来れてるんだし。

 でもさ………流石にさ………。



「地上から飛んできてコンクリにぶつかるのは痛いってば! てか、なんで私はこんな目にばっかり合うの!?」



 私の魂の叫びはヘルメットに遮られ、ブモブモという音にしかならなかった。

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(次回更新は土曜日~日曜日の予定です)

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